A  cute  girl 
                has a mystery?

        
06

憂姫が転校してきてから数日が経った。
もうクラスに慣れたようで、休み時間ごとに憂姫と友達のしゃべり声や笑い声が
聞こえてくる。


全ての授業が終わり、ホームルームも終わり、放課後が来た。
大輔達は今日こそ憂姫をデジタルワールドで連れて行こうと声をかけた。
「憂姫ちゃ〜ん」
教室を出て、少し前を一人で歩く憂姫に声を掛けたのは大輔。
憂姫はゆっくり振り向き、大輔を視界に入れると少しずつ微笑んだ。
「何?大輔君」
「今日も行かないん?」
「うん、ごめんね。今日は大事な用があるの」
「そっか・・・いつ行けるん?」
「そうね・・・・・気が向いたら、かな」
人差し指を唇の当てて考えて、憂姫は言葉を発すると同時にくすりと笑った。
「えっ、気が向いたらって?!」
「じゃあね、大輔君。また明日」
まだ何か言いたそうな大輔を無視し、憂姫は手を振って帰ってしまった。

「待って!」と憂姫を掴もうと手を差し出した状態のまま、しばし大輔は動かなかった・・・
動けなかった。
後ろから
「あ〜あ。今日も帰っちゃったね」
「手強いわね、憂姫ちゃん」
タケルとヒカリは大輔を見て微苦笑し、憂姫が帰っていった方を見て、少し悲しそうに
言葉を発した。



憂姫は学校を出たと同時に携帯電話の電源を入れ、丈にメールを打ち始めた。
『 今から賢ちゃんちに行ってきます。
  ※もし賢ちゃんがそうだったとしても、誰にも言っちゃダメだよ! 』



そして憂姫は、あるマンションの一室のチャイムを押した。
「は〜い」
という声が微かに聞こえ、玄関のドアが開いた。

「こんにちは、おば様」
女性を見て、憂姫は懐かしむように微笑んだ。
「・・・・・憂姫ちゃん?」
憂姫の顔をしばし見、女性は疑問符をあげる。
「えぇ。お久しぶりです」
「久しぶりね。いつ帰ってきたの?」
女性はやんわりと微笑んだ。
「つい最近です」
「そう。さ、立ち話もなんだし上がって。お茶を淹れるから」
「あっ、今日はゆっくりしていくつもりはないんです」
いそいそと憂姫を家に入らせ、お茶を用意しに台所に向かおうとした女性を
慌てて憂姫は止める。
「そうなの?」
残念そうに女性は言葉を発した。
「すいません。今日は賢ちゃんに用があって来たんです」
その言葉に女性は困ったような、悲しげな顔をする。
「あっ・・・あぁ、賢ちゃん?ちょっと待っててね」

不安げに、女性は短い廊下を歩き出す。
憂姫はそれに付いて行き、一番奥の扉の前で女性は足を止めた。


小さく息を吸い、女性は遠慮気味にノックをする。
「賢ちゃん、いる?憂姫ちゃんが来てくれたわよ」
返事はない。
その前にこの部屋に人間はいるのだろうか。


憂姫はどうしてもこの部屋に入りたくて・・・入らなければならなくて、入る方法を考え付きにやりと笑った。
「おば様。やっぱり私、少しお邪魔させていただきます。賢ちゃんの方は私に任せて
お茶の用意をして下さい。賢ちゃん、中にいるんですよね?」
「え、えぇ・・・たぶん。でも賢ちゃん、お勉強が忙しいからそんなに長くは話せないと・・・」
「大丈夫ですよ」
憂姫は明るく微笑んだ。
「そう?じゃあ用意してくるわね」
女性はその笑顔に全てを託し、お茶の用意をしに台所へと行った。
その笑顔の裏で憂姫が何を考えているか、気づきもせずに。



女性がいなくなると、憂姫は小さな合皮の肩掛けバッグからあの日パソコン室を開けた、
針金のようなものを取り出した。
「これで開くかな・・・・・」
数十本もある針金のようなものの中から一本を選び、それを鍵穴に差し込み、ガチャガチャやる。
数秒で、鍵はカチャリという音を立て、憂姫を受け入れた。
「楽勝〜」
小さくガッツポーズをして、憂姫は微笑んだ。


しかし直ぐに顔を引き締める。
息を吸って・・・吐いて。
速く鼓動を打つ心臓に手をあてる。
目を瞑って、もう一度深呼吸。

息を吐き終えたと同時に目を見開き、憂姫は意を決して扉を開いた。


「賢ちゃん?」
そこはまだ外は明るいというのにカーテンが締め切られ、明かりはたった一つ〈パソコン〉からのとても薄いものだけ。
〈少年〉はパソコンに向いていた体を椅子ごと憂姫の方を向けた。
「返事もなしに勝手に人の部屋に入ってくるのは犯罪だよ。鍵閉めていたのに、どうやって入ってきたの?」
記憶の中の〈少年〉とは変わりに変わってしまった〈少年〉を見て、憂姫は思わず息を飲む。
静かにドアを閉めて、鍵も閉めた。

「早く出て行ってくれないか。僕は暇じゃないんだ」
〈少年〉から目が逸らせなくなる。
口の中が妙に乾いた。
これは緊張か、それとも恐怖か。
そんなのどっちだって良い。

憂姫はゆっくりと口を開いた。
「・・・・・・あなたはデジモンカイザー?」
その問いに〈少年〉は眉一つ動かさず返答する。
「何だ、それは。知らないな」
「そう・・・」
「それだけ?だったら早く帰ってくれないか」
自分を〈邪魔者〉としか見なさい〈少年〉の態度に憂姫は泣きそうになる。
もし〈少年〉がデジモンカイザーで、性格がとても変わっていても、立ち向かうことが出来ると思っていた。
でも、いざ本番となると、考えていた言葉・行動は出なくなってしまうもの。


「・・・もう一つ。あなたは、賢ちゃんなの?あの一乗寺賢なの?」
「はっ、何馬鹿なことを言っているんだい?僕が一乗寺賢じゃなかったら、一体この僕は
何者なんだ」
〈少年〉は鼻で笑い捨てた。
憂姫の中の、緊張だか恐怖だか分からない感情がぷっつり切れる。
それを機に言葉は明確になり、手や足の振るえも止まる。
「変わったね・・・・・とても冷たくなった」
「君は変わってないね。単純で騙されやすい」
「へぇ〜。私ってそういう性格だったんだ」
さっきの憂姫とは別人のように、今はとても強気だ。
「・・・そんな性格だと将来不幸になるよ。お人好しのまま、人に騙され死んでいくんだ」
「人を信じて騙されて死ねるなら別に良いわ。罪を犯して死ぬくらいならね。今のあなたは後者よ」
見下すように発された言葉に〈少年〉は眉間に皺を寄せる。
「言いたいことはそれだけか」
「そうね、一応」
「じゃあ早く帰ってくれないか。僕には色々とやることがあってね」
〈少年〉は憂姫と向き合うのを止め、またパソコンと向き合った。
後ろで憂姫は問う。
もちろん、強気のまま。
「イービルリングの開発?それともデジモン達を操る道具なのかしら?」
憂姫はこの部屋に入り、〈少年〉を見たときから確信していた。
〈少年〉はやはり〈デジモンカイザー〉だと。

「なんだ」
「それは」と〈少年〉が言葉を発す前に
「もう一度聞くけど・・・あなたはデジモンカイザー?」
憂姫は疑問符をあげた。

少年はまた憂姫の方を見、フッと笑う。
「さっきの言葉は撤回だ。君は騙されなかった。そうだ、僕はデジモンカイザーだ!」
憂姫の問いを、今度は肯定する。
まるで王者になったかのような笑みに、憂姫は嫌悪する。
「何故・・・デジモン達を傷つけて楽しい?」
「傷つける?あれは罰だよ。僕に逆らう奴等へのね」
「そんなことして良いと思ってるの?!」
我慢できなくなり、憂姫は投げつけるように叫んだ。
「あぁ、思ってるよ。僕だからね。さぁ、僕の正体を教えてあげたんだから早く帰ってくれないか」
〈少年〉はパソコンに向かい、何かを打ち始める。

静かに、憂姫は〈少年〉に歩み寄った。
そしてその冷たい後ろ姿を温めるかのように、後ろから抱きしめた。
「お願い・・・昔の優しい賢ちゃんに戻って・・・・・お願いよ」
「・・・話は終わった。早く帰れ!」

その言葉に、憂姫は反抗することなく従い、それ以上何も言わずにドアの鍵を開き、
ドアノブを握った。
「次に会った時、私はあなたを殴るかもしれないわね」
言ってから、その部屋を後にした。


「あっ、憂姫ちゃん。お茶がはいったわよ」
帰ろうとする憂姫を、女性は呼び止めた。
「あっ・・・あの、やっぱり時間ないので帰ります。すいません、また来ますね」
「そう、残念ね・・・またね」
「お邪魔しました」
丁寧にお辞儀をして、憂姫はドアを閉めた。



マンションから出て直ぐに、携帯電話を取り出す。
掛ける相手はもちろん
「・・・・・・丈兄?」

歩きながら、憂姫は話す。
『おかえり。どうだった』
「ん、正解だった」
そう言葉を発す憂姫の瞳には涙が溜まっている。
「当たってたよ。凄く冷たい目をして、冷たい態度で・・・私の知ってる賢ちゃんじゃ
なかった・・・・・・丈兄〜ぃ・・・」
目をギュッと瞑ると、大粒の涙が零れ落ちた。
そこで憂姫は立ち止まり、言葉を発すのを止める。

憂姫の異変に丈は気付く。
『憂姫?今何処にいる!?』
「ん〜・・・公園?」
『公園・・・分かった!直ぐ行くからそこにいろ!』
「ん」
そこで電話は切れた。


正確に言うと、憂姫は公園の側にいたので、公園に向かい、空いていたベンチに一人
腰掛ける。

それはどこか寂しくて、何か物足りなくて。
止まりかけた涙を溢れさせた。



「賢ちゃん・・・」
涙で霞む空を見上げて呟くのは、大事な幼馴染の名前。



「憂姫!」
電話から数分経ち、息を切らしながら丈は憂姫の元へとやってきた。
「大丈夫か?!泣いているようだったけど・・・」
丈を見て、憂姫は顔をぐちゃぐちゃにし、丈の胸へと抱きついた。
「丈兄ぃ〜」
涙を隠すように。

丈は優しく憂姫の頭を撫で
「大丈夫。ちゃんと元に戻るさ」
「本当?」
「あぁ。憂姫達、今の選ばれし子供達が力を合わせればね」
笑った丈につられ、憂姫も微笑む。

涙を拭いて、もう一度笑った。
「帰ろうか」
「うん」
差し出された手を、憂姫は握る。
その手は暖かくて、さっきの〈少年〉とは大違いだった。


日が暮れ、辺りはほんのり暗くなってきている。
二つの影が、仲良く歩き出した。














 ++++++++++

あ゛〜〜〜〜〜っ!!!!
夢になってる・・・・何か夢になってる!
なんかラブラブだよ、愛だよ!!(何がっ!)
え〜っと、なので訂正をしておきます。
これは清き従兄妹愛であり、友愛であり、恋愛要素は一っつも含まれておりません!
悪しからず・・・・・・

えと、何時も読んでくださってありがとうございます!

BACK NEXT