BACK眠れなくて、ずっとリビングでぼーっとしていた。 もう、1時を回っている。 姉さんに 「もう寝なさい」 と言われたので部屋に行く。 でも、部屋に行った所で眠れるわけがなく……。 どれだけ、眠れぬ夜が続いただろう。 そっと、青白く輝く月を見上げた。 今でも鮮やかに浮かぶ、君の顔。 どうしてあの時・・・・・・。 零れそうになった涙を、必死で止めた。 頭の中は、君の事だけ The ache my heart 眠りについたのは、何時頃だっただろう。 覚えていない。 ただ、分かっているのは 夢の中に、君が出てきたこと。 どんどんと遠ざかっていく君を追いかけて。 手を伸ばして、掴もうとして。 ………でも、掴めなかった。 全然眠っていないのに、体はいつもと同じ。 あまり、疲れを感じていない様子。 普通に授業だって受けられるし、部活も出来る。 なんというか 心だけが疲れているという感じ。 いつになったら、この疲れはとれるのだろう。 ねぇ、いつになったら君は……… 朝食を終え、学校へ行く支度をして家を出る。 朝練があるから、朝は早い。 家族には心配をかけたくないから、元気にいつも通りの自分で振舞っている。 心の疲れなんて、誰にも悟られたくない。 でも、姉さんは気づいているみたい。 何かあるなって。 何も、言葉にはしないけど、態度がそう言っている。 『大丈夫?』 って。 その心遣いは、とても嬉しい。 心に、負担がかからなくてすむから。 だから僕は態度で『ありがとう』って示す。 でもその『ありがとう』はきっと伝わってはいない。 自分では表しているつもりだけど、本当は表せていないから。 この頃の僕は、魂の抜けた ただ、人の形をした〔モノ〕でしかないから。 学校に着いても、僕は、脱け殻状態だった。 何人か 「大丈夫?」 って声をかけてくれたけど、僕にはその〔大丈夫〕という言葉さえもが辛かった。 お願いだから、そんな言葉だけの優しさ、かけないでくれ。 心配をかけてはいけないって分かっているから。 心配しないで。 これは僕自身の問題なのだから。 でも、ダメなんだ。 学校には君がいる。 だから……… どうして君は、僕を避けるの? 僕はこんなに好きなのに。 僕が何かした? どうしてこんな風になってしまったのだろう。 ……きっと、あの日に何かあったのだろう。 あの日を境に君は……… 確かあれは………… 確かあれは、この前のデートの時のこと。 もうすぐデートも終わりという、夕暮れの時間帯だった。 僕は何時も通り、君を家まで送っていく事になって。 ゆっくりと、その日の感想みたいな話をしながら、君の家へと向かっていた。 その途中君は、フッと後ろを向き立ち止まって、来た道を見つめた。 そして 「ごめんね。ちょっと用事思い出しちゃった。本当にごめんね。じゃあね」 そう言うと、手を振りながら走って、夕陽の方へと……消えていった。 あのときの顔、忘れることはできない。 何かを心配していて。 でもどこか嬉しそうだった顔。 一体、何を見たの。 君の瞳には何が映っていたの。 あの日、何があったの。 ねぇ。どうして、僕に話してくれないの。 話せない、何かがあの日あったの。 聞きたいけど、聞くのが恐い。 知りたいけど、知るのが恐い。 聞いてしまったら。 知ってしまったら。 もうこの恋は、幕を閉じてしまうような気がするから。 君が僕の元からいなくなってしまう…… 何もなかったかのように振舞っているけど、それはただ仮面を被った僕。 弱い自分を曝け出すのが嫌で。 出さないように努力はしているけど。 でも、少しずつ仮面が剥げてきている。 だから、皆が心配するんだ。 心の中では 出来るならこの心の靄を消してしまいたいと願っている。 早く、いつもの僕に戻りたいと。 悩みたくない。 君のことで悩むのは、恐い。 破滅へ近付いている気がして。 それはただの〔気がする〕だけじゃない気がして。 こんな僕は、臆病なのだろうか。 こんな所で行き止まっていてはいけないって分かっているけど。 頭では分かっているけど、体が拒んでいる。 デートの次の日に会った時。 君に触れようとしたら、君はギュッと目を瞑り、拒んでいたから。 ただ、頬に触れようとしただけなのに。 僕の事、嫌いになったの…………? 恐い。 「さようなら」 そんな言葉を君の口から聞くのが。 そんな事を考えているうちに、きてしまった。 最大の厄日が。 元気のない僕を気遣ってか、日曜の部活は休みだった。 休み……っていっても、テニスが休みなだけで、レギュラーみんなでファミレスに 集まって、手塚を中心に今度の試合のこととか話している。 その時だけは、君の事を忘れられた。 久しぶりに、心から笑った気がする。 僕を見て、皆はホッとした様子だった。 でも 昼ご飯を食べ終え、店から出た。 僕は、会計が一番最後だったので、皆より一足遅れて店を出た。 皆の顔を見ると、表情が暗い。 哀れみ、悲しみ、労わり。 その表情は全て僕を指す。 気持ち悪いくらい、心臓の鼓動が激しくなった。 「どうしたの?」 聞こうかどうか悩んだ。 でも、その表情に気付いておきながら無視するのも嫌だったから、問うた。 「ううん。な、なんでもないよ。さっ、行こう」 作った笑みを浮かべて、英二が僕の体を押して歩かせようとするので僕は反対方向に何かあるのかなと思い、後ろを向いた。 英二以外の皆が僕の目を塞ごうとしたけど遅かった。 後悔した。 振り向かなければ良かったって。 だって、そこには 氷帝学園の宍戸。 そして隣にいたのは 君。 二人とも笑って、そして手を繋いでいる。 「………」 目の前が真っ暗になった。 やっぱり、君は、僕の事を嫌いになったんだね。 「不二(先輩)………」 皆が〔可哀想〕という感じで僕の名を言葉にする。 可哀想と思うなら、ほっといてくれ。 僕の気持ちなんて、誰にも分からないんだ。 そう思ったら、なんだか怒りと悲しみが一気にどっと沸いてきて。 僕は、走りだしていた。 君がいた方とは、反対の方向に。 無我夢中で、走り続けた。 少しでも、君から遠ざかりたくて。 知らない道をどんどんと進んでいった。 遠回りだっていい。 少しでも、心の靄を消したいから。 どれだけ走っただろう。 怒りはどこかに消え、後には疲れと悲しみが残った。 元来た道を戻ることはできない。 君はいないだろうけど、できない。 だから 家へ帰ろう。 ゆっくりと歩き出し、赤だったので足を止める。 数分断ち、シグナルが変わったが、僕は立ち止まったままだった。 何故か足が動かなかったんだ。 家へ帰るのを拒んでいるのだろうか。 それならどこへ、僕は行けばいい。 僕には行く場所がないんだ。 家しか。 そう体に言い聞かせたら、フッと。 重いけど、体が動き出した。 ゆっくりと。 ただゆっくりと歩き出した。 心が涙を流している。 君が宍戸に向けた笑顔が刃となって、僕の胸をさした。 そこから、赤い涙が流れている。 なんで………… なんで僕じゃいけないんだ。 だって君はあの時、好きだと言った僕に向かって微笑んで、頷いてくれたのに。 その理由を、僕は嫌でも知る事になった。 昼休み。 「不二……さんが呼んでるよ」 おずおずと言う。 僕に? 僕に何の用があるというの。 別れの言葉でも言いに来たの? それとも……… 行きたくなかったけど、椅子から立ち上がり、読んでいた本を閉じ 彼女の元へと歩き出した。 「何?」 何も知らないかのように微笑む。 そういう事しか出来ないんだ僕は。 笑顔しか見せられない。 弱い自分を見せたくなくて。 ただの強がりだって分かってるよ。 弱い自分。強がりな自分。 そんな自分を断ち切れたら………。 だからかもしれない。 スッと、彼女の元へと体が動いたのは。 彼女は少し言い難げに 「話があるんだけど………来てくれる」 ちょこんと首を傾げた。 可愛いな……。 何時までその可愛い君を横においておけるのだろう。 それも今日でお仕舞いか……な… 僕は頷いた。 彼女の後ろについて歩く。 横に並ぶなどはしない。 彼女もそうしようとしない。 そして着いたのは、人気のない校庭。 「で、話しって」 「………ごめんなさい」 彼女は泣いていた。 大粒の涙を零しながら。 なんで君が泣くの? 泣きたいのはこっちの方だよ。 そう言いたかったけどやめた。 それじゃあガキっぽすぎる。 それにそんなこと、言えない。 だって僕は君が好きだから。 彼女は涙を右手でギュッと拭ってから、ゆっくり話し出した。 「一昨日、聞いた。英二君達に。亮といるところを見たって」 〔亮〕 その言葉が、頭に張り付いた。 僕の事は「周助君」なのに………。 「ごめんなさい……悪いって事は分かっている。でも、ダメなの。亮は、私じゃなくちゃダメなんだって。………私も、亮じゃなくちゃダメなの。そう、気づいた。前のデートの日」 彼女は、涙を流しながら話を続けた。 あの日彼女は、宍戸の姿を見た。 顔や体傷跡でいっぱいで、心配になって、追いかけたらしい。 そして着いたところは、テニスコートだった。 いわゆるストリートテニス場。 そいつは秒差で向かってくる高速サーブをラケットも持たずに受けていた。 顔面に当っても、足に当っても。 それがものすごく強いボールだったとしても。 そいつは立ち上がり、ボールを受け止め続けた。 その光景が、とても痛々しくて………。 とても、かっこ良くて。 彼女は、走ってそいつの元に行き、抱きついた。 泣きながら。 彼女はずっと勘違いをしていたらしい。 自分は、宍戸に嫌われて振られたんだと。 でも、それは違っていた。 そいつは、彼女に幸せになってほしから振ったのだと。 そいつは、自分は強いと自惚れていた その内に周りの奴等はどんどんと力をつけていき、最終的にはレギュラーから 外された。 その時やっと我に返り、自分のテニスを見直し、やり直し始めた。 人生をやり直すために。 彼女をまた、愛せるように。 初めから、僕は負けていたんだ。 彼女は宍戸のことが好きで。宍戸も彼女のことが好き。 二人の仲には入っていけないんだよ。 心の奥底で、願っていた。 「何もなかったんだよ」 と、笑って囁いてくれたら。 そしたら。どんなに僕は救われるだろう。 だけど、思い通りにはならなかった。 話が終わり、彼女はもう一度 「ごめんね」 と言い 「周助君のこと好きだったよ。信じてもらえないと思うけど、本当に好きだった」 その言葉に、僕は何も言わず。 彼女に近づいて、頬にキスをした。 別れの、冷たいキスを。 そして、僕の恋は幕を閉じた。 彼女とは別の場所へと足を進めていくと、英二がいた。 後々聞くと、心配になって見つけていたらしい。 英二は僕を見つけると 「不二!」 と元気良く駆け寄ってきた。 「不二………!」 「大丈夫だよ」 精一杯の笑顔で笑った。 でも、何度も言うけど、僕は強くないんだ。 だから、今は 「少し、泣かせて………」 そう呟くと、英二の肩に身を任せ、静かに泣いた。 英二は、何も言わずにずっと側にいてくれた。 涙が止まるのを待ち、校舎へと戻った。 新しい日常の始まり。 その時、誰かが僕にぶつかって来た。 それは、後輩だと思われる女子生徒。 「あっ、すいません」 「大丈夫だよ」 いつ立ち直れるかは分からない。 もう当分恋はしたくない。 でも、一生しないというわけではない。 傷が癒えるまで。 傷が癒えたらまた…… 新しい、恋を探しに。 「ねぇ、今ぶつかったの。不二先輩じゃない?」 「そうなの?てか、それ誰?」 「えっ、知らないの?!あの不二先輩を。信じられない………」 「名前は知ってるけど。興味ないし」 「馬鹿じゃないの!?あぁ、羨ましい〜!」 「うっさい。別にただの人間でしょ」 「あんたねぇ〜……」 運命の人はすぐそこにいるのかもしれない。 でもその人に気付かないことが多い。 誰もが違う人にばかり気を取られて。 その人に恋心を抱いてしまうから。 もしかしたらこの不二周助もその一人なのかもしれない。 誰もが本当の恋に疎くて。 偽の恋をして別れていくのが今だから。 ++++++++++++++++++++++++++ 前のサイトにおいてたんですよ。 一回PCが壊れてなくなっちゃったので、また書きました。 書き直したかな?ちょっと話違うけど、これをもとにして書いたのがあったから。 アルバム[ eyes ]の5番目の曲をもとに書きました。 だから題名も借りました。 キャラソンと言えない位良い曲なので、聞いてない人は聞いてみてください!!