BACK愛している人がいた。 初めて愛した人。 初めて私を、心から愛してくれた人。 愛情をくれた人。 こんな言葉、安っぽいかもしれないけど 世界で一番、愛してる。 これからも、ずっと。 もし、死んでしまったとしても あなただけを愛し続けるから。 愛してる 「くそッ・・・・!」 〔コピー忍者〕の異名をとる、はたけカカシは里の中を猛スピードで駆け抜けていた。 その姿は誰にも見えることなく、残るのは風だけ。 カカシは、恋人のところへ向かっていた。 数日前に、暗殺の任務で里を出た恋人。 戻ってきたら、里の忍者から犯罪者になっていた。 愛しい・・・。 騒がしい朝だった。 家の扉を壊れんばかりの強さで叩かれ起こされて、眠い頭をどうにか働かせて 出てみたら、真っ青な顔のアスマがカカシの瞳に映された。 一体何があったんだよ、と問おうとしたら 「が帰って来た・・・」 愛しい、恋人の名前。 一瞬の喜びは、瞬時に疑問と不安へと変わった。 「どうしたんだ。そんな浮かない顔して・・・」 「良いから早く行け!」 「どこへだよ」 「第一留置所だよ!」 第一留置所。 そこには重い罪を犯したものがいれられる場所。 なぜ、そんなところへ・・・ 「なんでそんなとこ行かなくちゃいけないの」 「がそこにいるんだよ!」 カカシの頭は理解しようとしない。 理解したくなかった。 理解してしまったら、壊れてしまうから。 「あぁ。が行ってた任務で木の葉の忍が敵側についてたとか何か?」 「馬鹿かッ!がいれられてんだよ!」 理解したくなかった。 聞いてしまった。 「どうして」 平然を装う、表の顔。 「依頼人含め3人殺したんだよ。滝の国の奴をよ」 「なん・・・で・・・・」 「分からねぇ。それは火影が聞いている。とにかく早く行ってやれ!滝の国が求めているのは、を渡すこと。 ・・・このままだとあっちで公開処刑にさせられるぞ」 その言葉を聞くと同時に、カカシは走り出していた。 何よりも速く。 速く 速く ・・・・ 着いて、見張りの者から許可を得、中へと入る。 一枚の厚いガラスを隔てた向こう側に、彼女はいた。 白い椅子に腰掛けて、下を向いていた。 「・・・」 ガラスに手をつけて、名を呼ぶと、気付いた彼女は上を向き カカシを視界に入れると、酷く奇麗に微笑んだ。 「・・・ただいま」 「何で・・・どうして」 何て言って良いか分からない。 言葉を上手く紡げない。 カカシはただ、彼女・・・を見つめた。 長い間、見詰め合っていた。 二人が存在する空間だけ、時間が止まっているかのように思えた。 するといきなり、は立ち上がった。 時間が動き始めた。 ガラス越しに、カカシの左手と自分の右手をくっつける。 そして今度は、酷く無表情に 「私のことは、もう忘れてしまって良いから」 声も、無表情に。 「そんなこと・・・ッ!」 出来るはずがない、と言いたかった。 声がつっかえて、言えなかった。 彼女は愛しそうにカカシに微笑んで、ガラスに額をくっつけた。 「これから・・・私がいなくなってから、その瞳に美しいものと汚いもの、色々と映すと思う。だから、私の分まで見ていて、世界」 「お前がいない世界なんて、全てが同じものでしかない・・・!別に行かなくて良いじゃないか!」 その言葉に、彼女は首を横に振った。 「そんなこと出来ない。そんなことしたら、木の葉を傷つけるわ。・・・あんまり気にしちゃ駄目だよ。 これは私の意志でしたことなんだから。そして、決めたことなんだから」 ガラスから額を離し、カカシと向き合う。 「・・・」 何を言って良いか分からなかった。 言葉が見つからない。 一緒にいたときは・・・隣で笑い合っていたときは、話しても話しても物足りなくて。 話さなくても、沈黙は痛くなかったのに。 今は、痛い。沈黙が。 その間に、監視の男がに「時間です」と告げた。 は静かに頷いて、カカシを見る。 「じゃあ、もう時間だから・・・ばいばい、カカシ」 最後に見せた〔悲〕の笑顔。 今にも泣きそうで、抱きしめたいのに、二人を隔てる一枚のガラスの所為で、出来ない。 「・・・最後にお願い。愛してる、って言って」 「・・・・・・愛してる。だから行くな!お前が行くなら俺が「それじゃあ、意味がないじゃない」 「えっ・・・・・?」 「私はあなたを愛しているの。こんな言葉、安っぽくて今まで言いたくなかったけど 今一番言いたい言葉はこれしかないわね。・・・・・カカシ、世界で一番、愛してる」 何時もの笑顔を浮かべた彼女の目尻から、一雫の涙が零れ落ちた。 そして彼女はいってしまった。 「意味がない」 それはどういう意味だったのだろうか。 もう、聞けないのだろうか。 その、意味。 ガラス越しに彼女を見送った。 扉が閉まり、誰もいなくなった狭い空間を、ずっと見つめていた。 すると、後ろに気配を感じた。 だが、後ろを振り向く気力すらない。 そしたら肩を叩かれ 「カカシ・・・」 名を呼ばれた。 五代目火影、綱手の声。 振り向かなければ、とゆっくり振り向くと、綱手は悲しげな顔をカカシへと向けていた。 瞬間に怒りと疑問と悲しみが一気に放出し、カカシは綱手の腕を掴んだ。 「どうして渡してしまったんですか!?」 「・・・がそれを望んだからだ。私は強要しなかった。確かに、滝の国との交流関係は悪くなるが、あっちにも非がある。 それに、滝の国を敵に回したところで、あちらに勝ち目はない。あちらには忍がいないし、同盟国もこっちの方がはるかに多い」 「ならなんでは・・・、望んだんだ」 「カカシを守るためだと、あいつは言っていた」 「俺・・・?」 綱手を掴んだ震える手を、ゆっくりと下へとおろしていく。 掴む力がはいらないから。 綱手を攻めるのはおかしいと気付いたから。 「依頼人は滝の国の次期当主だった。そいつとそいつの側近との話を偶然聞いてしまったんだと」 「話・・・?」 「あぁ。カカシ、お前を暗殺しようとする計画をな」 その言葉で、全てを悟った。 守られた自分を。 自分のために死ぬことを選んだ彼女を。 いくら木の葉のほうが同盟国が多いからって 所詮紙切れ一枚で繋がった関係。 裏切られる可能性は十分ある。 だからは 自分の死を選んだ。 そうすれば、木の葉は・・・俺は安全だと分かっていたから。 「そうしたら一気に頭に血が上り、気付いたら全員死んでいたんだと・・・」 「・・・いかなくちゃ」 まるでガラス玉のような瞳。 映っているのは、。 夢遊病者のように歩き出すカカシの腕を綱手は掴んで止めた。 「どこへ行くんだ!」 「の元です。俺も一緒に、と・・・」 「何馬鹿なこと言っているんだ!そんなことしたら、あいつの決断は・・・想いはどうなってしまう。それをお前は踏みにじるのか!」 「そんなこと言われたって!・・・言われたって」 その場にカカシは崩れ落ちた。 止め処なく、涙が零れ落ちる。 「・・・・・・・・・」 まるでその言葉しか知らない人形のように。 の名前を呼び続けた。 ねぇ、今その瞳には何が映ってる? 閉じた瞳に、私が映っていたら嬉しいな。 私は映っているよ。閉じた瞳に、カカシが。 明日から、もう忘れて良いから。今日まで覚えていて。 私があなたを愛していたことと、あなたが私を愛していたこと。 じゃあ・・・ 数本の長い槍が、を貫いた。 ばい・・・ばい、カカ、シ。 愛して・・・る。 瞳を瞑って死んだその姿は、とても美しく安らかだった。 微笑んだ唇から、血が流れ落ちた。 あの後、まるで眠るように倒れたカカシは病院へと運ばれ、何日も眠り続けた。 ・・・俺の・・・・・何処にいるんだ いなくなってしまうなら・・・もう一生会えないなら、忘れてしまいたい、全て 愛しているから、辛い だから・・・自分を守るために 俺は生きなければならないから そして目を覚ましたその顔には、悲しみはなかった。 それは何時も通りのカカシで、自分が何故病室で寝ているのかを全く理解しておらず おかしく思った綱手が問ってみた。 「お前、覚えているか」 「?何をです」 「が滝の国に手渡されたことだよ」 次の瞬間、皆は恐怖した。 「?誰です、それ」 カカシは忘れた。 だけを、自分の記憶の中から、消していた。 それが自分が生きていくために必要だと、無意識のうちに判断したから。 悲しむ皆を他所に、カカシは病室の窓から外を見た。 「今、青い空と白い雲が見える。・・・って俺、なんでこんなこと言っているんだ。 誰も聞いているわけじゃあるまいし」 +++++++++++++++++++ ふと思いついて書いてみたら、とてつもない悲恋になってしまいました。 全然ラヴラヴ(死語?)してないし 主人公死んじゃうし、カカシ記憶失くしちゃうし・・・・・ まぁ、これはこれでけっこう気に入ってます(かな?)。 なんかこう「悲恋!!」って感じだし^^; つか私、記憶失わせるの好きだなぁ〜・・・・・うん、好きだ。