BACK/ NEXT「ちゃん!」 名前を呼ばれ、顔をあげると、そこには猪里君がいた。 心配そうに私を見ている。 気付かなかった。 もう、校門まで歩いてきていたことを。 「猪里君………」 自分でも吃驚するほど、落ち込んだ声。 また、涙が流れそうになった。 ねぇ、何でこんなに落ち込んでるの? 何で涙が流れそうになるの? 分かってるのに、分かろうとしない私の頭。 「言っちゃったんか?」 私は小さく頷いた。 「これで良いの。すっごく悩んでね、ちゃんと自分で決めたのよ。でも何でだろうね。 すっごく苦しいの・・・・・辛いの。別れを告げたのは私なのにね」 これ以上、ここにはいられないと思った。 泣いてしまう。 ここには猪里君以外の人がいる。 人前では泣きたくない。 だから 「ごめん……詳しいことは後で話すから、一人にさせて」 そう言って、微笑んだ。 笑わないと。 だって、何で泣くの? 私が泣くのはおかしいじゃない。 だって 私は〔振った側〕なんだから。 「ちゃん……」 何か言いたそうな猪里君。 でも私はそれに気付かぬ振りをして 「……じゃあね」 背を向けた。 私はまた歩き始めた。 頭に残るのは、ショックを受けた彼の顔。 あなたが悪いんでしょ? でも、私、すごく罪悪感でいっぱいなの。 なんで・・・・・・? 数分遅れて、虎鉄が現れた。 まるで魂の抜けきったような顔をし、とぼとぼと猪里達の方へと歩いてくる。 「何でだYo・・・・・・」 猪里の前に立ち、虎鉄は小さく呟き、猪里の服を掴んだ。 「何言ってんだYo、猪里!俺は浮気なんかしてないZe!ただちょっかいをだしてただけで・・・・」 「あれはちょっかいなんてゆう生ぬるったいものやなか!虎鉄はちゃんの気持ちなんてじゃんじぇん考えてなかった! ちゃんはな、えらい悩んで傷ついて、そいで自分で答えばだしたんだ・・・・・」 「だからって・・・別れるってなんだYo・・・大ッ嫌いって・・・・・くそっ・・・・・ くそォーーーーーー!!」 「あの、さっきの人って虎鉄先輩の―――」 「猿野君。今はそっとしておいてあげよう」 「はい・・・・っす」 問おうとした猿野を、静かに牛尾が制した。 猪里に肩を抱かれ、泣き始めた虎鉄。 大切な人を失った悲しみ、己への嫌悪。 何もかもが入り混じって、外へと出ていった。 残るのは後悔だけ。 頭はぐちゃぐちゃで、顔もぐちゃぐちゃで。 虎鉄にかけてあげる言葉一つも見つからず、皆はただその場に 立ち尽くしていた。 +++++++++++ 虎鉄と同じくらい猪里が出そうな予感…… ちなみに猪里の博多弁は博多弁コンバータで致しました。 虎鉄の「だYo!」とか苦手です……良く分からない(汗