02 その日、ミミは給食が終わるなり光子郎の捕獲を行っていた。 「こ〜しろ〜君!気にならないの?“あの”ヤマトさんとなにやら関係の有るらしい、超美形の先輩転校生よ?気になるでしょ〜?」 光子郎の席に来るなりそう言ったミミは、彼の腕を取るなり、ぐいっと引っ張ってずかずか歩いて行く。 今日も光子郎に拒否権はないようだ。 「お、ミミちゃんに光子郎。どうしたんだ?」 先輩のクラスなのにずかずか入って行く二人の後輩に、そのクラスメート達は何も言わない。 それはこのクラスの中心人物と言っても過言ではない男女3人組と仲の良い、小学生からの顔見知りだからだ。何より、ミミの計算のなさは憎めない。 中心人物の一人、ヤマトに声をかけられたミミは、光子郎を伴ってそちらに向かう。 「噂のフランスドールはどこですか?」 ミミ、手をそろえ首を傾げてにっこり。 「えっと、転校生の先輩の事です。」 つられたのか意味がわからないためか首をかしげるヤマトと後ろの席にいる空に、光子郎が補足する。 「フランスドール・・・?」 「ミコトちゃんなら、ここにいるけど・・・・。」 ヤマトが顔をひきつらせた理由を聞く前に、空が気まずそうに自分の隣を見る。 ずーんと、落ち込みまくっている噂のフランスドール、高石ミコトがいた。 給食当番から帰ってきた太一が教室に帰ってくると、そこには奇妙な光景があった。 「どうしたんだ、これ?」 「おかえり、太一。見ての通りよ。」 次の時間の、英語の小テストの為に英語の教科書を読んでいる空とヤマト。問題はその隣だ。 「どう思う、ミミちゃん!」 「そういう時はですね、ミコト先輩。こう、首を傾げてにっこり笑って、お願い★って言えばどうにかなります!」 「なりません。」 机を叩きながら人生相談するミコトに、相談されるミミ、光子郎の突っ込みは完全無視の方向だ。 ヤマトの話のよると、昨日の放課後、あのままミコト限定で家に入れてもらえず、ヤマトは彼女を連れて買い物に行く羽目になったのだとか。 タケルはとっても怒っていたらしい。その為、タケルに怒られた、嫌われたと朝からウザイくらい落ち込みっぱなしのミコトがいた。 よくよく思い出してみた太一の記憶によると、去年のフランスでの事件の時も、ミコトはタケルにべったりだったようだ。 視線をやけにノリノリな女子中学生二人組みに移す。 「そうよね!うん、そう!やってみる、ありがとうミミちゃん。私やってみる!」 「その調子です!ミコト先輩なら出来るわ!」 無言で頭を押さえて、光子郎が疲れた表情で帰ってきた。 ようやく開放されたらしい。 「なにができるんだ?」 単語帳との睨めっこに飽きていた太一が戻ってきた光子郎にそう聞いている。空も興味があるのか、顔を上げた。 「・・・・・・・・・・・・。」 光子郎は無言で二人を見ると、ミミ達に視線を向けた。 ミミが、ミコトが指を組み、笑顔で首をかしげていた。 「・・・、指を組んで首をかしげ、にっこり笑って謝ると、たいていの人は許してくれるそうですよ。」 バンっと、単語帳が閉じられる。ビクッと反射的にそちらを見れば、その音の発信源はヤマトの手の中のものだった。 「ヤマトさん・・・?」 その状態で固まっていたヤマトは、そのままがっくりと肩を落とした。 「あいつに通じるわけねぇだろうが・・・。」 また被害が俺にまで・・・・、と暗くなっていくヤマトの肩を、太一と空がポンポンと慰めるように叩いた。 「あ、そういえば、ヤマトさんとミコト先輩って何か・・・。」 その様子に、ここに来る前のミミの言葉を思い出した光子郎が尋ねようとして、その口は太一に止められる。 太一は光子郎の肩に手を乗せ、そのままグイッと顔を寄せた。 「ミコトの苗字は?」 「は?いえ、聞いていませんが。」 「高石ミコトって言うんだよ。」 「高石、ですか・・・?」 「そう、ちなみにミコトが落ち込んでた原因は、タケルを怒らせたから。」 「じゃあ、謝る相手は・・・・。」 「そう、タケルだよ。」 「・・・・・。」 光子郎と太一は、同時に振り向いた。 「手はこう、口元に持っていったほうが効果的だと思いますよ?」 「こ、こう?」 「ああ、握っちゃダメですよぉ!手はこう、指先だけ組むように・・・・。」 「お、おっけー!こんな感じ?」 「ああ、それそれ!後は髪の毛を揺らしながらカクンと首をかしげて・・・・。」 太刀川先生の笑って許して大講座。 二人は再び前を向いて額を押さえて肩を落としているヤマトを見る。 「なんで、昔から、あいつらの喧嘩の被害を被るのは俺だけなんだ・・・。」 「ま、まぁまぁ。タケル君だって子供じゃないもの、大丈夫よ。」 武之内先生の必死な慰め。 「・・・・・。」 「タケルにアレが通じると思うか?」 「無理だと思います。」 「だろ?で、フォローするのは・・・・。」 「ヤマトさん、ですか。」 「ああ、そういう事だ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 結局、タケルは日々確実に成長しているらしく、前からの経験からか、兄に泣き付かれたのか、ミコトを許したのだそうだ。 ・・・・・・・・・17回目で。 本当はやけにしつこい彼女が、いつもとは反対にしおらしいフランスドールだったので、 “気味悪がっていただけ”なのだと、太一・空・光子郎はヤマトから聞かされることとなる。
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