私の遠い、遠いご先祖様は、どうやら泡になって消えたらしい。
愛する人のために。



  



私は人魚姫。
お父様は地球中に広がる海全てを支配する王。
昔々、私のご先祖様は人間の世界に憧れて、綺麗な声と引き換えに足を得た。
そこで王子様に恋をして、でも叶えられなくて……
結局泡になって消えちゃった。

人魚達は皆、悲しんだらしい。
それを見た、当時の王は全ての人魚に魔法をかけた。
「人間に憧れ、恋焦がれるなら、自分の好きなときに足を得られるようにしてやろう」
と。
消えた我が娘のような、悲しい結末で一生を終える人魚がいなくなるようにと
願いを込めて。

でも、足を得るに当たって、やってはいけないことがある。
それは「愛する者を守ること」。
これをして、ご先祖様は泡になって消えてしまったから。
何がなんでも愛する者を守ってはいけない。
守ってしまったら、泡になって消えてしまうから。



私は人間の世界に十年以上も居座り続けている。
愛する人がいるから。

11の誕生日パーティー中に、1羽の梟が「ホグワーツ魔法学校」から入学許可証を落としていった。
私は興味があるという理由だけで入学をし、足を得た。
入った寮はグリフィンドールで、そこで愛する人が出来た。

シリウス・ブラック。

これがその人の名前。

初めは悪戯好きで口が悪くてちょっと嫌な人、って思っていたけど、同じ時間を過ごしていくうちに
好きになっていた。
彼は私が「人魚姫」だということを知っている。
私の親友、リリーもその恋人のジェームズも。
私と一緒に学校生活を過ごした者はきっと、私の正体を知っているだろう。
人間離れした美しい歌声、そして水の中に入ると戻る尾びれ。
初めは気味悪がられるかな?って心配だったけど、その心配は無駄だった。 
人魚の姿の私を、綺麗だねって言ってくれた。

楽しかった学園生活。
でも、もう終わってしまった。
私は今、シリウスと一緒に暮らしている。
結婚はまだしていない。
同居をしているだけ。
結婚といえば、リリーはジェームズと結婚して、男の子を産んだの。
ハリーっていって、リリーにもジェームズにも似た可愛い子だった。
子守唄代わりに歌ってあげたら、凄く嬉しそうに笑ってくれたことを覚えている。


幸せだけど、今は暗黒の時代。
いつ「例のあの人」や死喰い人に命を狙われるか分からない。
シリウスは
「のことは俺が守るから」
と言ってくれた。
彼は知っている。
私が愛する者を守れないということ。
申し訳なさそうに笑う私に、彼は口付けた。
「俺は自分のことも守れるから大丈夫だ。だからは心配するな」
そう言って、笑った。
「ありがと」
幸せだったの。


でも


私は泡になった。

彼を守ってしまったの。


彼と私は<裏切り者>を見つけ、追っていた。
<裏切り者>はこっそりと杖を取り出す。
それに気づき、シリウスは杖を取り出した。
嫌な予感が迸り「ダメっ!」って叫んで彼を押し倒した。
道の半分ほどが壊滅されていた。
「何で守った!」
彼は叫ぶ。
「ごめんなさい………」
泡になって消える瞬間。
涙が頬を伝わった。
「ごめんなさい。愛してるの。死んで欲しくなかったの。生きて………さようなら」
愛しい人にそっと口付けて、私は消えた。
その場で泡になって。
空気に溶ける。


分かった気がした。
ご先祖様が、自分の命を捨ててまで愛する者を守ったことが。
私は人魚姫。
人魚姫はきっと、泡になって消える運命なの。
愛する人がいるかぎり。





泡になって消えた愛しい者。
今さっき口付けられたとこに恐る恐る触れる。
周りを見渡しても、彼女はいない。
虚空を掴んでも、握り締めるのは彼女の手ではなく空気だけ。

「…なんでだよ……なんで………いなくなるな!戻って来い!!俺に生きてほしいなら。返事をしろ!
っ……」

悲痛は彼女のように、空気に溶けて消えていった。
彼女に届かない声。
抱きしめられない。キスも出来ない。
あの美しい歌声を、もう聞くことは出来ない。

「くっ……――――――!!」


彼はその場に泣き崩れ、愛しき者の温もりを探し、見つけた。
七色に光る大きな鱗を1枚。




















 +++++++++++++++++++

童話〔人魚姫〕をモチーフに。
童話やら神話やらジンクスやらで書くの好きかもしれません。
修正するところはないかと、自分のサイトを確認していたら
全て消えていて吃驚しました。
最後の方、書きなおしました。全て……だって、ここだけ残ってなかったんだもん(涙)





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