BACK/ NEXT私達は、五学年になった。 ただ一つ学年が変わっただけ。 何も変わりはない。 周りのみんなも、みんなの態度も。 な〜んも、変わってない。 この先もずっと、そうだと思ってた。 GOLDEN EGG スリザリン生と合同の薬草学の授業が終わり、私は一つ伸びをする。 スリザリンは気の合わない人が多いけど、合う人もけっこういたりする。 私は薬草学の教室から出て行くスリザリン生の中に彼を見つけた。 スリザリン生でも一番話す・・・違うな、一番一緒にいることが多い・・・かな? べらべら話さないし。 そんな彼を見つけ、私は小走りで彼を追い、もうすぐというところで 「セ〜ブルス〜!」 後ろから抱きついた。 彼は怒るのでもなく慌てるのでもなく冷静に、その状態のまま顔だけ私のほうを向けた。 「、どけ、重い」 声変わりした低い声で告げられた、短く酷い言葉。 それにさえ私は笑みがこぼれる。 だって、グリフィンドール生に対して彼がこのように普通の反応を示すのは私だけだから。 それを私も彼も知っているから。 「何よ、それ。酷くない?!私そんな重くないわよ!」 「いいからどけ。邪魔だ」 「む〜・・・はぁ〜い。分かりましたよ〜」 不貞腐れつつ、私は浮いていた足を地につけ、セブルスの首から腕を離した。 「で、今日は図書館行く?」 「いつも通りだ」 「そっ。じゃあまた図書室で。ばいばい」 手を振る私に、セブルスは手を振り返してはくれない。 いつものことだからどうってことない。 これは代わり映えのない日常なのだから。 「相変わらず冷静沈着ね、セブルスは」 リリーが私の隣に立ち、腕組みをして、微苦笑しながら息を吐いた。 「普通の男子だったらにあんなことされたら自慢するわよ」 「そうなの?まぁ、私とセブルスは仲の良い友達だから」 さっきまで彼に触れていた手を後ろで組み、規則正しく歩くセブルスの後姿を見つめる。 セブルスの姿が見えなくなった、その時 「おい」 後ろから、また声変わりした低い声が聞こえた。 セブルスではない。 今度は 「何よ、シリウス」 私は後ろを振り返りシリウスと向き合う。 シリウスは何故か不機嫌そうに私を睨んでいる。 「何でお前はあんな奴と仲良いんだよ」 声も不機嫌そうだ。 発した言葉には棘がある。いくつも、とげとげと。 「何よ。私にはあなたがセブルスとあんなに仲の悪い理由が分からないわ」 「・・・あいつはいけ好かねぇ野郎だ」 「あっそ。まっ、好き嫌いは人それぞれ違うってことよ」 「だからって抱きつくこたぁねぇだろ?だからお前らは付き合ってんじゃねぇかっつー 変な噂が流れるんだよ」 その言葉を聞き、私は噴出し笑い出す。 「私とセブルスが付き合ってる?」 笑いは止まらない。 冗談にも程がある。 「そんなことあるわけないじゃない。見ていれば分かるでしょ?」 馬鹿じゃないの?っていう風に言ってやったら、反対に馬鹿じゃね?っていう風に返されて、呆れた目をされた。 「見て、そういう噂が流れてんだよ」 「あっそう。へぇ、私とセブルスがねぇ・・・・・・ありえないわ」 わざとらしく息を吐いたシリウスを横目に、私は言いきった。 噂のほとんどは真実ではない。 たまに真実らしきものも混ざってはいるけれど、その内容全てが真実ではない。 確かに噂は信じたくなる。 多くの人がその話を口にするから。 でも噂っていうものは時に人を傷つけるときがあるから、しっかりと噂と真実を 聞き分ける術を持たなければと、私は噂を聞く度に思う。 「なんでそこまで言い切れる」 「だって私、セブルスのこと恋愛対象としてみたことないもの。もっと言ってしまえば、 今まで一度も誰かを恋愛対象としてすら見たことないわよ」 「まじかよ・・・女なのに」 「余計なお世話。そこに女は関係ない。男女差別はんた〜い!!」 握り拳を掲げる。 冗談ぽくね。 「しょうがないじゃない。誰も私を虜にしてくれる人がいないんだから」 「反対にお前に虜になっている男はたくさんいるけどな」 「そうなの?」 そういえばリリーもさっきそんなようなこと言ってたっけ。 興味ない。 「あぁ。つか、セブルスもその一人だろ?」 「まっさかぁ!ありえないわ」 冗談だと思って鼻で笑ったが 「いや、絶対そうだ」 けっこう本気な表情。 「絶対違う」 「絶対そうだ」 しばし、「違う」と「そうだ」の言い合いが続き 「・・・分かったわよ。だったら直接セブルスに確かめてみるから」 私が折れた。 「そんなことできるのかよ」 「いいものがあるの」 くすり、と私は笑った。 全ての授業が終わり、私は図書館へ向かう。 別に待ち合わせているわけではない。 「セブルス」 小さく声をかけ、彼の前に座る。 彼は目線を少しあげ、私を一瞬だけ視界に入れ、また勉強に没頭し始めた。 笑みながら小さく息を吐き、私は〔あれ〕を決行するべく声をかける。 「ねぇ、セブルス」 「何だ」 「ちょっと、お時間いただけないかしら。話したいことがあるの」 「話?」 彼のOKサインが出る前に私は立ち上がる。 「ここじゃあれだから・・・着いてきてくれる?」 セブルスは渋々立ち上がり、私達は図書館を後にした。 「話とは何だ。出来れば手短かに・・・って、何をするんだ!!」 人気のいない場所。 着くやいなや、私は素早くローブのポケットから小瓶を出して、セブルスの顔に 中の液体をかけた。 その液体の正体は・・・ 「何だよそれ」 ローブのポケットから取り出した小さな小瓶。 シリウスはそれを不思議そうに見つめる。 「これはね」 くすっと笑い 「真実薬よ」 「何?!そんなもんどこで手にいれたんだ」 「決まってるじゃない。自分で作ったの。嘘か真か区別のつかないことに遭遇したときに使うためにね」 「ったく、危ねぇ女だ」 「その言葉、そっくりあなたに返すわ」 「・・・・・・効果はあるんだろうな」 疑いの目を向けるシリウスに 「ばっちりよ」 私はウィンクした。 少し様子を見て、セブルスに問う。 問う直前、一瞬だけ恐怖に襲われた。 もし、シリウスの勘が当たっていたら・・・・・・ 本当にセブルスが私のことを好きだったら・・・この関係は終わり? その考えは直ぐに消した。 考えられないほどのことだったから。 「セブルスの好きな人って誰?」 敢えて「私のこと好き?」と聞かなかったのは、恋愛感情以外「好き」もあるから。 私がセブルスに抱く気持ちはそういうものだと思う。 「セブルス?」 反応がないので、顔を覗きこみつつ名前を呼んだら 「きゃっ!?」 いきなり手首を掴まれて、壁に押し付けられた。 「ん・・・っ」 押し付けられる唇。 強引に、ただ濃厚に。 唇に唇を重ねられ、息なんて出来ない。 「ちょっ・・・ゃっ、セブ・・、ルス!」 どうにかセブルスを両手で押し離して、解毒薬をかけた。 まだ残る感触。 ざらついた唇、温かな唇。 罪悪感、少しの絶望。 意識を取り戻したセブルスは、私を睨んだ。 私は唇を触る。 「お前がこんなことをする奴だったとは・・・」 非難する瞳、呆れている瞳、冷たい言葉。 絶えられなくて、嫌で怖くて。 「・・・・・ごめんなさい」 震える声を絞り出した。 「謝るなら初めからするな」 「ごめんなさい・・・・・」 セブルスが息を吐くと共に、沈黙が流れた。 「何故このようなことをした」 低く冷たい声が、沈黙を切る。 向けられる瞳はまるで氷柱のように、私には思えた。 胸を刺す、氷柱。 「・・・シリウスに、セブルスは絶対私のことを好きだって言われたの。絶対に違うって言い張ったんだけど、 最終的にムキになってしまって・・・・・だったら確かめてやるわよ!って」 「いったい私に何をかけた」 「・・・・真実薬」 「・・・・・まったく」 「ごめんなさい」 もうそれしか言うことが出来なかった。 セブルスに嫌な思いをさせた。 私も嫌な思いをした。 何て馬鹿なんだろう。 ムキにならなければ良かった。 後悔したってもう遅い。 これだけは聞かせて。 もっと後悔するだろうけど。 聞きたいの。 「ねぇ、セブルス」 「何だ」 「私にキスをしたってことは、さ。私のこと、す・・っ・・・・好き・・・・・・ってことなの」 頷いて欲しくなかった。 心の中で目を瞑る。 願って、祈って。 心の中で、手を握り締めた。 でも 「・・・・・あぁ」 願いは叶わなかった。 セブルスは頷いて、私を見る。 何て言えば良いのか分からず沈黙してたら、セブルスが言ってくれた。 「どうせ私のことなど恋愛対象に見てないのだろう」 「・・・・・ごめんなさい」 「私以外の奴も、お前はまだ恋などしたことなどないのだろう」 「うっ・・・・・そうです」 全てを見透かされていた。 「友達として好きなの。セブルスは私にとって大切で、居心地の良い人。そして、失いたくない人。だから、怖かったの。 シリウスの言ったことが本当だったら、って」 「何故」 「今の関係が壊れてしまう気がして。だって私は、あなたの気持ちには答えられないから」 「別に答えてもらおうなどと思ってない。この恋は予定外の恋なのだ。恋愛感情など俗物だと思っていたからな」 「じゃあなんで・・・」 「さあな。人の心ほど分からぬものはない」 「自分のことでも?」 「そうだ」 「そっか・・・・・・・ねぇ、私達、これからも今まで通りだよね」 「そのつもりだが」 「そっか。ん、良かった」 満面の笑みを浮かべたら、微妙にセブルスの顔が赤くなった気がした。 そうだよね。 今まで通りで良いんだよね。 きっと、セブルスじゃなかったらこうはいかなかったんだろうな・・・・・・ そう思ったら何だか嬉しくなって 「セブルス大好き!」 テンション高めにセブルスに抱きついてみた。 「・・・良く分からんが、ありがとう」 ずっと抱きついてたら悪いかな?って思ったから、直ぐ離れた。 そう言葉を発したセブルスは少し照れていて、いつもとは違うセブルスを見ることが出来て、結果オーライ!って感じだった ・・・・・んだけどね、この話には続きがあって 私達のことが気になったシリウスが、私達を探していたらしく・・・・・・ そして私達を見つけたときが、ちょうど私がセブルスに抱きついたときだったらしく・・・ あっ、教えてくれたのはジェームズね。 寮に行くやいなや、視界に入ってきたのは何だか暗〜いシリウス。 「どうしたの?」 リーマスに問ったら、リーマスは吃驚して、少し横に飛んだ。 「何そんなに吃驚してるのよ!?ねぇ、シリウス元気がないけど、何かあったの?」 ちゃんと主語を入れて問ったら、リーマスは真剣な表情で私の肩を掴んで、ぐいぐい壁際へと押し始めた。 「ちょ、何よ、リーマス!」 そして壁に押し付けられた。 リーマスの顔は直ぐ傍にある。 目と鼻の先くらいの距離。 えっ? 何だか、さっきと似たような展開・・・・・ リーマスには真実薬かけてないよ〜!! 「・・・・・・あのさ」 慎重に、緊張しながら、発された小さな声は 「セブルスと付き合いだしたって本当?」 思ってもみなかった言葉だった。 「・・・・・・・は?」 思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。 「シリウスが言ってたんだ。がセブルスに抱きついて、大好きって言ってたって・・・・・・」 何で見てんのよ!! 変態野郎! シリウスを睨んでみたけど、私なんて見ちゃいない。 何か良く分からないけど、ジェームズに慰められているみたい。 「あのね、リーマス。シリウスにも今日言ったんだけど、私はセブルスのことを恋愛対象と見ていないの。 もちろん、他の人もね。セブルスに抱きついたのは、単なる大袈裟な感情表現よ」 「・・・・・つまり、何か良いことがあったってことなんだね」 「うん」 微笑まれたから、つられて私も微笑んだ。 「何があったの?」 「セブルスがセブルスで良かったな〜って」 「は?」 「つまり、そういうことよ」 大きなクエスチョンマークを浮かべてるであろうリーマスとのお話は勝手にお終いにして、 私は凹んでいるシリウスの頭を履いていた靴で叩いた。 「いってぇ・・・・・何すんだよ!・・・って!!」 イラつきながら上を向けた顔を、すぐに〈驚〉に変え、〈悲〉に変える。 「何盗み見してるのよ!しかも変なこと言うし・・・誰と誰が付き合い始めたって?いつ誰がそんなこと言ったかしら〜?」 怒りの笑みを浮かべながら、シリウスに顔を近づけていく。 そしたらいきなり、シリウスの表情が変わって 「付き合ってないのか?」 〈悲〉が〈嬉〉になっていた。 「決まってるじゃない」 私は大袈裟に、呆れながら息を吐く。 「何だよ。やっぱそうだよな〜。お前とセブルスが・・・んなわけないよな〜・・・・」 何だかちょっとムカついたから 「そうね〜。まっ、あなたと付き合うよりは可能性あると思うけど」 意地悪っぽく言ってあげたら、どうやら本人は傷ついたらしく、また落ち込んでしまった。 シリウスを見て、さっきまでシリウスを慰めていたジェームズを見て、目が合って、 笑った。 「そうか・・・はセブルス派か・・・・・」 「何よ・・・・ただムカついたから言っただけよ。私は誰にも恋しないわ。今のところね」 恋はいつ来るか分からない。 恋するのはもっと先かもしれないし、もしかしたら明日かもしれない。 だって、セブルスが言ってたじゃない。 人の気持ちは分からないって。 夢を見た。 知らない場所を、知らない男の人と歩いている夢。 顔は覚えてない。 でもきっと、私の未来の好きな人。 私が〈知ること〉を少しでも願ったから、見たみたい。 顔を覚えてなくて良かったって思った。 だってつまらないじゃない。 そういうのって。 だからこの能力は、あまり好きではない。 知りたくないことも知ってしまう、この能力は。 +++++++++ これを書きたかったんです! これを書かなければ子世代編は謎だらけです。 親世代はギャグありシリアスありほのぼのありという感じでいきたいと思います。