01 謎の転校生


あの少女を見た日から何日か経ったある日。



「おはよ〜、ヒカリちゃん」
「あっ、おはよ。大輔君」
現選ばれし子供達が通うお台場小学校。
5年生3人組は同じクラスで、近くの席。
ホームルームが始まるチャイムが鳴ると、先生が教壇に立って
「えー、今日は大変良いお話がある。なんと、転校生が来たぞ」
先生の言葉に生徒達はざわめき始める。
「なんか転校生多いな〜」
「そうね。タケル君が1ヵ月前に来たばかりだし」
「どんな子だろうね」
新選ばれし子供達も興味津々だ。
「入っておいで」

ガラッっとドアが開き、入ってきたのは黒髪の美しい少女だった。
その少女の服装は黒と白だけで統一されており、まるで〈喪服〉のような印象だった。
一瞬、現選ばれし子供達は「あの時の子?!」と思ったが、顔を見ていないので
なんとも言えない。

少女は黒板に綺麗な字で〔白鳥 朔耶〕と書き
「白鳥 朔耶と言う。宜しく頼む」
と少し変わった話し方をした。

「じゃあ、本宮の隣に座ってくれ。本宮!」
「あっ、はい」
先生に呼ばれ、少女、朔耶に分かるよう手を上げた。
少女は音も立てずにその場まで行き、ゆっくりと席に着いた。
「白鳥。分からない事があったら誰でも良いから聞いてくれ。あっ、八神!
学校案内を頼んだぞ」
「はい、分かりました」
席が近いからだろうか、ヒカリは少女の学校案内を頼まれ、驚きつつも頷いた。


「白鳥 朔耶だ。宜しく頼む」
「あっ、ああこちらこそ。宜しくな」
昨日の少女の事を考えていたので、いきなり話しかけられた大輔は少々驚きつつも挨拶を返した。


白鳥 朔耶という少女は普通の小学生とは一味も二味も違った。
話し方もそうだが、大人っぽい態度や振る舞い方、そして少し影のある表情。
気付いている子は少ないとは思うが、ヒカリとタケルはそれに気付いていた。



昼休み、ヒカリは先生に言われたとおり、朔耶の学校案内をしていた。
「ここが図書室であっちが音楽室。って、見れば分かるけどね」
などと教えていると

「パソコン室はないのか?」
いきなり聞いてきので、ヒカリは少し吃驚したが
「あるわよ。3階なんだけど、行ってみる?」
階段を指差し聞いて見たが
「いや、いい」
断られ、少しの沈黙が流れた。


「今日は丁寧に案内をしてくれてありがとう。礼を申す」
朔耶は沈黙を切った。
深々と頭を下げられ、ヒカリは少し恥ずかしそうに胸の前で手を振った。
「そんな、お礼なんて要らないわよ」
「いや、普通礼はするものだろう」
「そっか。じゃあ、どういたしまして。何か分からない事があったらなんでも聞いてね」
「ああ。すなまい」
「じゃっ、教室に戻ろっか」
「そうだな。もう予鈴も鳴る頃だろう」
二人は同じ位の足取りで、教室へと帰っていった。



5時間目の授業は理科で、理科室での実験だった。
6時間目は学活。
朔耶により早く自分達の事を知ってもらおうと、皆で自己紹介をすることになった。
黒板には
〔@名前 A誕生日 B血液型 C趣味・特技〕
と書かれている。

次々と自己紹介が行われる中、大輔は大きなあくびを一つ。
ふと、朔耶の方を見ると、ランドセルではない、もう一つのバックに何かを言っているようだった。
不思議に思い、耳を澄ませて聞いてみると
「・・・・・・もう少しで終わるから静かにしているんだ」
という部分だけ聞き取る事が出来た。
その鞄が動いた様な気がしたので、中に何かいるのかな〜と思い聞いてみようとしたがダメだった。
自分の番になってしまったからだ。


最後の朔耶の番になった時は、もう終了時刻間近だった。
教壇に上がり、軽く礼。
「朝も言ったが、名前は白鳥 朔耶。誕生日は8月31日。誕生花はひまわりだな。
血液型はA型。趣味は・・・自然散策。特技は特になし。強いて言えば生き物と仲良くなることだろうか。まぁ、仲良くしてくれ」
最後にもう一度軽く礼をし、席へと戻ったと同時くらいに終了のチャイムが鳴った。

日直の号令で席を立ち、終了の礼をすると、生徒達は一斉にに帰りの用意をし始め、15分後位には帰りのあいさつが終わり、皆教室を出て行った。




「う〜ん・・・」
ほとんど放課後の日課となりつつあるパソコン室へと向かっている途中、ずっと大輔は考えていた。

京と伊織とは入り口で合流。
大輔が腕を組んで考え事をしている姿を見て京が一言。
「何考えてんのよぉ。まっ、あんたの事だからどうせくだらない事だと思うけど〜」
何時もだったら何か言い返してくるのだが、今日は反応がない。

「大輔さん、どうしたんですか?」
伊織が心配そうに聞く。
「・・・いや、俺の見間違いかもしれないが、動いたんだよ」
「「「「はぁ?」」」」
主語のないその言葉に全員が首を傾げ、素っ頓狂な声をあげた。
「だから、転校生の鞄が」
「えっ、転校生が来たんですか?!」
「ええ。白鳥 朔耶ちゃんて子でね、とても奇麗な子なの」
ヒカリが簡単に説明する。
〈可愛い〉ではなく、敢えて〈奇麗〉という言葉を使ったのは、やはりあの他の子供達とは違う雰囲気があるからだろうか。

「で、その朔耶ちゃんて子の鞄がどうしたのよ〜」
「・・・6時間目の学活の時、ふと朔耶ちゃんの方を見たら鞄に話しかけていたんだよ。一部分しか聞き取れなかったけど、
もう少しで終わるから静かにしてろとかだっけかな?まぁ、そんなような事を鞄に話しかけていたんだ。そして一瞬鞄が動いたような気がして・・・。で、中に何がいたんだろうって考えていたわけだ」
「なにか動物ですかね〜・・・」
伊織も一緒になって考え込む。

「もし動物だとしたら、ちゃんと鞄の中に入っていられるってことは随分飼いならされているようだね」
タケルは笑っていたが、頭の中ではしっかりと考えていた。
その生き物は何か・・・もしかして、と。
皆も同じ。
思った。
昨日の少女と白鳥朔耶は同一人物なのではないか、と。

「まぁ、そのことは一先ず置いといて。さっ、早く行きましょう」
京がデジヴァイスを取り出した。
その言葉に男子3人は考えるのを止め
「準備は良い?」
「うん」
「はい」
「おぉ!」
返事をした。
しかしヒカリだけ返ってこない。
見てみると、今度はヒカリがさっきの大輔のようになってしまっている。

「ヒカリちゃ〜ん?」
「・・・・・・やっぱりそうじゃないのかしら」
「えっ?」
主語のない言葉に京は疑問符をあげた。
ヒカリは顔をあげ、真剣な顔を皆の方へと向け
「朔耶ちゃんはあの時の女の子なのよ」
「「「「えぇ??!!」」」」
見事に4人の声が重なった。
「どこにそんな根拠があるのですか?」
「確かに俺もそう考えてはみたけどさ・・・」
「決め付けるのは早いと思う」

三人の意見も碌に聞かず、話し始める。
「髪の長さ、服の好み。そして趣味と言っていた自然散策はDW」
伊織の問いに、ヒカリはまるで探偵のように根拠をあげていく。
「そして生き物と仲良くなる事はデジモンと仲良くなると言う事。・・・そして極めつけは、
今日、私が朔耶ちゃんの校内案内を担当したでしょ?」
「あっ、ああ」
「そうだったね」
同じクラスの大輔とタケルは頷き、京と伊織はへぇ〜、といった顔をしていた。

「その時朔耶ちゃん、私にこう聞いたの。パソコン室はないのか?って。パソコンはRWとDWを繋ぐ唯一のもの。
他は何も聞かないで、それだけを聞いてきたから、少し疑問に思っていたの。だからたぶん、昨日の子は朔耶ちゃんなのよ!」
ヒカリは最後にそう言いきった。

「さすがヒカリちゃん!」
「でも、どうやってそれを確かめるの?」
「そう、そこが問題なのよね・・・」
タケルの一言にまた考え込んでしまうヒカリ。
刹那、沈黙。

伊織が何かを思いついたように小さく手を叩いた。

「だったら明日はここに来るのを少し遅くしませんか?」
「えっ、なんで?」
京が聞くと
「きっと僕達がここに行く所をを見たから朔耶さんは来られなかったんだと思います。
何時もより遅く来れば、来ると思いますよ。もし朔耶さんがあの女の人で、もし僕が朔耶さんの立場だったら、
この学校のパソコンを調べたいと思いますから。見張りはウパモン達に任せればいいですしね」
「それは良い提案だね」
「んじゃ、決行は明日だ!」
そして選ばれし子供達はデジヴァイスをパソコンへ向け、DWへと吸い込まれていった。












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