これって秘密の恋なのかしら 前ボタンの全て開いた団服のポケットに手をつっ込んで 背筋は上から何かで引っ張られてるようにピンと綺麗に張られている。 規則的な足音。長い足。 前髪はセンター分けで、腰ほどで切り揃えられたブラウンがかった金髪。 彼女は科学班の研究室の前で足を止めると その扉を勢い良くバン!と開いた。 もちろん、皆の視線は彼女へと向けられている。 とても驚いたようで、その状態のまま終始止まり 「「「さんッ!!」」」 動作を開始したと同時に、一斉に彼女の名前を呼んだ。 「お久しぶりね。皆、何時も通り寝てなさそうな顔」 綺麗に微笑む彼女は、周りを見渡し、皆の表情を見て、何故か呆れたように吐息を吐いた。 「コムイは?」 「ちょっと仮眠とってます」 「さん、行くなら起こしてきて下さい」 「分かってるわ。じゃあ・・・・・・」 は何かを言おうとしたが 開いた扉から 「コーヒー飲む人―?」 リナリーと、コーヒーを運ぶのを手伝って付いて来たアレンが姿を現したことにより 一旦、口は噤まれた。 二人はを視界に入れると 「っ!」 リナリーは持っていたコーヒーを直ぐ側の机に置くと、とても嬉しそうに の元へと駆け寄った。 アレンは、誰だろう?ときょとんと首を傾げ、の団服を見 同じエクソシストなのだと心の中で一人頷いた。 「まだ帰って来たばかりなの?」 「えぇ。今さっき帰って来たばかりよ」 「次に任務に行く予定は?」 「今のところないわ」 「じゃあ、久しぶりにゆっくり出来るのね!」 「そうね」 リナリーはとても嬉しそうに話し、笑んだ。 それはまるで姉を慕っている妹のよう。 「兄さんにはもう会ったの?」 「ううん。今から行く所なの。寝てるみたいだから、起こしてくるの。だから お話はそれからね。一時間弱でここに戻ってくるから」 「じゃあ、待ってるわ」 一度、皆に背を向け 何かを思い出したように振り返る。 手はまた、ポケットの中につっ込まれていた。 「リーバー君」 「はい、何すか?」 「戻ってきたら手伝うから、二人ずつ三時間睡眠をとらせてあげて」 「えっ、でもさんだって任務から帰って来たばかりじゃ・・・・・・」 「大丈夫よ。汽車の中で寝てきたし。コムイの馬鹿もフル活動させるから。皆、全然寝てないんでしょ?」 「まぁ・・・・・・・・・」 「なら決定ね。少し寝れば、頭もすっきりするわ。人間の睡眠の周期は一時間半。だから三時間ね」 「分かりました」 「じゃあ、戻ってくるまで頑張ってて」 踵を返し、歩き出す。 ふと、アレンに気付き、同じエクソシストだと団服を見て確認すると 優しく微笑んだ。 アレンがその笑顔に見惚れている内に、は部屋を後にし 気付いたときにはいなくなっていた。 「あの人誰ですか?」 と問うと、皆は口を揃えて 「元科学班員で、今はエクソシスト」 「で、コムイ室長の・・・・・・」 首を傾げて 「「「恋人?」」」 疑問をあげた。 それは驚くべき言葉だったが、とても曖昧なものだったので 「恋人?」 アレンも一緒に首を傾げて疑問符をあげた。 「そうなの。聞こうにも、そういう態度を見せ始めてから時間が経ちすぎて聞けなくなっちゃってね」 「そうなんですか」 「そうだ、アレン!お前聞いてくれよ」 「えぇッ!!」 皆がこのような話をしていることは露知らず はコムイの部屋の扉を一応ノックし、予想通り返事が返って来なかったので 部屋に入り込むと、ベッドに寝ているコムイの手がある辺に腰掛けた。 「コムイ」 名を呼んでも返事はなく、起きる気配もない。 は微苦笑すると、その表情を段々と深刻なものに変えていき 呟くように、さっき、皆と話していたときよりも暗いトーンで寝ているコムイに話し始めた。 「ねぇ、コムイ、私ね・・・・・・ほら、もうけっこうな歳じゃない?だから、ね・・・・・・ 結婚、しようと思うの」 「えっ・・・・・・・・・・・・・・・」 ずっと起きていたのではないかというほどのタイミングで、コムイは布団を跳ね除け を見つめた。 動揺が、顔に出ている。 「何、で・・・・・・・・・」 するといきなり、は笑い出し、最終的にはお腹を押さえながら大笑いをした。 コムイは一体何が起きたのかと困惑している。 は目尻に溜まった涙を指先で拭った。 どうにか笑いは収まったようだ。 「ごめっ・・・・・・嘘よ、嘘」 笑いすぎて、声はまだ少し震えている。 「嘘・・・・・・何だ、良かったぁ」 コムイは本当に心底安心したらしく、大きく吐息を吐き出した。 それに、は満足気に微笑する。 「起きたということは、リナリーと同じくらい、私を愛してくれている・・・・・・と 私は思ってしまうけど、それで良いかしら?」 「もちろんさ、。君に対する感情は、リナリーに対する感情と酷似しているようで全く違う」 コムイは微笑みながら、を自分の方へ抱き寄せた。 「じゃあどういうの?」 「愛しくて愛しくて、誰にも渡したくない」 「それは酷似点でしょ?」 「最後まで言わせてよ。戦いから帰って来る度、抱きしめて生きている事を確認したくなる。それはリナリーも同じだ。 だけどね、にはそれ以上の事も求めたくなってしまうんだ」 優しく発されているのに、言葉は何処か、欲求不満コールをしている。 コムイはの額にキスを落とし、抱きしめる力を強めた。 「早く戦いが終わって、一緒になれたら良いのにね」 「そうね。三十前には結婚したいわ」 「僕は無理かな」 苦笑するコムイに優しく微笑んで 軽くキスをした。 いきなりの事に、刹那コムイは驚きで目を見開き それを合図にするように、の唇に自分の唇を押し付けた。 強く、強く。 酸素を失っていくくらい長い間、繋がっていた。 唇を離すと、は荒く呼吸をし、コムイを睨み付けた。 「猛獣」 「がキスさえしてこなかったら、自我を抑えられたさ。さっき言ったろ? それ以上の事も求めたくなってしまう、って。でもあまり行き過ぎてしまうと、何だか皆を裏切っているような気がするから、 戦いが終わるまで、キスまでに止めておくよ」 「本当に止めておけるの?」 「・・・・・・・・・・・・」 自信なさそうなコムイに、はくすりと笑った。 「今は心の準備が出来てないから、もうちょっと待ってね」 「大丈夫。待つよ。何年でも、何十年でも」 「何十年は言いすぎだってば」 「冗談だよ」 もう一度抱きしめて、お互いの体温を感じ合って。 想いが一直線上に繋がった気がした。 「そうだ。科学班員達、二人ずつ三時間交代で睡眠をとらせたいから、この後フル活動ね」 「えぇ―――っ!」 「文句言うなら、次の任務までコムイに近付かないから」 「それは困る!」 「じゃあちゃんとやる事。休んだでしょ?」 「はい・・・・・・・・・でさ」 「ん?」 「皆には何時言うの?僕達が付き合ってる事。もうバレてる気もするんだけど、不思議な位皆何にも言ってこないんだよね」 「えっ!と、それは・・・あの・・・・・・・・・」 さっきまでの余裕が嘘のように、は顔を真っ赤にして しどろもどろになった。 可愛いな、と思いながら、もっと苛めてやりたいと思ってしまう。 でも、止めておく。 理由は無い。ただ、何となく。 「何か、さ、言い難くて・・・・・・聞かれれば言える、と思うんだけど・・・・・・・・・」 「じゃあ、皆の見ている前でキスしてあげよっか?」 「却下!」 「冗談だよ。その代わり、もう一度」 「えっ?ん・・・・・・」 もう一度、唇を塞いで その甘い感覚を味わって 君が生きていてくれるだけで 僕は幸せなんだ。 任務に行かせる事、本当はとても嫌なんだよ。 でも君は絶対帰ってきてくれると信じているから 帰ってきて、こうして抱きしめてキスして確かめ合って 笑い合えるって信じているから。 小さな幸せかもしれないけど、僕には勿体無い位だよ。 だって僕は 君の虜だから。   〜後日談〜 「あの、さん!」 「ん?・・・えっと、誰だっけ?」 「アレン・ウォーカーです。宜しくお願いします」 「あっ、新入りの子。宜しくね。・・・で、アレン君、どうしたの?」 「えっと、あの・・・・・・」 「いけ、アレン」 「頑張って、アレン君」 「その・・・・・・あのですね、さんとコムイさんは付き合っているんですか!?」 「えぇ!・・・・・・えっと、それは・・・ね」 「この反応・・・・・・」 「イエスね」  ++++++++++++++++++ 当初は違う、ホントこんな甘い感じの奴じゃなかったんですよ。 もっと、シリアスな感じだったのですが 色々と矛盾やらなんやらが出てきて、頭の中でしっかりとまとまらなかったので 違うヤツ書く!!と思ったら、浮かんできてくれたヤツです。 主人公はクールでカッコ良い女性だけど、本当は可愛い性格な人。 年齢はコムイよりちょっと下。 いかがでしたでしょうか?
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