頭も運動神経も良いほうで
性格などに少々難点ありな朔耶だが
それ以外にはこれといって大きな欠点はない………ように見えたのだが。
彼女には一つ、とても苦手なことがあった。



 14 苦手なこと
 


朔耶が皆に心を開き、自分の気持ちを素直に伝えた日。
DWでピクニックをした日。
少し戸惑いながらも皆と話し、時々みせる微笑に、ヒカリはほっとしていた。
その中でも朔耶は自分の兄のことを知っているヤマトと良く話していた。
初めヤマトは朔耶の兄のことを話すのを躊躇ったが、朔耶が「私の知らぬ兄さんを教えて」くれと言ったので、
ほぼ興奮気味に話し始めた。
その言葉、そしてヤマトの話を聞く表情に兄の死を引き摺っている朔耶はいなかった…というには語弊があるかもしれないが、
前よりずっと、兄に縛られている強さは弱まっているようだった。


「綾十さん、色々な音楽会社からオファーが来てたのに全部断ったらしくてさ、CDとか一枚もないんだよ。
あ゛ーーー、綾十さんの歌が聞きてぇ!」
そう叫んだヤマトに、朔耶はいつもの真顔で
「歌ならあるぞ」
と答え、紙コップの中のオレンジジュースを飲み干した。
「本当か!」
「あぁ。つい最近な、兄さんの部屋からMDを見つけたんだ。そこにたくさん入っていた」
「貸してくれ!」
その、嬉しさが全て放出された声・表情・態度に、朔耶は嬉しそうに笑い出し
「分かった。ただし壊すなよ」
「壊すもんか!」
「サンキューな」と、ヤマトは感激のあまり朔耶の手なんか握っている。
朔耶はそんなこと気にせず、横を向いて
「おい、お前」
と言う。
誰をさしているのか分からず、朔耶の視線の方向から
「俺?」
と大輔が自分を指差した。
朔耶はコクリと頷いて「飲み物をとってくれ」と、大輔のすぐ側にあるペットボトルを指差した。

その光景を見て、ヒカリは「ん?」と気になる点を見つけ
「もしかして………」と朔耶に近付いた。


「ねぇ、朔耶ちゃん」
「何だ?」
飲み物で喉を潤わせてから、朔耶は疑問符をあげた。
ヒカリは自分を指し、真剣な顔で朔耶に問った。
「私の名前、分かる?」
「分かるさ…」
ヒカリの問いを肯定した朔耶の目は完全に泳いでいる。
「じゃあ、この子は」
と近くにいた伊織の腕を掴み、朔耶の視界に入れる。
朔耶はヒカリと目を合わせようとせず
「わ、分かるさ」
「じゃあ言ってみて」
「なぜ言う必要がある。名前なんてそいつを呼ぶときに使うものだろう」
誰が見ても「嘘だ」と言えるその態度に、ヒカリはため息をついた。
「もしかして朔耶ちゃん。ここにいる皆の名前、覚えてない?」
朔耶は間を空けてから、こくり、小さく頷いた。
「何で覚えられないの?!お兄ちゃん達はともかく、私達のことは覚えてくれたって良いでしょ!」
「しょうがないだろう。覚えられないものは覚えられないのだから。デジモン達の名前なら皆分かるぞ」
「そんなの私だって分かるわよ!」

皆はその光景を「また始まったよ」「つか、ヒカリちゃんキャラ変わりすぎ」
と苦笑しながらで見ている。
止める者は誰一人していない。


「分かったわ」
ヒカリが疲れたように息をはき、説教をやめたので、朔耶は安堵の息を吐いた。
しかしそれも束の間の休息で
「特訓するから。覚えて。今日中に」
「え゛っ………」
「大丈夫よ。朔耶ちゃんの頭なら、ねぇ」
その微笑む顔に朔耶は「こんなものも覚えられないの?」と書いてあるように
見えたらしく、闘争心を燃やしながら
「やってやろうじゃないか」
と、立ち上がった。




それから十分ほど、ヒカリは何回も何回も「この人が誰で」「あの人は誰」という
ことを朔耶に説明し、朔耶は頷きながら頭の中にインプットしていった。
しかし、もうすでに頭の回線は混乱し始めていた。
名前を覚えても、顔を名前が一致しない。
ヒカリとヤマトの名前は覚えられたみたいだが、他の面々の名前はまだごちゃまぜ。
理由は〔興味がないから〕。




どうにか頭の中に詰め込んだ。
所謂丸暗記。


ヒカリは、皆を横一列に並べると
「朔耶ちゃん。右から、その人の名前とパートナーデジモンを言ってみて」
朔耶は緊張で、ごくり、生唾を飲む。
その他の皆も緊張で、ごくり、生唾を飲む。


五分の時間が経ち………


「なんだ。覚えられるじゃないか」
「これからは、私達のこと、しっかりと名前で呼んでよね」
ヒカリの言葉に朔耶はこくり、頷いた。





しかしそれから数日後。
朔耶はまた、名前があやふやになり、ヒカリに説教されながら、また
名前を覚えさせられるはめになったのだった

  




























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何だろう…このどうでも良いような話は(汗)



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