〔あなたが私の生活からいなくなっただけ〕の生活。 笑ってるよ、私。 でも、あなたを見ると、苦しいの。 あなたがいなくなった。 ただそれだけのことなのに。 「ちゃん」 日当たりの良い屋上に、私と猪里君はいた。 ほんとは入っちゃいけないんだけど、何故か鍵が開いているんだよね。 『立ち入り禁止!』っていう看板意味ないし。 お弁当を黙々と食べていたら、猪里君が私の名前を呼んだ。 「何?」 お弁当箱を置いて、猪里君を見る。 心配気なその表情から、何を言いたいかは予想がついた。 でもそれを制すことなく、私は耳を傾ける。 「虎鉄のことはもうよかの?」 「………分かんない」 本当は「もう良いの」って答えたかった。 でも、嘘はつけない。 猪里君にもだけど、自分にも。 「ちゃんはどうしたいん?」 「………分かんない」 じっと見つめてくるから、私は目を逸らした。 何かを見透かされている気がして。 何だか、怖くて。 「余計なことかもしれなかけど、俺は戻った方がよかって思ってる。虎鉄だってもう反省したやろ?」 「でも……私からそんなこと、出来るわけないじゃない………」 「………今のちゃん、すごく哀しそうな顔しとるよ。それって、虎鉄がすごく好いとぉだってことやろ? やけん後悔して、辛くて、苦しいんやろ?笑っとるのが一番よか」 「ん、ありがと。でも、私からは言えない」 言えるわけないじゃない。 大河のことがまだ好きで好きでたまらないけど、振ったのは私よ。 そんなこと出来ない。 猪里君は小さく息を吐いて「そっか」と呟いた。 「やあもし、虎鉄が謝って、もういっぺん付き合おうって言われたらどうする?」 小さな沈黙を切って、猪里君はまた私に問ってきた。 そんなこと、あるだろうか。 そんなもしも話あるだろうか。 あったら良いと願い自分がいる。 そんなことあるはずない、と笑う自分がいる。 「付き合い、たい………」 本音が出た。 嗚咽と一緒に出そうになり、必死で止めた。 泣いてはいけない。 泣いても何にもならない。 「まだ好きなの。大河のことを見ているだけで、胸が締め付けられるの。私から振ったのに、何で? 何で前よりも好きって気持ちが溢れてくるの………」 「ちゃん……」 お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。 でも、私達は動こうとしない。 私は俯いて、猪里君は私を見ていた。 そうだよ。 大好きなの、まだ。 授業が始まることを告げる、チャイムも鳴った。 それでも私達は動こうとしない。 まるで、接着剤でくっついてしまったかのように。 ただそのまま。 ただ、その状態のまま。 授業に行かなくちゃ…… 頭ではそう思っているのに、動こうとはしない体。 猪里君も動こうとはしない。 授業、出なくていっかな………? そう、思ったときだった。 ガチャリと、ドアの開く音がした。     +++++++++++ 久々更新です! 早く完結しなければと思い、書きました(だってこれ確か短期連載で始めた気が…) 猪里の博多弁はまた博多弁コンバータで致しました。 次で終わりですので、最後まで見てやって下さい!
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