「そろそろ行くか」 読んでいた難解な本を閉じ、は立ち上がる。 寝巻きの上にシルクのカーディガンを羽織り、そして杖を持ち、部屋を後にした。    囚われの悪魔なお姫様 暗闇の中に小さな影が一つ浮かんでいた。 だ。 彼女はこの真っ暗闇の中を、明かりも持たずに歩いていた。 どうやら瞳に、暗闇でも周りが良く見えるよう魔法がかけてあるらしい。 そしてある場所で足を止める。 そこには以外に、もう一つの影があった。 はその影に話しかける。 「どうやら逃げなかったようだね、クィレル」 その影の正体は、闇の魔術に対する防衛術を教える、クィレルだった。 いつものおどおどしている態度での方を振り向く。 「ヴィ、さん。わ、私をこ、こ、こんな所に呼び出して。な、何をするつもりなんです。 き、君のことだから、ど、どうせ私をい、痛めつけるんでしょうけど」 は何も言わず、数歩、クィレルに近づいた。 「初めてだな、君と会うのは」 「な、何を言っているんです。わ、私とあなたが初対面なこと、あぁっあ、あるわけないでしょう」 はにやり、笑う。 その瞳は、怒りでもなければ悲しみでもない。 ただ、哀れみを秘めた瞳でクィレルの頭を見つめる。 「君に言ったのではない。私は君の頭にいる奴に言ったのだよ」 「あ、頭?こ、ここは駄目です。ま、前に説明したでしょう。わ、私は吸血鬼に・・・・」 「嘘を付くなクィレル。私は全て知っている。君の頭にいる奴も、その頭にいる奴が今、何を狙っているのかも」 はクィレルの言葉を遮り、酷く冷静な声で言った。 クィレルは目を見開く。 「いるのだろう、そこに」 何もかも、彼女は見透かしている。 それが彼女。 「ヴォルデモートよ」 〈例のあの人〉の名前を恐怖することなく発す。 それは彼女だから出来ること。 「なっ・・・・・」 クィレルの表情がおどおどした表情から「信じられない」というような表情に変わり、 そして酷く冷たい表情に変わる。 クィレルは杖を構えた。 それを見ては見下すように笑う。 「ちょっと待て。私は君と殺り合うために呼び出したのではない。ただ、頭にいる奴に用があっただけだ。 ヴォルデモート。お前は失った力を取り戻すために、賢者の石を必要としている。そしてそれを手に入れるまでの 一時凌ぎとして、ユニコーンの血を吸っている・・・・・・違うか」 その時、どこからともなく 「そうだ」 という声が聞こえた。 クィレルは口を開いていない。 は酷く透明な微笑を浮かべた。 それは〈奇麗〉だが、とても〈恐怖〉する微笑。 クィレルはまるで石になったように動けなくなった。 声は聞こえる。 「お前は私を殺そうとしているのか。それは無理だ」 「別に、私は今、君を殺そうと考えてはいない。殺したいとは思っているが、今の状態だとクィレルも一緒に 殺めてしまうだろう。それはそれで良いのだが、まだ自分の手を汚したくはないんだ。だから一つだけ問う。 答えなければ、嫌だが私はここで君らを殺すよ」 いつになく真剣な表情を、クィレルの頭に向け 「を殺したのはお前か」 切な気に、怒りを含んで言葉を発す。 少し経って、声が聞こえる。 「あぁ、そうだ。あの女はわし直々の申し出を断った。だから殺した。十分に痛めつけながらな」 くつくつと不気味な笑い声がする。 は「そうか」と呟き 「は生きているよ」 あざけ笑ってそう呟き、その場から 消えた。 「なっ・・・・・」 という声が、夜の暗闇の中に溶け込んでいく。 クィレルはまだ、石のように固まったまま がさっきまで存在した場所を瞬き一つせず見つめていた。  ++++++++ 姫の謎を深めるため。 そして姫とヴォルデモートを話させるための回・・・らしい。 文才がついていかない(涙
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