A cute girl
has a mystery?
「憂姫?」
家に帰ってきて直ぐ、丈は今日のことを報告するために憂姫の部屋の戸をノックした。
しかしノックは返ってこない。
靴はあった。
寝ているのだろうか、と疑問符を上げながら
「入るよ」
小さな声でそう言うと、慎重に戸を開いた。
部屋の中を見て、丈は慌てて戸を閉めた。
なぜなら、そこに憂姫の姿はなく、パソコンの電源が付いていて、それははっきりと
〔デジタルゲート〕を映していたから。
「どういうことだ……!?」
丈はその場に座り込み、頭を整理しながら憂姫を待つことにした。
08
憂姫は歩いていた。
デジタルワールドを。
一人ではなく、一頭の〔デジモン〕と共に。
「まだいて大丈夫なのか」
問われ、憂姫は携帯電話を取り出し今の時間を確認した。
辺りは薄暗くなってきていて、夕陽も半分ほどしか見えない。
「もうちょっといたいけど……もうすぐ夕飯ね」
名残惜しそうに微笑し、遠くにそびえ立つダークタワーを見つめた。
切ない目。
哀しい目。
デジモンカイザー…一乗寺賢を想いながら。
その瞳の先を〔デジモン〕も見つめ、憂姫が考えていることを理解し、一緒に胸を痛めた。
「…倒すか?」
憂姫は間を置かずに首を横に振った。
「あそこまで行くには時間かかるし、けっこう倒したからまたで良いや」
「そうか」
自分が抱きかかえて走ればそんなかかる距離でもない、と思ったが言うのはやめた。
「うん。お疲れ様。じゃあ私帰るね」
微笑んで手を振って、回れ右して歩き出す。
「あぁ。またな」
その背を見送って。
いなくなるまで見送ろうとした。
「…ごめんね」
一度向けた背を戻し、もう一度向き合う。
泣きそうな瞳が告げるものを口から紡ぎ出す。
「私の我が儘で他の選ばれし子供達とデジモン達と一緒に行動出来ないで」
「気にしてない」
「そう…でも会いたいでしょ?」
〔デジモン〕は答えず、ただ黙って憂姫を見つめた。
「もう少しだけ待って。強くなるから…皆の前で賢ちゃん……カイザーと向き合えるくらい」
俯いた表情は分からないが、握られた拳は小刻みに震えている。
「…憂姫は十分強い」
「そんなことない!」
叫んで否定して、上げた顔に涙は見えない。
夕陽はほぼ見えなくなり、辺りは暗闇に包まれようとしている。
「…ごめんなさい、怒鳴って」
「いや。私も済まなかった」
「じゃあ、私行くから」
笑顔を見せて、憂姫はリアルワールドへと戻っていった。
残していった笑顔は、必死に作った笑顔で。
それはまた、〔デジモン〕の心を痛めた。
「強さは力や心持ちとイコールになると決まっていない。優しさや人を思う気持ちが強いのも、それは強さだ」
夕陽が沈んで、月が顔を覗かせる。
交換の時間。
昼と夜の。
光と闇の。
戻ってくるや、憂姫は目の前に胡坐を掻いて自分を…パソコンを睨んでいる丈を見、
驚き焦り、一歩後ろに後ずさりした。
「丈、兄……」
声が発されたと同時に丈は立ち上がり、憂姫の前に立った。
「デジタルワールドにここからも行けるんだ」
怒られたりすると思ったがその声色はとても優しく、顔には微笑が浮かべられていて
憂姫は安心した。
「うん。D-3とパソコンがあれば」
「そうなんだ……カイザーには会えた?」
その疑問は今の憂姫にはとても重かった。
見つけてたけど見つからなかった、大事な大事な幼馴染の姿をした悪魔。
会いたいけど、会いたくない。
取り戻したいけど、今のままでは取り戻せない過去の関係。
「……会えなかった」
「そっか」
それ以上、丈は問わず言わなかった。
憂姫に、それ以上哀しい顔をしてほしくなかったから。
「丈兄、今日……ありがとう」
「どういたしまして。次からは行けそうかい?」
その問いに、憂姫は力無く小さく首を横に振った。
「まだ行けない。もうちょっと……待って。今のままじゃ、みんなの前で賢ちゃん…
カイザーに会えない。みんなはカイザーが賢ちゃんだって知らないから……あの一乗寺賢がカイザーだって言ったところで、
まだ仲間ともいえない私のことなんて信じてもらえないだろうし」
「信じてくれるよ。だってみんなはもう、憂姫のことを仲間だって思ってるよ」
その言葉に、憂姫は優しく微笑んだ。
「だったら尚更ね。出来ればその事実を知らぬままでいてほしいって思うのは無理なことなのかな。賢ちゃんは本当は優しいんだよ」
「でも今は、冷酷で嫌な奴だ」
丈は今日のことを思い出し、怒りを露わにして拳を強く握った。
「きっと理由があるはずよ。何か、とてつもない理由が………」
好きでやってることじゃない、って信じてるから。
カイザーと賢ちゃんは違う人だって思ってるから。
「……今度、一緒にデジタルワールドに行こ。パートナー紹介するから」
「一緒に行って良いのかい?」
問われ、憂姫は笑みを浮かべた。
「うん。丈兄なら」
その言葉が嬉しかった。
この頃不安だったから。
僕は憂姫のどんな存在なの?
って。
この頃の憂姫は、僕をあまり頼ってくれなくて
一人で進んで行っちゃうよね。
成長を喜ぶべきなんだろうけど、少し寂しいんだ。
昔を思い出すと。
まだ側にいて欲しいんだ。
まだ、僕の妹でいて欲しいんだ。
何時か僕のもとを去ろうとも、今だけは。
一乗寺賢に嫉妬している僕がいることに気付いても。
それが醜いことだって分かっていても。
それが僕の今の願い。
そして憂姫が早く、安堵出来る平穏が戻ってくるように。
僕は願ってるよ。
あぁ、もちろん出来る限り力は貸すから。
そんなことを思いながら、丈も一緒に微笑んだ。
+++++++++
何度も言いますが、これは従兄妹愛であり友愛です。
でも少し恋愛入っちゃうかもです(汗)
でも夢にはしません。
デジモンは夢にしません!(たぶん……)
読んでくださってありがとうでしたv
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