そして、エド達が帰る日になった。

あれからは、エドがとやかく言うこともなく、穏やかな日々は過ぎていった。



「お体には十分気をつけるのだぞ」
「はい」
「バランスのとれた食事を取り、適度な運動もするのが良いそうだ」
「はい、分かりました」
「元気な子がお生まれれになるよう、願っております」
「ありがとうございます」

何故こんなことも知っているのかというくらい、妊娠に関する知識をしゃべりつづけたアームストロングは、やっとその口を閉じた。

「じゃあな、」
「うん、気をつけて」
「もね」
「分かってるわよ」

手を振って、背を向けた彼らを見送る。
けれど、ハッと思って

「あっ!ちょっと・・・・・・」
「ん?」

止めたのは良いが言い難くて
口を開くのを拒んでいたら

「分かってる。大丈夫だからさ」

エドの言葉に、は恥ずかしげに笑った。
そして手を振って。
彼らを、見えなくなるまで見送った。


手を下ろしたとき
その表情がとても悲しげだったことは
誰も知らない。
だって、そこには彼女しかいなかったから。










        Not Father BABY












駅に着いて、真っ先に向かったのは
ホームではなく、電話。

受話器を取り、番号をかけるエドの横からアルが電話を覗き込む。

「どこへ電話するの、兄さん?」
「大佐んとこ」
「えっ!もしかして・・・・・・」
「そのもしかしてだよ」

向こう側で相手が電話を取った。
きっと軍の受付の女性だろう。
自分の名前と繋いで欲しい人の名前を告げ、そちらに繋がるのを待つ。

「・・・・・・良いの?」
「だったらアルは、があのまんまで良いって言うのかよ」
「そんなんじゃないよ。僕だって、ちゃんと大佐に言って欲しいと思うよ。
でも、約束が・・・・・・」
「そんなもん知るか!が本当に幸せになるなら、約束くらい幾らでも破るさ」

言い切った時
繋がった。
ロイに。
向こう側で声がする。

『一体どうしたんだね、鋼の』

あの日に会った時よりも、声色は明るくなっている。
けれど本調子ではなくて
ただ、強がっているだけだろう。

エドは拳をグッと握り、ただ一言

「リゼンブールにがいる」
『えっ!?ちょっ、鋼の。それは本当か!?』

それだけ告げて。
ロイの酷く慌てた言葉に

「それは自分の目で見て確かめろ。じゃあな」
『おい、ちょっと待て、はがッ!』

冷たくも取れる言葉を返して
ロイの言いたいことも何もかも無視し
受話器を置いた。



「俺がやってやるのはここまでだ」
「ここまでやれば十分なんじゃないの?大好きなを嫌いな大佐に奪われるのは嫌だけど、のためだから?」
「うるせぇー!」

アルの的確な発言に、恥ずかしさを隠すように怒った振りして叫んで。

「大切な奴の笑顔は、守りたいんだよ。・・・・・・もうこれ以上、自分の無力さを知るのはごめんだ」

切なる願いを虚空へと吐き出して



そして彼らはリゼンブールを後にした。










   * * * * * * * * * * * * * * *










「どうなさいました、大佐?」

一方的に電話を切られ、それ以上の情報はもう入ってこない。
けれど、今一番欲しい情報が手に入り
喜びやら疑問やら不安やら色々な感情が混ざりあい、しばし受話器を持ったまま立ち尽くしていた。
そしたらホークアイに声をかけられ、やっと意識を取り戻し、受話器を置いて。
そして、決心した。


「ちょっと出てくる」
「どこへ行くのですか?」
「のところだ」
「えっ、見つかったんですか!?」
「あぁ」

皆からの問いに答えながら、身支度を整える。
最後に上着を羽織って、ドアノブに手をかけて。
開く前に一度、振り返った。

「仕事は、帰って来たら絶対にする!だから、をもう一度この手に掴むまで任せた」

どんな時よりも、何よりも
真剣な眼差しをして、言葉を発して。

刹那、沈黙。

それを、破って

「絶対に、連れて帰ってきて下さいね」
「あぁ」

ホークアイ達は、ロイを見送った。
絶対に連れて返ってくる、大丈夫だ
という、願いにも似た励ましを込めて。






































   +++++++++++++++

もうすぐで終わりです。
あと1.2話・・・・・・・・・
やっとですね。
お付き合い宜しくお願いします!



  



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