『金澤先生、金澤先生。お客様がお見えです。至急、応接室の方へお越しください』
後日談 V 〔ご挨拶〕
「おーい、月森!」
名を呼ばれ、蓮は振り返ると、視界に入ったのはクラスの男子。
「何だ」
「さっき職員室でお前の親見たぜ」
その言葉にさっきの放送。そして先日の会話。
繋ぎ合わせて出た答えは一つだけ。
蓮は職員室へ向けて走り出した。
「おい、ちょ、月森ぃー!」
職員室へ行き、先生に両親が来ているようですが・・・と言ったら、応接室にいると教えてくれた。
付け加えるように
「金澤先生と話しているぞ」
と言われ、憶測は確信へと変わった。
応接室へと向かい、一応ノックをしてそこへ足を踏み入れた。
「失礼します」
両親と金澤が一斉に蓮のほうを向いた。
「あら、蓮」
「どうしたんだ?」
「そちらこそどうしたんですか?」
問われ反対に問うてやる。
視線は金澤を睨みつつ。
金澤はその視線に気付いて、やれやれと小さく息を吐いた。
「ご挨拶に来たのよ。あの子の夫となる方なのだから、時間がある時に一度話しておこうと思ってね」
「私達としては、今すぐ結婚してくれても構わないが」
「いや、それはちょっと・・・・・・」
「冗談ですよ」
「今すぐは無理よ、あなた」
冗談を言って上品に月森夫婦は笑う。
両親は金澤を気に入ったようで、もう三人は打ち解け、穏やかな空気が流れている。
蓮の周りを覗いては・・・・・・・・・
「蓮、来たならそんな所に突っ立ってないでこっちに来たら?」
「そうだ。将来、お前のお義兄さんになる方なのだから、交流を深めておくにこしたことはないだろう」
「姉さんの結婚について反対なので、交流を深めるも何もないので結構です」
ヒヤリとした風が、自分の中を通り過ぎていった感覚を金澤は覚えた。
きっと月森夫婦もそうなのだろうと思って見てみると
優しそうに微笑んでいた。
「蓮。金澤さんはね、が高校生のときからずっと好きだった方なのよ。
やっとその想いが伝わって、こうなったのよ。素敵だと思わない?」
「いいえ」
「・・・・・・蓮。これはと金澤さんのことなのだから、お前の我が儘で破棄することは出来ないのだよ」
「・・・・・・・・・とにかく、反対なものは反対ですから。失礼します」
それだけ言うと、蓮は軽く頭を下げ、去っていってしまった。
「ごめんなさい。お姉ちゃん子に育ったから、自分からが離れていってしまうのが寂しいのね」
「いや、別に大丈夫ですよ」
と笑った金澤は心の中で
「(こりゃ、重度のシスコンだな・・・・・・)」
などと苦笑したのだった。
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大らかな両親とシスコン弟。
そして姉は両親似。
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