「信じらんなぁい!こんなに美人の誘い断る男って何者よー!もったいない!」 「でもでも!許してくれたんだよ?ミミちゃん。」 「ミコト先輩!駄目よ、それくらいで満足するなんて。全世界の男は私の物!くらいの勢いで行かなきゃ・・・!」 「み、ミミちゃん・・・・、私の為にそこまで・・・!」 「おっけー!私がミコト先輩を、素敵に無敵な最強フランスドールにしてあげるわっ!」 「ミミちゃん・・・、いいえ、ミミ先生!私、私頑張るわ!」 「その意気よ、ミコト先輩!」 「・・・・・・・いや、あのな、ミミちゃん。青春ごっこしてる所悪いんだが・・・・。」 「何ですか?邪魔しないでよ、太一さん〜!」 「いや、でもな、その相手って言うのが、タケルなんだよ・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「いや、本当に。な?ミコト。」 「うん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」 「えっと・・・、ミミちゃん・・・?」 「タケル君?」 「うん。」 「・・・・・・・・・・。」 「ミミちゃん?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・年下か。」 「え?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最初から、手ごわい相手だわ・・・・!」 03 あ、とヒカリが立ち止まった。 「どうしたの?」 玄関で一緒になった京が首をかしげる。 その後ろを歩いていたタケルと大輔もヒカリを見た。 「うん、あそこ。ミミさんじゃない・・・?」 え?と三人が声を合わせてそちらを向くと、確かに彼女はそこに存在していた。 仁王立ちで。 「み、ミミお姉様・・・・?」 憧れの先輩の、頼もしくも良くわからない仁王立ちに、ヒクッと京は顔を引きつらせる。 ミミは、明らかに怒っていた。 普段なら無条件に駆け寄る京が進めないほどに。 こっそり4人で顔を見合わせる。 あっちはまだ自分達に気付いていないようだ。 「京、お前行けよ。」 ミミ先輩と仲良いだろ?と大輔が言う前に京は両手を顔の前で振った。 「嫌に決まってるでしょ?それを言うならヒカリちゃんやタケル君の方が付き合い長いわよね〜?」 「京さん、年上ですよね?」 「純真も受け継いだんだしな!」 ヒカリと大輔、両方に迫られた京は、うう・・・と詰まると、唯一何も言っていない後輩に助けを求めた。 「た、タケル君!そんなの横暴だよね?」 しかし、口元に手を置いて何かを考えているらしいタケルは、その言葉の反応を示さずに言った。 「・・・・ごめん、僕かもしれない。ミミさんの探してる相手。」 昨日の出来事を思い出したタケルは、ははっと口元を引きつらせた。 一方ミミの後ろには、ずらりと5人の中学生が壁に背を預けていた。 「ミミちゃん、本気かなぁ。」 「本気だろ?あの気合の入れ方は。」 校門前で仁王立ちする後輩を心配そうに見るミコトに、 ミコトよりはミミとの付き合いの長い太一は苦笑しながら言う。 そして反対側で親友が遠い目をしているのを見て、大きくため息をついた。 何故彼らがここにいるのかと言うと、 『単にこのミコトの容姿と自分の戦法を合わせた技に落ちなかった』 と言うプライドを崩された事がミミの中でショックだったらしく、 小学校まで殴りこみに来ただけの事だ。 ミコトと、何故か光子郎の腕を引っ張って行くミミに、 目標のタケルと、おそらくストッパーとして連れて行かれたであろう光子郎を心配して、 太一と空は嫌がるヤマトを引っ張ってやってきた、と言う訳である。 「何で俺まで・・・。」 「ヤマト。お前な、往生際が悪ぃぞ〜?」 太一の呆れ、からかうような口調に、 ムッとしたヤマトが言い返そうと口を開くが、そこから言葉が出る事はなかった。 「あ、はっけ〜ん!」 威勢の良い、ミミの元気で不吉な声が聞こえたからである。 お台場小学校には、裏庭と言うものがある。 そこに、タケルはミミにて連行されていた。 「えっと、ミミさん・・・・・?」 「だから!参考までに聞きたいだけなの。」 タケルの両手を掴み、にっこり微笑むミミ。 普通、中学校一の美少女に微笑まれれば、男ならば誰だって胸を高鳴らせるだろう。 しかしタケルはと言うと、 小学校低学年からの付き合いで寝食を共にし、裏の部分まで知り尽くしたといっても良いほどの仲間だ。 一年前よりも厳しい戦いを共に過ごした、良く知る二つ上のお姉さんの、笑顔。 違う意味で心臓バクバクである。 その証拠と言うべきか、タケルは顔を青くさせていた。 「あーあ、可哀想に・・・・。」 それを遠巻きに見る中学生組みは、最初から救出は無理だと傍観者を決め込んでいた。 その手に、後輩達を捕まえて。 「・・・・何か、あったんですか?」 事情を一切知らない京が困惑した表情で首をかしげ、 昨日のミコトの様子を見ていた大輔とヒカリはその後が気になっていたのか、瞳を輝かす。 一度、未だ「俺は関係ない」と太一と空の影に隠れる捕まった後輩の兄を見、 ここにくる途中でミミの手から奪還した光子郎を混ぜていきさつを大雑把に話した。 「で、ミミちゃんの高等テクが効かなかったからって、 今後の対策の為にどうしても聞き出す!って言って聞かないのよ。」 空の言葉を聞きながら、 京は敬愛するお姉様と捕まった仲間の間をおろおろと移動する、事の原因を見る。 “黙っていればフランスドール”。 その言葉にあるように、顔はとても良い。ついでにスタイルもかなり良い。 「・・・・・・・・・・・・・。」 「京さん?」 ミミ達の方を振り向いたまま身動きしない京に、ヒカリが声をかける。 ハッと我に返ってそちらを振り返る。 視線の先は、顔色真っ青なヤマトだ。 「・・・・・結構、似てますね。」 ぱちぱちと瞳を動かし、さすが従兄弟と感心すれば、 殺気の混じった鋭すぎる睨みがかえってきた。 元々、顔立ちがよろしいヤマトである。 美人の気迫ほど怖いものはない。 あ、いや、すみませんと慌てて謝れば、段々鋭さがなくなり、 最終的には脱力したようにしゃがみ込んでしまった。 「・・・・やっぱり、そう思うか?」 そんな親友を見下ろして、お、認めたと太一が意外そうに言う。 「認めるとか認めないとか、そういうんじゃなくて・・・・、やっぱり似てると思うか?」 脱力しきった、疲れたような目で訴えられ、一同揃って彼女を振り返り、頷いた。 その反応にうう、と気まずそうな表情をしたヤマトは、頭を抱えてため息をついた後、 何かを決心したように勢いをつけて立ち上がった。 「・・・・・・仕方ない。」 ちらっと3人を見てから、ここまでかと再びため息をつくと、ヤマトは歩き出した。 逃げるようではなかったので、何するんだ?と様子を見ていた太一たちの目の前で、 ヤマトはミミにストップをかけると、ミコトの腕を引っ張って離れる。 こそこそ話す二人を、弟を含めたその場の全員が首を傾げて見ていた。 時折、はぁ!?とか、え〜?等ミコトの不満そうな声が上がるものの、 その話し合いは一応二人の間で完結したらしく、 しばらくしてやけに不機嫌そうな顔をして戻ってきた。 「ごめん、ミミちゃん!そしてありがとう。」 にこりと、笑って謝り礼を言うミコト。 戻ってきていきなりの事だったので、ミミはすぐに反応を返せなかった。 「・・・・何言ったの、ヤマトさん。」 キョトンとした表情のまま、ミコトに言葉を返さず、ミミはヤマトを向く。 そのあまりにも唖然とした様子に、ヤマトは苦笑した。 「いや、人を騙すな、って・・・。」 「騙してないでしょうがっ!ちゃんと確実に言わなかっただけだって。」 「今の場合、それが騙したって言うんだよ。」 「言わない!お前と一緒にされたくなかっただけ!」 「それは俺の台詞だ!」 まだ2日も経っていないのにもかかわらず、見慣れてしまった二人の言い争いを聞きながらも、 やはり?を浮かべる仲間達は、唯一その言葉を理解したらしい弟を見る。 しかし、考え込むように眉を寄せている彼に話しかけることは出来なかった。 「だいたい、お前がこっち来なきゃよかったんだよ。」 「俺だってタケルと母さんがこっちにいなきゃ、お前がいる所なんか来なかったっての!」 「じゃあ来んなよ。ずっと向こういれば、お前の顔なんか見なくてすんだのに。」 「はぁ?俺だってお前の顔なんか見たくないっての!」 段々と過激になっていく二人の言い争いに、止めるべきかそれとも放っておくべきかと悩む。 それと同時に、俯きがちになっていくもう一人が気にかかっていた。 「だいたい、何で日本に着たんだよ。」 「少なくとも、お前に会うためじゃねぇよ!」 「ったり前だ!タケルが一緒じゃなきゃ家にあげるか!」 「だから行かねぇよ!そもそも、何で俺がお前に会いに来なきゃなんねぇんだ!ふざけんな!」 「だからそれは俺の台詞だっての!」 「じゃあ離婚した時、嬉しかった?」 「当然!」 「むしろ清々したね!」 そう答えた瞬間、は、と我に返った。
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