「夢なら………何か良いことが起これば良いのに」
そう、思って言葉を発したときだった。

「!」

目の前に映ったのは

「エド………」

蜃気楼?
そんなんじゃない……そんなんじゃないで欲しい!

私は走った。

「エド!」

涙が溢れてくる。

「エド、エド、エドぉ―――っ!!」

エドは私に気付いて、驚いたように

「!」

私の名前を発した。

「エド!」

私はエドに抱きついて、泣いた。
声を上げて泣いて、言いたかったことを言いながら泣いた。


「何で急にいなくなっちゃったのよ!私……寂しかったんだからね!」
「……ごめん」

エドは左手を私の腰に回し、右手で私の頭を撫でた。


「今どこにいるの!?天国とか言ったら許さないんだから!」
許さないって何するんだよ、とエドは苦笑した。


「どこ……とは詳しく説明するのが難しいんだ。でもこれだけは言える。
俺が今いる所は、お前が住んでいる世界じゃない世界だ」
「だったら、私もそこに行く!行き方を教えて!」

私の言葉に、エドは切ない顔をして首を横に振った。
「それは出来ない。行ける保証もないしな」
「それでも私は行きたいの……エドに会いたいの!」
「………俺だって会いたいさ。だから俺は今、お前のいる世界に戻る方法を探している。
俺が会いに行くから、それまで待っててくれないか」
涙で、エドの顔が霞んでいく。
「な」
私は涙を拭いて頷いた。
「分かった」
エドは安堵の微笑を浮かべた。

「早く来てね」
「頑張るさ」
その言葉に自信が満ち溢れていなかったことから、帰ってくるのは容易なことではないのだろうと、私は悟った。
でもエドは会いに来ると行ってくれた。
だから私は、待つだけ。




「……大好き」
「俺も、愛してるよ、」
「そっちで別の子好きになったら承知しないんだから」
「それは俺のセリフだ!」



睨み合って……………………突然糸が切れたかのように、私達は笑い出した。






「絶対しないさ、そんなこと」
「私だって」
「………」
「んっ…」
強く強く、呼吸が出来ないほどまで強いキス。



唇を離すと、私達は抱き合った。



「………このまま、冷めなければ良いのに、夢」
「だな」




その直後、夢は覚めてしまった。





目が覚めると、もう朝だった。
時計を見ると、九時を回っている。
エドがいなくなってから、これほど眠れたことは一度もなかった。

「………エドっ」

私は泣いた。
彼の温もりをこの身体に感じながら。
膝を抱えて、泣きたいだけ。
でも、前の涙とは違う。
絶望だけではない。
希望だって、あることを知った。






私は久しぶりに、この部屋から出た。
お風呂やトイレに行くための目的ではなく、この部屋を出た。





階段を降りる音が響く。
静かな朝だ。
パンの匂いがする。
良かった、朝食はまだ終わってないみたい。


部屋をそーっと覗くと、ちょうど朝食中だった。
会話は一つもない。

その時。
私に気付いた彼女が、椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、私の元へ駆けて来て、
私をぎゅぅっと抱きしめた。

「………」
「……ごめんなさい。今まで迷惑かけちゃって」
「そうよ。これからいっぱい働いてもらうんだから、覚悟してなさい」
「うん」
彼女の瞳には、真珠のような涙が溜まっていた。


「今ちょうど食べ出したところなの。食べましょ」
「うん」
手を引かれ、テーブルに着く前に、目が合った。
「おはよう、」
屈託のない笑顔。
エドが禁忌を犯してまで甦らせた者。
「アル!」
私はアルに抱きついた。

今まで、酷いことばかり言っていたから。


何でアルなの?何でエドじゃなくてアルなのよっ!!

エドを返して!アルなんて要らない!私にはエドがいればいいの!


色々言ってきた。
その度、アルに嫌な思いをさせてきた。



「?」
「エドは、生きてる……」
「えっ!?」
涙で、アルの服が湿っていくのが分かった。
「会ったの。夢の中で……でも、あれは夢じゃない。だって…」
私はアルから離れた。
「だって、エドのぬくもり、伝わってきたもの。暖かかった……エドは生きてるの。
きっと、会いに来てくれる。約束したの」
「……そっか」
アルは微笑んだ。
「ごめんね、今まで酷いこと言って」
「ううん。が元気になってくれて、僕嬉しいよ」


分かった。
エドはアルを甦らせた。
アルが大切だったから。
それもある。
でも、一番はきっと、この笑顔を絶やしたくなかったんだ。
まるで陽だまりのような、純粋な笑顔。


「じゃ、食べよっか」
「うん」








エド。私は大丈夫よ。
そっちはどう?
私は笑ってるよ。
ちゃんと眠れているし、ちゃんと食べてる。
そっちはどう?
眉間に皺ばっかり寄せてない?




ねぇ。
今、笑ってますか?
些細なことでも、笑えていますか?













 


 ++++++++++

終わりです。
いかがでしたか?
お気に召していただけたでしょうか?
年の締めくくりがエド。
では、年の始まりは……?
誰でしょうね(苦笑)
書き溜めがあまりないもので(汗)

読んでくださってありがとうございました!!!
では、良いお年を。



夢の中だけでも、良いことが起これば良いなと思う今日この頃。
(でも、そうすると現実に戻って落胆するのよね。あぁ、夢の中ではあんなにたくさんの欲しいものが手に入ったのに!/笑)


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