BACK夏の昼下がり。 エアコンでちょうど良く冷えた部屋。彼の部屋。 机に向かい合って座り、本当だったら仲良く談笑……とかいうのが普通なんだろうけど 今はそんな状況ではありません。 愛すべきバカなあいつ 夏休みはまだ始まったばかり。 それなのに、宿題に追われている私。 なぜって、夏休みの予定がたくさんなの。 部活に旅行、友達とカラオケ、ショッピング。 でも、一番の量を占めているのが……… 「周助〜」 「なにかな?愛しのスイートマイハニー」 「もう無理」 こいつとのデートなんです。 暇な日をどういった経由で調べたかは知らないけど、全て把握されていて ほぼ全て、予定をいれられた。 拒否権? そんな権利ありません。 そんなこと恐くて出来ません。だって、彼は魔王様なんだから。 ………でも、好きなんだよね。 周助の言葉、行動が全て私をドキドキさせる。 たまにムッってする時もあるけど……しょっちゅうかな。 でも、それも直ぐに許せちゃう。 何か…魔法にかけられたみたいに。 ………魔法より呪いかッ! もうすでにギヴ アップを宣言する私に周助は何時ものように笑みを浮かべて 「大丈夫。宿題が終わるまで僕がずーっと一緒にいてあげるからね。ご要望があれば、手取り足取り教えてあげるけど」 体を前にのめり出して、私の顎をくぃとあげて、開眼した瞳で見つめる。 キスだって出来てしまう距離。 「周助のえっち」 「なんでそこでっそんな言葉が出てくるのか、僕には分からないね」 「下心見え見えよ」 顔を振って、周助の手から離れる。 横を向いて、横目で睨みつけてやる。 でも、どんな態度をとったって 「は横顔も可愛いね。……ううん。どんなことしていても可愛いよ」 脳内が完全に麻痺しきっている奴に全く通用しないって分かってる。 私は右手を額にあてて、大きく息を吐いた。 こいつもう駄目だわ、というように。 本気でこいつに付き合ってると、まじに頭痛くなってきそう。 だから私はしたくないけど、周助の相手をする気力のほうがないので 私は机に向かい、シャーペンを動かせ始めた。 それを見て周助は「僕とそんなにデートがしたいんだね。嬉しいな」とか言って、 嬉しそうに笑って頬を赤らめている。 それを私は無視して、鞄の中から原稿用紙を取り出し、国語科の夏休みの課題である 作文に取り掛かろうとした。 読書感想文は面倒だから却下。 作文コンクール……自由作文は文字数多すぎ!却下! ……あっ、これ少なくて良いんじゃない? えっと………ん? 「周助〜」 「なんだい?美の女神アフロディーテも嫉妬してしまうほど美しく、知の「はい、そこまで!」 ウザいほど言われたお世辞の言葉。 でも、周助が紡ぎ出すと、お世辞のように聞こえなくなるのは きっと、本気で本気で好きだから。 「愛って何?」 ……………聞いてみて後悔した。 なんか、ものすっごく嬉しそうに目ぇキラキラさせてるんですけど………! だってさ!だって『愛』っていうタイトルで700字〜800字で作文書けって書いてあるんだもん。 分かんなかったんだもん!周助に聞くしかなかったんだもん! ここが部室だったら大石とかに聞いてるもん! 一番真面目な答えくれそう。 周助はジリリ、と私の方へと近付いてくる。 まるで獲物を見つけた獣のように。 私は身の危険を感じ、後ろへと這うように逃げた。 だが、逃避も途中でストップせざるをえなかった。 「あっ………!」 「掴まえた」 背中が壁にあたる。 それを見て、周助はほくそ笑んだ。 立ち上がって逃げようとしたけどもう遅くて…… 周助は私を囲うように、壁に手をつく。 顔がどんどんと近付いてきて、視界に周助の顔全てがおさまらない。 少し青みがかった黒い瞳が私の瞳と交じり合った。 もういいや、と嫌がっても彼を喜ばせるのは目に見えているから 私は諦めて目を瞑った。 次の瞬間にきたのは 唇への感触じゃなくて 「愛っていうのはね、僕からへの気持ち」 耳元で囁く愛の言葉。 暖かい吐息に、私はビクンと体をびくつかせる。 それに周助は満足そうに微笑して、私を抱きしめた。 「抱きしめたり、キスしたり。ただ手を繋いだり、一緒にいたり。愛がなければそんなことしないよ。 二人の間に生まれるもの。それが愛だよ」 言葉と一緒に、吐息が頬にかかる。 湿る感じ。赤くなる頬。恥ずかしさ、嬉しさ……愛しさ。 「………そんなこと、作文に書けるわけないじゃない」 「僕は良いと思うよ。それって国で募集しているやつだよね?国家単位で僕達の愛を認めてもらおうよ」 「そんな恥ずかしいこと出来るか!」 むぅ、と唇をつきだして怒ってみる。 周助はクスッ、と笑って、何時ものように「可愛いな」と呟いてから 私の唇にキスを落とした。 「んッ…………」 思ったよりも長くて、私は周助の首に手を回し、服を握った。 唇が離されて、私は息を整えるために少し大きく息を吸う。 「愛してるよ」 「………………って」 「ん、何?聞こえなかった」 「私だって」 「その続きは?」 「……愛してるんだから」 恥ずかしくて。 顔が真っ赤になって火照っているのが分かった。 付き合い始めて二度目の愛の言葉。 もう一年以上も付き合っているのに。 あなたは簡単に愛の言葉を並べるけれど 私はそう簡単に並べられるほど、まだ人間出来てないの。 それにね、もったいなくて言えない。 だってきっと、この先きっと 私はもっとあなたのことを愛すから。 昼下がり。 外は真夏、熱地獄。 ここは彼の部屋で、クーラーもちょうど良く効いている。 抱きしめられて、少し冷えていた体が温まる。 ずっとこのままでいたいな……とか珍しいこと思っていたら 「どうする?この先いっちゃう?いっちゃう?僕は別に全然OKだよ」 爽やかな笑顔を浮かべて、問題発言しやがった、こいつ! 私はその言葉で一瞬にして我に返り、周助の体を力強く押した。 「ぜ―――――――――ったい嫌なんだから!大っ嫌い!!」 「あはは。もう、照れちゃって」 「照れてない!」 あ〜あ。 ちょっと乙女なことを思った自分が馬鹿みたい。 でも、こんな奴を大好き、愛してる、とか思ってる私が 一番馬鹿なのかもしれない。 でも良いよ、馬鹿で。 だって奴の方がもっと馬鹿だから。 私を愛しすぎちゃってる、馬鹿。 大好きな大好きな、馬鹿な彼氏。 ++++++++++++++++++ ……ギャグ+甘でしょうか? 壊れた魔王様な不二がずっと書きたかったので、ちょっと満足です。 結局、バカップル(死語)ってことでしょーかねぇ。 夏休みの課題に700字から800字で「空気」「愛」「安全」のいずれかのタイトルで作文書け っていうのマジにあるんですよ。 それ見て思いつきました。