12 子供達は…



「あぁ、みんなほんとごめん!!」
朔耶が去ってから、一番初めに口を開いたのは太一だった。
申し訳なさそうに両手を合わせて皆に謝る。
その姿を見て、皆は微笑む。
「別に謝ることじゃないよな」
「朔耶ちゃんが殺人者になるのを止めたわけだしね」
「結果オーライっすよ!ただ、俺のサッカーボールが………」
大きな穴が開いて萎んだサッカーボールを見て、大輔は遠い目をした。
「ゴメン大輔!俺のやるから許してくれ」
「えっ、駄目っす!いらないっすよ!俺また買ってもらいますから」
先輩に謝られ、激しく首を横に振りながら太一の申し出を断った。

「僕も、感情的になってごめんなさい」
唇を噛み締めて、タケルは言った。

少し、震えている。
それは怒りからなのだろうけど
朔耶に対しての怒りなのか
自分に対しての怒りなのか
皆は分からない。


一瞬にして、場の空気が変わる。
そんなタケルの頭に優しく手を置いてヤマトは言う。
「良いんだよ。お前の言葉は、朔耶ちゃんに届いたさ」
「そうよ。ありがとう、タケル君」
ヒカリは微笑む。
昔のタケルを知る選ばれし子供達は、ヤマトを筆頭に昔を思い出しながら
タケルに接した。

優しく、優しく。
ガラスを扱うように。


それを知らぬ子供達は、疑問を持ちながらも、今はそれを聞くときではないと
黙って場の雰囲気に、自分を溶け込ませていた。


「で、どうするの?」
場の雰囲気が和んできたので、丈が話を切り出す。
「今日は朔耶ちゃんと交流を深めるための集まりだろ?主役がいないけど、どうする?」
「そうよね…」
「しょうがねぇから、朔耶ちゃん抜きで行くかぁ。弁当もったいねぇし」
「それもそうですね」
太一の一言に、皆頷く。
「じゃあ、そういうことで。みんな、こっそりだぞ」
一人一人、学校に入っていく。



「タケル」
動かず、朔耶が歩いていった方をずっと見つめているタケルをヤマトが呼ぶ。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「やっぱ何でもない。早く行こう」
何か悩んでいた表情が、笑顔に変わる。
ヤマトは安心し、兄弟揃って学校へと入っていった。


さっきタケルは言葉を飲み込んだ。
「朔耶ちゃん、大丈夫かな」
という言葉を。
発してしまっても良かったのだろうけど。
言ってはいけないような気がして。
咄嗟に言葉を飲み込んだ。
笑顔で振舞ってみたけど
やっぱり気になる。
タケルは心の中で悩んでいた。
あの青年に会って、あんな話を聞かされて、平常心を失っていた朔耶の心に
自分は何かを突き刺してしまったのではないのかと。
どうしようと、悩んでいた。









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