A  cute  girl 
                has a mystery?

        
04

二回のバイブ音の後、すぐに憂姫は通話ボタンを押した。
そして彼らを見ながら嬉しそうに「もしもし」と言葉を発する。
電話向こうの相手は疑問符をあげる。
「今?お台場小学校のパソコン室だよ」
その返答に対してまた疑問符があげられたので
「うん」
と頷き
「今の選ばれし子供も一緒にいるよ」
微笑みつつ発されたその言葉に、彼らは耳を疑った。
〈選ばれし子供〉
それは普通の人には知られてはいけない、彼らの秘密だった。
「話したいことがあるからすぐ来てくれる?めんどくさいから一緒に話しちゃいたいから」
視線は彼ら・・・選ばれし子供の方だ。
彼らは憂姫に視線に己の視線を絡めとられ、動かせない状態でいた。
「うん・・・じゃあ急いでね・・・ばいばい」

電話を切り、電源を切り、憂姫は彼らにもう一度微笑んだ。
それと共に、彼らの視線と憂姫の視線が離れる。
憂姫は椅子に座り、彼らが目で訴えていることを読み取ろうともせず、鞄の中から本を取り出して読み始めた。
英語で書いてあるから、アメリカで購入したものだろう。
その憂姫にヒカリは問うた。
「誰が来るの?」
「んー・・・従兄妹」
「いとこ?」
その疑問に対しての返答はなかった。


「誰だ?」
大輔が疑問符をあげる。
「私は知らないから違うわ。タケル君は?」
「僕も知らないよ。・・・っていうことは空さんか丈さんか光子郎さんだね」
彼らは頭の中で思考回路を張り巡らせながら、謎の転校生〈葛 憂姫〉をじっと見つめていた。



それから数分経ち・・・・・・
「来る」
いきなり本から顔をあげ、憂姫は小さな声を発した。
本を閉じて立ち上がり、ドアに向かって歩き出したとき、ガラッとドアが開き
「よぉ」
「こんにちは」
「みんな揃ってるわね」
「丈、どこに従兄妹がいるんだよ」
旧選ばれし子供登場。
「ん?」
ヤマトの言葉に曖昧な疑問符をあげ、丈がドアを閉めた瞬間。
「丈兄ぃ〜〜〜〜〜〜〜」
「わぁっ!!」
憂姫が丈に抱きついた・・・いや、飛びついた。
背の差があるので憂姫の頭がちょうど丈の腹の辺にクリーンヒットし、「ぐえっ」と声をあげた丈はとても痛そうだ。
憂姫はそんなことに気づく気配もない。嬉しそうに楽しそうに丈にしがみ付いている。
その光景を他の皆はぽかーん・・・・とした表情で見つめている。
丈は「まいったなぁ」というように頭を掻き、みんなの方を見て少し照れながら
「つまりこの子が僕の従兄妹なんだ。ほら憂姫、ちょっと離れて」
「やーぁ」
「やじゃないよ。ほら」
憂姫の肩を掴んで無理矢理ひっぺがし、皆のほうへ向けた。
初めは尖がっていた唇も、徐々に笑みへと変わっていき
「今の選ばれし子供の皆さんには改めまして。昔の選ばれし子供の皆さんには初めまして。
葛 憂姫です。ちなみに、丈兄の従兄妹で選ばれし子供です」
そう言いにこりと微笑む。
数秒の沈黙が「・・・」と流れた。


そして憂姫以外が一斉に、一番最後に取って付けられたような言葉に
「え〜〜〜〜〜〜っ???!!!」
驚愕した。

今の選ばれし子供は
「えっ?それ本当かよ?!」
「ってことは六人目の仲間!」
と騒いでいる者と
「だから僕達が選ばれし子供だっていうことを知っていたんですね」
「初め聞いたときはその従兄妹から聞いて知っているんだと思ったけどね」
「丈先輩の従兄妹だったんだね。あんまり似てないな・・・」
と理解したことを言葉に出している者に分けられる。

旧選ばれし子供は皆、「へぇ〜この子が・・・」と〈丈の従兄妹〉という意味と〈新しい選ばれし子供〉
という二つの意味で憂姫を観察している・・・中に少々落ち込んでいる者が一名。
「日本に来て何日か経つのに・・・僕、初めて聞いたよ」
「じょ、丈先輩?」
「だって丈兄お勉強が忙しいから邪魔しちゃいけないかな?って思ったんだもん」
俯く丈を上目遣いで見つめる。
「だからって話してくれるくらい良いじゃないか・・・」
「話すと丈兄の性格からして勉強そっちのけで色々と聞いてくるでしょ?」
「どうせ今日言ったんだから同じじゃないか」
いじいじいじいじ、どよ〜ん・・・とした空気を周りに出しながら憂姫と話す。
「あっ、そっか」
と憂姫は手を叩き
「まぁ、過ぎちゃったことだし。ごめんね丈兄、そこまで頭回らなくて・・・丈兄に勉強頑張ってほしくて・・・
その気持ちが一番だったから・・・・・・」
申し訳なさ気に、そして可愛く軽く握られた手を口元に持っていき言葉を発す。
その言葉を聞き、丈は機嫌が直ったように憂姫の方を向く。

「日本に来た理由は選ばれし子供がお台場小にいるってことを知ったからか?」
繋がりがあるといえばあるが、ないといえばない疑問を口にした。
後ろで太一とヤマトが「妹馬鹿だ」「シスコンだ」とひそひそ言い、それに空と光子郎が微苦笑していた。

憂姫は「う〜ん・・・」としばし考え
「まぁ、それもあるかな」
「他にもあるの?」
と割って入ってきたのは京だ。
「あとはまだヒミツだよ。もちろん丈兄にも」
唇に立てた人差し指を持っていく。
それにまた
「僕にまで隠し事をするようになったなんで・・・そうだよな。もう五年生だもんな。
昔は何でも教えてくれたのに・・・」
落ち込み
「丈先輩、しっかりして下さい!」
空が丈の名前を叫んだ。
「そのヒミツはいつ話してくれるの?」
タケルの問いに憂姫は複雑な表情をし
「デジモンカイザーが捕まるか何かしたら話す、と思うよ。もちろん丈兄が一番最初!」
その言葉で、丈の表情が一気に輝き、俯いていた顔をパッとあげた。
軽く後ろから太一とヤマトが丈の頭を叩く。


「じゃあ帰ろ、丈兄」
荷物を持ち、丈の手を掴む。
「えっ。デジタルワールドには行かないの?」
「今はね」
「そっか・・・」と京はしゅんとした。
「聞いていい?」
「何?タケル君」
「君のパートナーデジモンは?」
「・・・後でね」
少し悲しげな笑みを浮かべ「じゃあ、またね」と丈の手をひき、憂姫は帰っていった。


後に残された者達が皆、思っていたことをヒカリが発す。
「謎が多いわね・・・憂姫ちゃんは」
選ばれし子供は頷いた。

開かれたドア。
「そういえば、憂姫さんはどうやってドアを開けたんでしょうね」
伊織の疑問に、皆「さぁ・・・」と首を傾げる。


彼らは知らない。
謎多き少女の謎を解き明かすのはまだまだ時間がかかりそうだ。
それをどれくらい解き明かせるかは、誰にも分からない。








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