A cute girl
has a mystery?
「初日、頑張って来いよ」
「は〜い。行って来ま〜す」
一陣の風が通り過ぎた。
彼の、あの時よりもだいぶ伸びた髪を遊ぶように揺らす。
彼は髪を耳にかけるように抑えながら、校門へと消えていく少女の後ろ姿を見つめていた。
01
チャイムと共に教室の扉が開き、担任と少女が姿を現した。
扉が開くと共に一瞬静まりかえった教室が、またざわつき始める。
前々から噂で聞いていて話題になっていたものの、いざ来てみるとやはり落ち着きが
なくなってしまうのだ。
何が来たかというと・・・・・・・・・
「静かに」
担任の一声で、場は少々落ち着いたがこそこそと話している者も少なくはない。
「えー、知っているかとは思うが転校生を紹介する」
そう、転校生が来たのだ。
それがその「見知らぬ少女」の正体だった。
担任は黒板に「葛 憂姫」と書き、また生徒たちの方を向いた。
「葛 憂姫」とは少女の名前のようだ。
そして少女に自己紹介をするよう言う。
少女はコクンと頷き、一歩前に出た。
少女の髪は一般的な日本人の髪よりも色素が薄く、栗色で肩より少し下の長さ。
眼球は茶が強いようだ。
服装は切りっぱのミニスカートに派手なロゴのピンクTシャツ、その上に薄めの生地の
白いパーカーを羽織っている。
服装からは元気で明るいイメージがあたえられるが、反対に見た目からはおしとやかで
礼儀正しいイメージが与えられた。
「アメリカのワシントンから来ました、葛 憂姫と言います。日本には六歳頃まで
いましたが、あまり覚えていないので色々と教えて下さい。宜しくお願いします」
ぴょこりと頭を下げて、にこりと微笑む。
これでクラスの大半の生徒の心を掴んだだろう。
担任は少女改め憂姫の自己紹介が終わるとクラスを見回し、右端で廊下側の空いている席を指差し
「あそこの席に座ってくれ」と憂姫に言った。そしてその前の席の女生徒の名前を呼び手を上げさせる。
「はい」と憂姫は頷き、ゆっくりと一歩一歩席に向けて歩き始めた。
途中で周りの生徒に「よろしくね」とにこりと微笑みながら。
「可愛い子だね」
少年は呟いた。
「そうね。優しそうな子」
少女はそれに同意し、自分も呟く。
「帰国子女ってカッコいいよな〜。やっぱ英語ペラペラなんかな?」
少女と机一個分ほどの幅を隔てて隣の少年は、斜め後ろの席に着こうとしている憂姫を
見ながら言葉を発す。
「そうだと思うよ」
少女は答えた。
そして、憂姫は席に着いた。
鞄を机に置いて教科書などを机にしまい、黒板の方を向く。
その時にはHR終了のチャイムは鳴り終わっており、生徒たちに囲まれ質問攻めにされることとなった。
「・・・あのさ、英語ペラペラ?」
左斜め前の少年に問われ、憂姫は一瞬キョトンとしたが次にはにこりと笑みを浮かべ
「五年もアメリカにいたからね。日常会話は大丈夫よ」
「すっげーな」
「凄くないわよ。英語話せないとコミュニケーションがとれないから」
照れながら謙虚に顔の前で両手を振る。
「えっと・・・あなたの名前は?」
「〇〇君って英語に興味があるの?」と聞こうとしたが名前を知らないことに気づき、
憂姫は疑問符をあげた。
「俺?本宮大輔!よろしくな」
「大輔君ね。よろしく」
少年改め大輔が嬉しそうに元気に名前を言ったので、憂姫も満面の笑みで言葉を返した。
憂姫と大輔の会話から少し間が空き、もう一人の少年が憂姫に問う。
「あのさ・・・聞かれたくなかったらごめんね。君はハーフとかクォーター?」
その質問に憂姫は首を振って「地毛なの」と髪を触り
「あなたは?」
問い返す。
少年は少し戸惑いつつも
「僕はクォーターなんだ」
答えた。
「そう。綺麗な髪の色ね。あなたは日本名の中に外国の名前が入っていたりするの?」
少年は誉められたことに少々照れながらも、問いに対して首を横に振った。
「ううん。僕の名前は高石タケルっていうんだ。外国名なんて入ってないでしょ?
タケルはカタカナで書くんだけどね」
「高石・・・タケル・・・・・・?」
その名前を聞き、憂姫は記憶の糸を手繰り始めた。
憂姫は小さく呟いたつもりだったが、その疑問符はしっかりともう一人の少年改めタケルの耳へと届いていた。
「うん。どこかで会ったことある?」
その声で憂姫は記憶の糸から手を離し、現実へと戻ってタケルと向き合い慌てて首を振った。
「ううん。勘違いだったみたい。ごめんね」
「大丈夫だよ。よろしくね、憂姫ちゃん」
「こちらこそよろしくね、タケル君」
憂姫とタケルの話が終わり「今度こそ私(俺)よ(だ)!」と口を開こうとした生徒たち
だったが、一時間目の始まりを告げるチャイムにより、口は閉じられ、それぞれ自分の
席へと戻っていった。
席に着き、少女は
「私も話したかったな」
隣のタケルにそう言った。
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