可愛いな、って。 ただ初めはそう、単純に思っただけだったんだ。     phrase.1 入学式が終わると直ぐに、俺はタイを外し、ワイシャツのボタンを開けた。 「ふぅ〜。終わった終わった」 「思ったよりも長かったね、入学式」 隣にいるのは柚木。 性格とか全然違うのに何故か仲が良い奴だ。 音楽棟に入ると、初々しい新入生でいっぱいだった。 オケ部の宣伝でもやっちゃおっかな〜、とか思ってたら 「あっ」 小さく柚木が声を上げ、新入生達の方へと歩き始めた。 「ちょっ、柚木」 俺も慌てて追いかける。 柚木は一人の女の子の肩を優しく叩き 「ちゃん」 その子の名前を呼んだ。 ちゃんは後ろを振り向くと 「梓馬さん!」 驚いて、柚木の名前を呼んだ。 上ではなく下の名前を。 「久しぶりだね」 「はい、ご無沙汰しております」 笑顔を絶やさない柚木に対して、ちゃんは緊張しているみたいだ。 ストレートの長い焦げ茶の髪に優しい瞳、上品な言葉遣いに仕草。 可愛いな……って見惚れてる場合じゃないってば! 「何?この子柚木の知り合い!?」 「あぁ。父親同士が仲が良くてね」 「初めまして、と申します」 ちゃんは軽く会釈をして、まるで砂糖菓子のように微笑んだ。 「俺、火原和樹。専攻はトランペットだよ。よろしくね。えっと・・・専攻は?」 「声楽です。こちらこそ宜しくお願いします」 ちゃんはもう一度微笑んで 「ではまた。失礼します」 と会釈をして、自分達の教室へ入っていく一年生の波に飲み込まれてしまった。 初めはね、興味本位で聞いただけだったんだよ。 だって、人に近付くのって興味があるからでしょ? だからつまり、それなんだ。 別に、ちゃんと話している柚木が羨ましくて割り込んだわけじゃないよ。 最初はね。    ++++++++++++ 出会いは春、入学式。 1年くらい前から考えていて、1話と2話の途中までは直ぐ書けたのですが 止まり、この頃書くのを再開したら書けたので連載することにしました。 10話弱です。 もう、クライマックスまで書き終わったので大丈夫だと思います。
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