BACK扉の開かれた音に反応し、私と猪里君は振り向いた。 扉を開けた者の正体が視界に入る。 それと同時に、私は彼の名前を発していた。 「大河………」 私達を睨んでいる。 唇を噛んで、強く拳を握った大河。 「こういうことだったのKa…!」 「えっ?」 乱暴に扉を閉め、つかつかと私達の許へと歩んできて、猪里君の胸倉を掴んだ。 「猪里と付き合うことになったから俺と別れたのかYo!」 私の方へと向けられていた顔を、大河は猪里君へと向けた。 「猪里が原因Ka?何で、何でを取ったんだYo!!」 「虎鉄!誤解だ!」 「だったら何で授業サボってと一緒にいるんDa!!」 大河は猪里君の話を聞こうとせず、言葉をぶつけていく。 頭に血が上っているようで、顔は赤い。 何で猪里君を攻めるの? おかしいでしょ? だって、猪里君は私の話を聞いてくれてただけだもの。 猪里君を揺らしながら怒りを発す虎鉄に私は我慢できなくなった。 その場にただ突っ立ってるのが嫌になった。 だから バシッ 「っ……」 私は大河の頬を思いっきり叩いた。 叩いた部分は赤くなり、大河はそこに手を当て、何が起こったのかまだ理解出来てないように私を見た。 「何馬鹿言ってるのよ。猪里君はずっと私の力になってくれていたのよ! 私があんたの事で悩んだり落ち込んだりしたときとか……別れは私が自分で決めたの! 猪里君は別れることに反対してたのよ!…でも、私、我慢が出来なくなって……」 下ろされた両腕、握られた両拳、俯いた顔。 辺りはしんと、静寂に包まれた。 「だったら、今は何してたんだYo」 「それは……っ!」 言えない。 でも言わなくちゃ誤解される。 どうしよう どうしよう…… 大河から視線を外しながら、頭の中で自問自答して悩んでいると 猪里君がそっと大河に近付き、耳打ちをした。 大河はハッとしたような顔をして私を見た。 猪里君は、話を終えると、背を向けて屋上から出て行った。 大河と二人きり。 どうすれば良いの? 沈黙。 私からは切れない…… その、痛い沈黙を 「ごめんNa」 切ったのは大河だった。 私は顔を上げ、大河を見た。 少し顔が赤いのは、まだ怒りが残っているから? それとも……… 「お前に嫌な思いさせてるなんて、全然考えてなかった」 謝られるなんて、思ってもみなかった。 少しだけそっぽを向いて、顔を赤らめる大河に愛しさが増してくる。 流れそうになった涙は、流さない。 「好きなんDa!別れたくない……だから、もう一度付き合ってくれYo……!」 言われたかった言葉。 頷きたい。 でも、まだ駄目。 私の気持ちをちゃんと伝えてから頷くの。 「…私、気付いたの。私って思った以上に心狭いんだなって」 「Ha?」 「大河は付き合う前から何にも変わってない。初めの頃は大丈夫だったの。 だって、好きかどうか分からずに付き合い始めたんだもん。…でもね、付き合っていく内に どんどん好きになっていった。目を逸らせなくなって、私じゃない女の子と話すだけで嫉妬して」 「…」 「……距離を置けばそんなこともなくなると思ってた。でも違った。距離を置けば置くほど、好きっていう気持ちが溢れ出して来たの。 好きなの……嫌だけど、きっと私の世界は大河中心に回ってる」 流すつもりはなかったのに、スイッチを押したように涙は流れ始めた。 私は顔を覆う。 そんな私に大河は一歩二歩と近付いて、頭を撫でるように髪を梳いた。 少し驚いて、私は顔を覆った手を外して大河を見る。 「俺は嫌じゃないZe。中心に回ってる世界」 「…どうせ回ってないんでしょ」 「酷いNa…」 大河は目尻の涙をそっと拭って、苦笑した。 体と違って、ごつごつした、男の子の手。 「もうお前を不安にさせるようなことはしない」 大河は真剣に私を見つめると、優しくふわりと私を包み込んだ。 「信じて良いの?」 「信じろYo!を幸せに出来るのは俺しかいないんだZe☆」 「キザ…」 「悪かったNa!」 「……分かった。信じてあげる」 嬉しくて浮かんだ笑み。 大河には見えてないかもしれない。 それでも良い。 嬉しいって、態度で示したから。 大河の腰に手を回して。 私も大河を抱きしめた。 ―― 後日談 ―― その日の部活で、虎鉄は猪里に手を合わして頭を下げていた。 「猪里!疑ってごめんNa!」 「別に気にしてなか。元に戻って、良かったな」 「猪里………お前が友達で良かったZe!」 「うわぁ〜っ!!抱きつくのはちゃんだけにしろ!!」 感激のあまり抱きついた虎鉄に、猪里はもっともな一言を投げつけた。 そしてこれまたその日の部活。 この頃元気がなかった虎鉄に活を入れようとした猿野は、後ろからそろ〜りそろりと 虎鉄の後ろに近付いてき…… 「わぁっ!!!」 「Waっ!なんだYo!!」 耳元で大声を発した…ら、勢い良く虎鉄に頭を殴られてしまった。 「何だ…元気じゃないっすか」 「Ha〜N?」 「いっや〜、この頃キザトラ先輩元気ないから活を入れようと思いまして。 まっ、凪さんに近付かなくなったことは嬉しいんですけど」 その言葉を聞いて、虎鉄は一瞬、とほんの短い間だけ別れた時のことを 思い出し、悲しげな表情をした。 だが、と寄りを戻した日のの言葉、行動を思い出し、愛しげに空を見上げた。 「凪はお前にやるYo」 「はぁ…?」 「俺は俺のマイハニー一筋だからNA☆」 +++++++++++++++ とにかく、連載が多すぎる!ということで、終わらせられるものから終わらせちゃおう☆ と思い、終わらせました。 いえ、短期連載だったのでこのくらいの長さの予定だったのです。 ただ「凪はお前にやるYo」という言葉が書きたかっただけなのに 良くこれだけ書いたな…って感じです。 当初は「短編でしょ?」と思ってました(汗) 虎鉄先輩の口調…真面目な場面では普通にしようか迷いましたが 口調が普通になったら虎鉄先輩ではない!!と思って何時も通りに。 難しいかったです(涙) ミスフルも色々と書きたいんですけど、今は連載に力をいれようと思います…… ここまで読んでくださって、本当にありがとうでしたv