「しょーがない…うちの整備士の所に行ってくるか」
息を吐き、肩を抑えながら少年は「やれやれ」といったように言葉を発した。
Not Father Baby
少年の名はエドワード・エルリック。
背は小さいが、年齢今年で15歳。
そんな彼も、軍の狗・・・国家錬金術師だった。
エドワードは〔傷の男〕との戦いで右腕の機械鎧を破壊され、弟のアルフォンスも右肩から破壊されてしまっていた。
自分の腕が直らなければ、弟も直すことが出来ない。
だからエドワードは整備士に直してもらうことを決めたのだった。
だが、そこには一つ問題があった。
エドワードは傷の男に〔命〕を狙われた。
それは今ももちろんそう。
今のエドワード達に戦力は皆無と言って良い。
そこで、護衛をどうするか・・・次が皆の答えだ。
「俺ぁ仕事が山積みだからすぐに中央に帰らなきゃならん」
「私が東方司令部を離れる訳にはいかないだろう」
「大佐のお守りが大変なのよ」
「あんなやばいのから守りきれる自信無いし」
「以下同文」
全員却下。
エドワードは「どうすっかな・・・」と頭を掻き・・・「ん?」と周りを見渡した。
そこに〔見つけようとした人〕は居らず、疑問を口にする。
「そういえば、ここずっと見てないんだけど何処にいんの?護衛に頼みたいんだけど」
無神経なわけではない。
知らなかったのだからしょうがない。
だが、その言葉によって一瞬にしてその場の空気は暗く、重くなった。
「えっ、何、俺なんか変なこと言った?」
「良く分かんないけど地雷みたいなの踏んじゃったみたいだよ、兄さん」
こそこそ話をするエルリック兄弟。
罰の悪そうに、他はロイをちらちら見ている。
その視線に気付かないはずがなく、ロイは大きく息を吐いた。
胸に溜まり始めた〔悲しみ〕を吐き出すために。
「辞めたよ」
声色は何時もと同じ。
だが、今までのことを知っている者からすれば
元気がないようにも聞こえる。
「辞めた?軍を?」
「あぁ、そうだ」
「まさか・・・。だって、凄い決心で村出たんだぜ!?」
「でもそれが事実なんだよ、鋼の」
エドはその漆黒の瞳から〔嘘〕を見つけることが出来ず、反論をやめた。
嘘を見つけることが出来なかった瞳に見つけたのは、一カケラの悲愴。
「・・・大佐、の恋人だろ?何も聞いてなかったのかよ」
反論をやめたは良いが、納得がいかない。
問うたその言葉は、ある意味〔地雷〕。
「別れたんだ・・・が軍を辞める1日前に」
「何だよそれ・・・それってが軍やめた原因が大佐だって言ってるようなもんじゃねーか!」
今にも胸倉を掴んで殴りそうだ。
瞳はしっかりとロイを睨みつけている。
「そうかもしれん・・・だが、何も浮かんでこないんだ」
「喧嘩は」
「ほんの些細な口喧嘩だけだ」
「酷いことは」
「言うはずがないだろう!」
机をバン!と強く叩いて立ち上がり、我に戻ったロイは「すまない」と申し訳なさそうに
着席した。
自分に嫌悪する。
感情を表にだしてしまったことに。
静まる部屋、重い空気。
沈黙を切るためでなく、ただロイは、ポツリと言葉を漏らした。
「・・・私はただ、に戻ってきて欲しいんだ」
その言葉は皆の胸へと消えていく。
もう何も言わない・・・言えない。
ロイの胸にポッカリ開いた大きな穴を埋められるのは、だけ。
皆は物音を立てるのも恐く、この部屋を後にした。
一人残されるロイ。
皆が出て行ったことに今の今まで気付かず、気付くとドアの方をじっと見つめ
軽く握った拳で顔を覆い、項垂れた。
一人になると襲ってくる、皆といるときとは違う寂しさ、孤独感。
まだ慣れない。
がいなくなった時ほどではないが、寂しさは消えない。
心を通る、隙間風。
「何処にいるんだ・・・」
行方も知らぬ彼女。
「別れた理由はどうでも良いから、会いたい・・・」
願いはただ一つ。
彼女に会いたい。
「・・・愛しているんだ」
この気持ちは永遠。
一生消えない想い。
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次はまた主人公の方へ。
ロイさんとは少しの間さよならです。
そんなに長い連載にするつもりはないので、6.7.8話くらいでどうにかしたいです。
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