普通科と音楽科の隔たりがなくなれば良いと、良く信武君と話していた。
「・・・・・・そっか。まだ想っていたんだね」
「うん」
「頑張れ」
「ありがとう」
「それにしても・・・・・・」
「ん?」
隣りに座る信武君は、苦笑気味・・・・・・自嘲気味、かな、に
「金澤先生のことが好きだと聞いたときは驚いたよ。そして少し、落胆した」
笑ったの。
Phrase.3
「えっ、どうして?」
「恥ずかしいんだけど・・・はもしかしたら俺のことを好きなのかな?って思ってたからさ。
だって俺が学内コンクールの参加者に選ばれた時・・・・・・
『信武君!伴奏者まだ決まってない?決まってないなら私に弾かせて!ねぇ、お願い!』
な〜んて、必死になって言ってきたからさ」
「だって、声楽専攻者はコンクール参加は出来ないっておかしくない?別に楽器を統一してないんだから、人の声だって入れたっていいじゃない。
・・・・・・それで少ししょげてたら、先生が、お前はピアノも上手いんだから伴奏者に立候補してみたらどうだ?って」
「の中の金澤先生の存在はとても大きなものだったんだね」
「うん」
幸せそうに、懐かしげに微笑む彼女を見て、王崎は慈しげに笑んだ。
「じゃあ、俺の伴奏者を名乗り出た理由は?確か仲の良い女子も参加者にいたよね?」
「ん?それはね、優勝すると思ったからよ」
ウィンクをパチリ。
王崎の胸が、ドクンと鳴った。
「それに信武君は、唯一と言って良いほど良く話す同級生だったから。・
・・・・・だから金澤先生がいなかったら、信武君のことを好きになっていたかもね」
要らないよ、そんな慰みの言葉。
今の君が俺のことを好きでないなら、その言葉は何の意味もなさない。
思ったことは、口には出さず。
疑問を口にしてみた。
「そういえば。は別に引っ込み思案な性格でもないのに、何であまり男子と関わりをもたなかったの?」
「んと、それは・・・・・・何でだろ?特に理由はないけど、必要最低限の会話以外の会話は求めなかったのよ」
おいおい、と苦笑する王崎の隣りで、は人差し指を口下に当て、考え
「きっと、金澤先生と信武君だけで十分だったのね」
微笑んだ。
嬉しかったけど、ありがとうとは言わない。
勘違いだったけど、勘違いをさせる態度をとったのは君だから。
「そこは、金澤先生だけで十分だった、だろ?」
「うっ。今日の信武君なんか意地悪!」
笑う王崎をポコポコ叩いて
ふと、両親の方へ目をやると、学院関係者と思われる人と何やら話していた。
態度が普通ではない。
・・・・・・何かが起きた?・・・・・・っ!
ある事を思い出し、は不安になって席を立ち上がった。
「どうしたの?」
「もしかしたら・・・・・・ちょっと行ってくるね」
「あっ、ッ」
演奏に差し支えないところでは駆け足で。
向かう先は舞台袖。
勢い良く扉を開けて
「何が起こったんですか!?」
その場にいた一同がを見た。
不安、心配
そんな空気が流れている。
柚木の演奏が、終わった。
「何が、起きたんですか・・・・・・」
不安げな表情。
天羽が近付いて、事情を話した。
「月森君が見当たらないんです。もうすぐ出番なのに・・・・・・」
予感が当たった。
大きく息を吐いて、かき上げるように髪を梳く。
見つけてあげなくちゃ・・・・・・
蓮。待っててね。
あの時の記憶によって感情が暴走してしまわぬように
押さえ込むように両手を強く握って
瞳を閉じて、大きく深呼吸をした。
「トイレは?」
「探したけどいませんでした」
一旦報告をしに戻ってきた火原が答えた。
「全部中見た?」
「はい」
「そう・・・・・・じゃあ、他に人を閉じ込められる場所ってある?」
「閉じ込めッ!?」
大声をあげそうになった天羽が、罰悪そうに口を押さえた。
は大きく頷く。
「でも、外に出て行くのを見たやつが・・・・・・」
「じゃあそいつが犯人よ。今すぐ連れて来て」
「えっ、その・・・・・・」
「早く!」
「は、はい!」
その考えを否定しようとした火原だったが、の必死さに負け
急いで駆けて行った。
もう一度大きく深呼吸をして
焦りと不安で速まる鼓動を抑えようとする。
目を強く閉じて、祈るように手を強く握って額につける。
「お前さん」
頭に手を置かれて、ハッと目を開き顔をあげると、金澤がいた。
「あの時と同じだと思ってるのか」
「そうですけど・・・・・・いけませんか?」
「いや。ただ、あまり感情を暴走させるなよ」
「分かってます。けど・・・・・・・・・ッ、蓮」
不安で不安で仕方がなくて
怒りが爆発しそうで怖くて
その手がその声が優しくて愛しくて
私はその場に、泣き崩れてしまった。
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王崎さん登場です。
彼女とは良き友で、今でも良く連絡をとっています。
あと2話+番外です
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