必要な資料を取りに行っていたため、それまでそこは無人だった。 しかし、その部屋の主であるロイ・マスタングは扉を開けたと同時に あるものを視界にいれる。 〔物〕ではなく〔者〕。 ソファに座り、肘置きに足を組みながら投げ出している女性はロイを見て 「おかえりなさい」 微笑した。 manicure 「何をしているんだ」 呆れるような目で彼女を見ながら扉を閉め、仕事机にドサッと大量の資料を置いた。 「見て分からないの?マニキュアを塗っているのよ」 「そのくらい分かっている。私が聞きたいのは何故、私の部屋でそんなことを しているんだということだ」 ロイは彼女の座るソファの、彼女が足を投げ出していない方の肘置きに腰を下ろす。 「駄目?」 上目遣いに見上げ問う。 「仕事中だろ」 「あら、あなたには言われたくないわね。おさぼりの絶えないマスタング大佐」 くすりと笑い、指を伸ばして彼女はふーっと爪に息を吹きかけた。 マニキュアが乾いていく。 ロイは小さくため息をつき、彼女の手をとった。 「綺麗でしょ?」 「あぁ。だが軍人たるものがここまでする必要があるのか?休みの日だけで良いではないか」 「あら、それは愚問ね。軍人であるまえに私は女よ。何時でも綺麗にしていたいと思うのは普通でしょ?」 マニキュアの蓋を閉め、彼女はロイを見る。 「あなたのために、って言えば良いの?」 「その言い方はまるで私が無理矢理言えと言っているみたいではないか」 「顔に書いてあるわよ」 マニキュアを塗ったばかりの手を少し丸めて、それを口元に持っていき彼女は悪戯っぽく笑う。 ロイは少し赤面し、彼女の首に腕を回し、そっと額にキスをした。 「私以外に綺麗な姿を見せなくていい」 「じゃあ寝起きの顔とかは見せていいの?」 「そっちの方が駄目だ!」 独占欲が強いな、と彼女は思う。 でもそれが愛されてるってことで、嬉しい。 からかわれ、少しムッとしていたロイを愛しげに見つめ、その自分よりも太い首に 腕をまわし、キスをする。 「からかってごめんなさい。心配しないで」 「・・・・・君は私だけのものだ」 独占欲を言葉にし、ロイは彼女にキスをした。 「君は何もしなくても綺麗だよ」 「ありがと」 「もちろん、寝起きもね」 「あら。だったら久しぶりにロイの家に遊びに行こうかしら」 久しぶりって言っても一週間ぶりくらいだけどね。来るときは何日も続けてくるじゃないか。じゃあ久しぶりで良いのかな? そんな言葉を交わし、彼女はまた悪戯な微笑を浮かべる。 「といっても、条件付きだけどね」 ロイは首を傾げる。 「溜まってるお仕事を終わらせること。それまで家に帰ってきちゃ駄目よ。私は先に帰ってるから」 「えっ、ちょ、それは・・・」 「じゃあリザに伝えてくるわね。大佐は仕事が終わるまで家には帰らないそうです、睡眠もとりませんって」 慌てるロイを無視し、彼女は立ち上がって勝手に話を進める。 「ちょっと待てぇ〜!!」 歩き出す彼女に手を伸ばす。 彼女は扉を開き 「じゃあ、家で待ってるからね」 そう言い、悪魔的に笑んで、去っていった。 こうなるとは・・・・・・ と、ロイは初めから最後まで、全て彼女の計算だったのではないか と思いつつ、机に向かう。 彼女のため、そして自分のために。 やっとのことで仕事が終わり、家に帰る。 電気がついていて、扉を開くと小走りで彼女が現れた。 「おかえりなさい」 彼に抱きついて、そしてキスをする。 部屋からはまた、マニキュアの匂いがした。 「また塗っていたのか?」 「こんどはペティキュア。だって、全身綺麗なほうが良いでしょ?」 意味深に笑む彼女。 その言葉の意味を彼は理解し、「あぁ」と頷いた。 +++++++++ マニキュアを塗っていたら思いついたので バァーっと書きました。 年齢は彼女は大佐より年下設定です、はい。 女性って男性よりも精神年齢高いですから。 結婚は男性が二歳上が一番相性が良いらしいですよ。 BACK