大好きだった。
世界中の誰よりも。
でも今は、この世には存在しない。
大好きだった。
いや、今でも大好きだ。
かけがえのない存在。
それは今でも変わらない。
これからも、ずっと………
03 兄への気持ち
次の日。朔耶は学校を休んだ。
次の日も、そのまた次の日も学校を休んだ。
理由は「風邪」らしいが、選ばれし子供達は
「顔を合わせにくいから」
もしくは
「顔を合わせたくないから」
だと思っていた。
「今日も朔耶ちゃん来なかったわね…」
「そうだね」
「DWでも見かけた、って話は1つも聞かないしな…」
パソコン室で、5年生組は大きな溜息をつく。
それを見て、心配そうにしている京と伊織。
「大丈夫ですよ。明後日にはそれも解決するでしょうし」
「そうそう。なんてったって、あの美形のお兄様に会いに行くんだから。先生に住所は教えてもらったんだよね?」
「ええ。今日、聞いてきました」
「理由とか聞かれた?」
「何も聞かれませんでしたよ。何だか、先生も転校した早々に休んでいるから心配してるらしくて………」
「そっかぁ………」
しばし沈黙が流れる。
「でも、・・・このまま朔耶さん、学校に来なくなったらどうしましょう」
伊織がそっと呟いた。
その沈黙の中で。
本人は誰にも聞こえないように言ったつもりだったらしいが、しっかりと全員に聞こえていた。
「伊織、何でそんな縁起のわりぃこと言うんだよ!」
「あんな事言われれば誰だってそういう気に少しはなりますよ!」
怒鳴ったのに怒鳴り返されて少しビクつく大輔。
「今は仲間割れをいている時じゃないだろ!」
喧嘩をしそうになった2人をタケル叱りつけた。
「すいません……」
「あっ、ごめん……」
しょぼんと肩を落とす。
「まぁ、大丈夫よ。朔耶ちゃんだって人間不信に陥ってるわけじゃないんだし。
ここは、お兄様に懸けよ」
「そうだな。…まぁ、頑張るかぁ。仲間をゲットするために。つーか朔耶ちゃん、家にいないと良いけどな……」
「まぁ、いたらいただけどね」
話を聞いてはいなかったけど(お菓子を食べていた)、雰囲気を読み取って静かにしていたデジモン達も次第に騒ぎ出し、
いつの間にか皆には笑顔は戻っていた。
明後日の日曜日
待ち合わせ場所は至って普っ通な「お台場小学校前」。
一番初めに来たのは、タケルで、一番最後に来たのは意外な事にヒカリだった。
それも、ある人物が後ろに………
「よぉ!みんな待ったか?」
「太一先輩!何でここに?!」
「ん?俺だけじゃないぞ。ほらっ」
太一の後ろを見るとそこには
父親の仕事でアメリカにいるミミ以外、元選ばれし子供が全員揃っていた。
「皆さんお揃いですか?!」
「あぁ。太一に誘われてな」
「はぁ?!そりゃ誘ったのは俺だけど、お前だって白鳥朔耶ちゃんに興味があるんだろ?」
「うっ、ま、まぁそうだけど……でも、お前、俺一人じゃ嫌だから着いてきてくれとか
言ってたじゃねぇか!」
なんだか太一とヤマトの間で喧嘩らしきものが起こりかけているがそれは
「こらっ!そんなくだらない言い争いしてる場合じゃないでしょ!」
お姉さん(お母さん?)キャラの空にビシッ!っと止められた。
「やぁ、こんにちは」
「皆さんお久しぶりですね。その・・・白鳥さんの家の住所は分かっているのですか?」
「あっ、はい。これです」
住所の書いてある紙を光子郎に渡すヒカリ。
それをパソコンに入力して地図を出す。
「白鳥さんの家はこの辺ですね。ここからはそう遠くないです」
「そう。じゃあ行こうか」
何気にその場を取り仕切っている元選ばれし子供達。
それに反抗もせず(出来ず)光子郎を先頭に朔耶の家へと行くべく、現&元選ばれし子供達は歩き出した。
それから15分位すると表札に「白鳥」と書かれた家が見えてきた。
「ここっすか?」
と大輔が聞こうとその家を指差したとき
扉が開き、中から朔耶と知らない少年がその家から出てきた。
その朔耶の顔はいつも冷静を装っている顔じゃなくて怒り狂った顔になっていて、
少年の方は、戸惑いと脅えの入り混じったような顔をしていた。
「出て行け!お前と話すようなことなど何もない!」
怒鳴る朔耶。
怒りよりも哀しい叫び。
怒るよりも泣きそうな顔。
それを見て、現&元選ばれし子供達は驚きのあまり声も出せない状態になっていた。
「朔耶……なんでお前………」
「だから私は変わったのだと言っただろう。前の私とは違うのだ。もう、お前の知っている私ではない。
身も心も穢れてしまった……悪魔なんだよ………」
その言葉を口にした時の朔耶の顔は悲しみに満ちた、とても壊れそうな笑みだった。
「…お前と私とでは、住む世界が違う。早く帰れ!」
小さな、聞き取れない言葉を発した後、朔耶はもの凄い剣幕で怒鳴り、勢い良くドアを閉めた。ガチャリと鍵を閉める音がした。
静かに。
小さく響いた。
自分で言って、傷ついた。
なんて馬鹿なのだろう。
でも、本当の事だ。
言いすぎたとは後悔している。
でも、兄さんの事を話題に出したあいつが悪いのだ。
兄さんの死を。
兄さんの過去を。
とても優しかった。
今でも鮮明に思い出せる。
暖かい手、笑顔、声。なにもかも、好きだった。
兄さん。なぜ、あなたは私をおいて行ってしまわれたのです。
私も、連れて行ってほしかった。
兄さんと一緒に、行きたかった。
そこのところは、恨みますよ。兄さん。
大好きだったから。世界で一番。大切だったから・・・・・・
忘れない。忘れたくない。
だから私は、変わったのです。
誰にも、心に入ってきて欲しくなかったから。
心に、鍵を掛け。あなたとの思い出を守ります。
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