あれから時間(とき)が経ち、私達はまた愛し合うようになる。 彼はもう、敵ではないから。 私はもう、あのように変に〈守られ〉てはいない。 でもまだ、ずっと傍にいるのは怖い。    茨迷路(いばらみち) 早めの朝食を取っていたときだった。 いきなり吐き気が襲ってき、吐いた。 口を何回も水で濯いで、今日はリリー達と会うんだから食べて元気をつけないと、と口にいれ咀嚼し始める。 食べ終わる頃、また吐き気が襲ってきて、吐いた。 何なのこれ? ハッ、としてお腹に手をやる。 「まさか・・・・・・」 嬉しさと不安が一気に襲ってくる。 私はすぐに家を出た。 リリーの家に行くにはまだまだ早い。 向かった場所は インターホンを鳴らすと直ぐに 「いらっしゃい」 リリーとジェームズが笑顔で出迎えてくれた。 「こんにちは。今日はお招きありがとう」 「どういたしまして。さぁ、中へ入って」 「お邪魔します」 案内されてリビングへいくと、そこにはもう見慣れた顔が揃っていた。 「お久しぶりね、シリウス、リーマス」 「そうだな。いっちょ前に綺麗になりやがって」 おかしな言い方だが、きっと彼なりに褒めてくれているのだろうと思い、嬉しかった。 「久しぶり。元気だった?」 「見れば分かるでしょ?とっても元気よ」 しばしの再開を楽しんで、「お昼よ」というリリーの言葉を合図に用意された席へと着く。 「いただきます」 食べたくない。 それが本心だ。 でも食べなければ。 心配かけるから。 でも食べたら・・・・・・ 私の食が進んでいないのに気づいたリーマスが心配そうに 「どうしたんだい?あまり食べていないようだけど」 「ちゃんと食べろよ。せっかくリリーが作ったんだから」 ジェームズに言われ、「うん」と小さく頷き、ハーブと一緒に焼かれた鶏肉を口いっぱいに頬張った。 それがいけなかったのだろう。 飲み込んだと同時に押し寄せてくる波。 私は口を押さえた。 「リリー・・・トイレ、どこ・・・」 「ドアを開いて直ぐそこよ」 「ごめん・・・ありがとう」 弱弱しく立ち上がり、よろよろと歩いてリビングから出る。 そしてトイレに篭った。 押し寄せてきたものを全て吐いたら楽になった。 洗面所で手を洗って口を濯いでハンカチで口を拭く。 洗面所を出るとみんなが勢揃いしていた。 「大丈夫?」 心配そうにリリーに問われる。 「うん」 気づかれていないかと、不安になる。 ここにみんなが揃ってるってことは、気づかれた? その疑問の答えは直ぐに分かることとなる。 「誰の子だよ」 「えっ、あっ・・・・・」 気付かれていた。 不機嫌そうにシリウスに問われ、私は口篭る。 「シリウス!初めに聞くのはそれじゃないでしょ。、正直に言って」 リリーは私に真剣な瞳を向けて、両手を握った。 「妊娠したの?」 もう隠せないと分かった。 だから、頷いた。 「誰の子だよ」 同じ言葉をシリウスがまた発す。 しかし、ジェームズが「しっ」とシリウスにしたので、不貞腐れながら「話進めろよ」とリリーに言った。 「お医者さんは」 「・・・今日の朝行って来た」 「いつからこんな感じなの?」 「今日の朝が初めて・・・・」 「何ヶ月?」 まだ問いは続く。 その問いに対して、私は人差し指と中指を立てた。 「二ヶ月ね。そう・・・私より二ヶ月後ね」 リリーが嬉しそうに微笑んだから、私も釣られて微笑した。 しかし直ぐにまた真剣な顔に戻って問われた。 「産むの?」 答えは決まっている。 「うん。相手に反対されたとしても産むわ」 「反対されるの前提かよ」 そう言ったシリウスはまだなぜか不機嫌そうだ。 食事を途中で中断されたからだろうか。 「んー・・・子供好きそうな人じゃないし。一ヶ月くらい会ってないしね。心の準備っていうの? そういうのは全くないと思うの」 「恋人なのにそんなに会ってないの?!」 驚いたようにそう言葉を発したのはリーマスだった。 私は少し申し訳なさそうに笑う。 過去のあのことを思い出した。 たぶんあれが、人生で一番〈幸せじゃない〉とき。 「一度、近付きすぎて、お互い相手のことばかり想い過ぎてしまってね。傷ついて別れた・・・離れたことがあったの。 今はもう大丈夫だけど。だから暗黙の了解であまり会わないようにしているのよ。もう少し会わないつもりでいたんだけど、 会わなくちゃ駄目かな?」 「会って話して来い!それで反対されたら俺が養ってやる!」 そう言ったのはシリウスだ。 「ありがと。そうね・・・じゃあ行って来ようかしら」 「今?」 「うん」 「大丈夫なの?」 「大丈夫よ。吐いたばっかりだし、きっと家にいるだろうから」 心配そうにするリリーの肩をジェームズが抱く。 「送ってこうか?」 リーマスが問う。 「ありがと。でもいいわ」 私は断り、玄関のドアを開いた。 皆も一緒に出て、心配そうに見守る。 空は青く、晴天だ。 私は箒を取り出して跨った。 「気をつけろよ」 「うん」 精一杯元気よく微笑んで、私は地面を蹴った。 大空高く、舞い上がる。 そして着いた一つのお屋敷。 私はインターホンを押した。 出て来たのはここの屋敷しもべだ。 「これはこれは様。セブルス様なら御自室にいらっしゃられます」 「ありがとう」 お礼を言って、私は長い階段をのぼり、彼の部屋の扉をノックしてから彼の名を呼ぶ。 「セブルス」 彼は私の声に反応し、今さっきまで読んでいた本を閉じ、立ち上がった。 「久しぶりだな」 私の前に立ち、そっと瞼の辺に口付けた。 「どうした」 いつもは行く前に連絡を取るのに、今日は突然行ったから驚いているようだ。 「・・・大事なお話があって来たの」 彼の服を握った手を離す。 「大事な話?」 「えぇ」 私は微笑むだけで、話始めなかった。 「・・・・・なんだ、言ってみろ」 「自分を責めないでね」 意味が分からないといった顔をセブルスはする。 しょうがない事だろう。 何がなんだか分かっていないのだから。 「それは嫌なことか」 「あなたにとっては分からない。でも、私にとっては嬉しいことよ」 「ならきっと、私にとっても良いことだ」 「そうかしら・・・本当に言っていい?」 何度も問い、焦らす私に我慢が出来なくなってきたようだ。 「いいから早く言え」 「・・・・・妊娠したの」 愛しそうにお腹に手をやり、私は言った。 セブルスはまだ私の言葉の意味を理解出来ていないようだ。 少しの時間(とき)が経ち、やっと口を開いたと思ったら。 「え?」 だけ。 だからもう少し詳しく言ってあげた。 「私のお腹の中には今、もう一つの生命(いのち)が宿っているの」 セブルスはしばし考え、どうやらやっと理解したらしく驚いたよう()を見開く。 「私の子なのか?」 声は微妙に震えていた気がした。 どうやらきょどっているらしい。 「あなた以外に誰がいるというの?」 「それは・・・・・・」 口篭る彼を無視し、私は話を進める。 「産むことを反対するのなら、今度こそ永遠にさよならをしましょ。私は産むわよ。決めたの」 そう言った私を少し怒るような表情で 「まだ誰も産むなとは言っていないだろう」 「そうか・・・私の子がお前の中に・・・」 ぶつぶつ言い出した。 「セブルス?」 重要な答えをまだ聞いていないので呼んでみる。 一人の世界に入っているみたいだったから。 「順序が逆になってしまったな」 小さく呟いた。 それに対して私は疑問符をあげる。 セブルスはほとんど見せることのない微笑を浮かべ、私と真正面から向き合った。 そして真剣に私を見つめる。 「私と結婚してくれ。まだ指輪は買ってないけれど、お前が望むなら今すぐにでも買って来よう」 「私と結婚してくれ」という言葉が何回も何回も頭の中で繰り返される。 いつのまにか涙が零れていた。 「どうした」 慌てるセブルスに私はこれ以上涙を見せたくなくて抱きついた。 「こんな嬉しい答えはないわ。セブルス、愛してるわ」 「私も。愛してるよ」 それから婚約して、結婚して。 リリーが男の子を産んだのに続いて、二ヵ月後に女の子を出産して。 幸せがたくさん続いた。 でもその後に〈幸せじゃないこと〉がたくさん続いた。 これは〈不幸〉と言っていいだろう。 信友の死。 友の裏切り。 信友の忘れ形見はマグルの所へと連れて行かれる。 私が育てるつもりだったのにセブルスが・・・(しょうがないんだけどね)。 私はそれから、茨迷路(いばらみち)を歩いている。 美しさ(しあわせ)恐ろしさ(ふしあわせ)が入り混じった迷路を。 私はまだ抜け出せずにいる。 この迷路から抜け出せる日は来るのだろうか。 それは誰も分からない。 この世には頭では分からないことが溢れているから。  +++++++++ セブルスさんの一人称が「私」なのは、学生のときから「我輩」とか言ってるのって どんな奴だよ。 と思ったからです。 一応、ここのセブルスさんもお若いのでまだ「私」に。 ということで、茨迷路はこれでお終いです。 分からないことだらけですがお終いなんです。 ただ、子供編を書こうかどうか考え中。 妊娠ネタはまた書きたいですね(笑)
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