泣くほどのことを知った。
お父さんは・・・・・・
死ぬまで私を愛していてくれた。
あの忌々しい日の記憶が、一瞬にして薄れた気がした。
なのに、この瞳は感動の涙も悲しみの涙も切なさの涙も
どの涙も流そうとしない。
・・・・・・何故?
あの時は泣けたのに。
大佐に「大切だ」と言われたとき。
そして
「足手まとい」だと、大佐に冷たい態度を取られたとき。
触れた左目には、確かに水滴がついていた。
こう考えてみると、私、大佐関係でしか泣いてない。
でもそれは、大佐の前でしか涙が流せないわけではない。
だってまだ、たったの2回だけなのだから。
でもなぜ、今、泣けないのだろう。
『 The Future Continues 』
〜I don't cry & Thank you〜
言葉を出すことが出来なかった。
早くこの沈黙を切らねば、と必死になって言葉を考える。
でも、お父さんのことで今は頭がいっぱいで
少し頭の中を整理しないと言葉は出てこないようだった。
スカーさんはそんな私を待っていてくれた。
追われている身だと分かっているのに。
隣にいてくれた。
長い長い沈黙を経て
やっと頭は正常に働きだした。
言いたい言葉。
聞きたいこと。
それは一つしかない。
「・・・・・・・・・一つ、聞かせて下さい」
「なんだ」
「お父さんは最後に涙を流した後、笑みを浮かべていましたか?」
その涙を、誰に向けて流したのでも、私は良い。
ただ、切なさの涙ではなくて、安らかな涙であって欲しかった。
スカーさんは眉間に皺を寄せ、記憶の糸を手繰り寄せ・・・・・・・・・
「あぁ。口元に微笑を浮かべていた」
答えてくれた。
それは私が願っていたもので。
最後、お父さんは安らかにこの世を旅だって、お母さんの許へと逝けたらしい。
きっと、最後に考えていたのは私ではなく、お母さんのこと。
それで良かった。
だって、お父さんがこの世で一番愛していたのはお母さんだったから。
私は二番目。
それで良い。
きっと、この先、私を一番愛してくれる人が出来て
その人のことを私もこの世で一番愛すだろう。
お父さんとお母さんのように。
自然に零れた笑みを、スカーさんへと向けた。
「最後にもう一度言わせてください」
スカーさんは私の方を向き、緋色の瞳に私を映した。
「ありがとうございます。あなたの話を聞かなければ、私は一生お父さんを愛する気持ちを隠したまま、過去の記憶に怯え、
それを嫌悪していたことでしょう。だから本当に・・・・・・ありがとう」
ごつごつした大きな両手を、両手で包み込んだ。
少し冷たい。
でもそれは、心の体温とは繋がっていない。
この人は、一般的には犯罪者。
けれど、誰よりも優しい心を持つ人なのだと思う。
その優しさは、あの戦争で隠されてしまっただけなのだと・・・・・・・
私が手を離すと、スカーさんは立ち上がり、私に背を向けた。
「そろそろ行く。長いは無用だ」
「あっ、すいません!」
「いや・・・・・・」
私の方を振り向いて
「お前とまた会える日を楽しみにしている」
言葉を残して
スカーさんは歩き、去っていった。
その姿は暗闇へと消えていき、直ぐに見えなくなった。
頷く間もなく。
「私もです」
と言う暇もなく。
私も歩き出した。
反対方向に体を向けて、一歩、一歩。
先にあったのは、暗闇なんかではなくて
希望の光だった。
今私が歩いている先には
一体何が待っているのだろう。
例えばそれが
大切な人であったら良いのに。
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スカーさん、去る。
ちょっぴり良い感じに。
さぁて、やっとこの後大佐出てきますよ〜。
エドとアルも。
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