奴はおかしな奴だった。
殺す気はないと、俺の目の前で銃を捨て、その場に座り込んだ。
そして名乗った。
「私の名は・。君は名乗らなくて良い。ただ、私の願いを聞いてくれ」
俺は不思議に、そして少し不審に思いながらも、何故か隣に座った。
今、考えてみると
奴の、あの悲しみの篭った微笑に、惹かれたのだろうか。
『 The Future Continues 』
〜 A story of the past 〜
隣に座ると、奴は
「ありがとう」
と微笑み、俺が警戒していることに気付いたように苦笑して、そして話し始めた。
己の愛した女性のこと。
その女性と駆け落ちをしたこと。
結婚して、子供が産まれた一ヶ月後に妻を亡くしたこと。
そして、その子供を己の手で殺めようとしたことを。
奴の声は泣いていた。
しかしその瞳には、一雫の涙もなく、それが妙に不自然だった。
「私は取り返しのないことをしてしまった。娘を・・・あれだけ愛していた娘を、この手で刺し、そして撃ったんだ。
・・・・・・これだけの罪を犯して、何故私はまだ生きているのだろう。何故、生にしがみ付いているのだろう。おかしいと思わないかい?」
俺は何の反応も示さず、ただただ奴の話を聞いていた。
「・・・・・・きっと娘は、心に大きな傷を負っているだろう。私を恨んでもいるだろう。それはしょうがないことだ。
それほどのことをしてしまったのだからな。だから、少しでも罪滅ぼしをしようと思う。・・・・・・君は、軍を憎んでいるね」
当たり前のことを聞かれたので、反対に直ぐに言葉を出すことが出来なかった。
イシュの民、ほぼ全てがその感情を持っているだろう。
「・・・・・・決まっているだろう。特に国家錬金術師・・・・・・全て殺してしまいたい」
「やはりね。・・・・・・この戦いはもうすぐ終わるだろう。国家錬金術師達が来たおかげで。
しかし、恨みは消えない。憎しみは消えない。君はきっと、殺すだろう。国家錬金術師達を」
「何故・・・・・・・・・」
「瞳と、さっきの言葉。そして少し前に、君が国家錬金術師を殺すところ見たんだ。そのときの表情とかで、なんとなく」
俺は返す言葉を見つけることが出来なかった。
そのときはまだ、その感情を表に出して、行動に移すことを決心していたわけではなかった。
ただ、漠然と「殺してやる」と思っていただけで。
「・・・私の娘の幼馴染の子達はね、父親を錬金術師にもっていて、その子達も錬金術を学んでいるようなんだ。独学でね。
そして娘もそれに混ざっているそうだ。もしかしたら、娘は国家錬金術師を志すかもしれない。自分の居場所を求めて。
だからもし、娘が軍人になり、君の目の前に現れたとしても、娘だけは殺さないでくれ。・・・・・・そして、私を殺してくれ」
切実な願いに、俺は首を横に振ることは出来なかった。
奴の瞳はもう、死を見つめていたから。
俺が殺さなかったら、きっと他の者に殺してくれと請うだろう。
自分自身は殺さない。
それが神への冒とくだと分かっているから。
「・・・・・・・・・分かった。最後に一つ、聞いて良いか」
「何だ」
「その娘の名は」
悲しげに。
そして愛しさを込めて。
奴は名を告げた。
自分が壊してしまった・・・一瞬の迷いで、殺そうとしてしまった
愛する娘の名を。
「・・・・・・・・・・妻がつけた名だ。・・・・・・さぁ、その手で私を殺してくれ。
妻が、待っているんだ」
俺は返事もせず、頷きもせず
奴を破壊した。
最後に奴が流した涙は、誰へ向けてだったのだろう、何の意味を持っていたのだろう。
知らない。
この手が赤く染まり、奴は死んだ。
俺が殺した。
この手で。
奴が願ったのに、今まで殺した誰よりも、罪悪感が残った。
あぁ、神よ。
俺の行いは正しかったのでしょうか。
奴は・・・・・・・は、妻の許へ逝けたのだろうか。
そしてその娘、・は
国家錬金術師へとなるのだろうか。
奴の話は憶測ばかりで
だがしかし、本当にそうなるかのように聞こえた。
奴が一方的に投げつけた願いを
俺は叶えてやろうと決めた。
それで奴が報われるなら
「・・・・・・・・・・そして俺は奴の言ったとおり、国家錬金術師を殺し始めた。奴が言ったからではない。俺自身でそう思い、行動に移したんだ」
今、目の前にいる、奴の娘は
泣きそうな顔をして、しかし泣かない。
「話してくれて、ありがとうございます・・・・・・」
今にも泣きそうな声をしているのに、瞳に涙の気配は全くない。
それがあの日の奴と、被って
一瞬、あの日の罪悪感が甦って、俺は眉間に皺を寄せた。
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過去話ぁ!
いかがでしたでしょうか?
一章につき、一話は過去話をいれていくつもりです。
次章も入りますよ。
お父さんでも主人公でもなく、鋼キャラの誰かです。
なので、知っている方いらっしゃるでしょうね。
えと、この回で謎を解きました。
スカーさんの、発した言葉の。
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