07 DWにて
朔耶の心が開きかけ、朔耶は5人とともにデジタルワールドへ行くことが多くなった。
しかし、朔耶は皆と行動を共にするだけで戦いには参加をしない。
なぜだと問ったら「戦うことが出来ないから」と言われ、その理由は説明してもらえなかった。
朔耶への疑問はまだまだあるものの、今日も6人+6匹でDWに来ていた。
「朔耶ちゃん早―い」
皆よりも5mほど前にいる朔耶に、京がバテ声で言う。
「そうか?」
一方、朔耶はしれっとしている。
全く疲れていないようだ。
「いつも私達の歩くスピードの倍くらいよね」
苦笑するヒカリ。
「そうだね」
頷きながらタケルも苦笑する。
「それにしたって、京さんはバテすぎです。日頃から適度な運動は大切ですよ」
そんな京に伊織からきつ〜い一言。
それに「そうそう」と大輔が頷く。
それでも、朔耶の歩くスピードは変わらなかった。
ただ無言で前へ前へと進む。
皆は頑張って、それに着いていく。
「そういえば」
と口を開いたのはタケルだった。
「僕達が始めて朔耶ちゃんを見た日、朔耶ちゃんの背中から羽根が生えていたけど……あれ、何だったの?」
ぴたっと朔耶の足が止まり、後ろを振り向く。
「私はクルモンが攻撃技をつかえないかわりにあれを貰った」
「だから戦うことができないのか………」と皆は納得をした。
しかし、それとこれとは別で、朔耶の答えはタケルの質問といまいち合ってない。
なのでタケルがもう一度問った。
「だから、あれは何?」
「………いずれ分かることだ」
少し不機嫌そうに朔耶はまた歩き出した。
足取りはさっきよりも速い。
それから歩くこと十数分。
京とヒカリの体力が限界に近づいてきた(特に京)頃………
朔耶が足を止めた。
そしてあたりを見回す。
「何をして「話しかけるな」
「はい…」
大輔が何をしているのか聞こうとしたが、一蹴された。
両耳に手を翳し、周りの音を聞く。
目を瞑り、静かに静かに…………
あたりは静寂に包まれた。
ふっと、朔耶が目を開けた。
そして南東の方角を示す。
「あっちに何かいる」
「えっ?でも塔はあっちじゃなくてこっちですよ」
と伊織が南西の方角を指差した。
「なら私はあっちへ行くからお前らはそっちへ行けば良い。クルモン」
「クルぅ〜」
朔耶の頭に座っていたクルモンが突然飛び上がる。
「うわっ」
「何よこれ…………」
あの時のように、クルモンの額の模様が紅く光り始めた。
それは朔耶を包む。
そして、次の瞬間。朔耶の背中には
「羽根?」
漆黒の天使の羽根がついていた。
「じゃあな」
「えっ?ちょっと待って」
飛び立とうとした朔耶の服をヒカリが掴む。
「なんだ」
「あっちに何がいるの?」
「分からない。ただ、あいつがいるような気がする」
「あいつ?」
「デジモンカイザーだ」
その言葉を聞き、皆は驚いた。
「なんでそんなこと分かるの?」
「つか、本当にいるのか?」
「だから気がすると言っただろうが。確信はない。着いてきたければ着いてくれば良いし、
着いてきたくなければ着いてこなければ良い」
朔耶は飛び立った。
「あっ、ちょっと!」
大輔とブイモンは走り出す。
他は、パタモンとテイルモンとホークモンがアーマー進化し、伊織とアルマジモンはホークモンが
アーマー進化したホルスモン乗り、追いかけた。
「ちょっと、待ってくれよ!」
と、ブイモンもアーマー進化し後に続いた。
それから飛んで飛んで、海まで来た。
その沖に朔耶は降り立つ。
それと同時に羽は光となって消えていった。
それに続いて皆も降り立つ。
するとそこには、イービルリングで凶暴化したホエーモンがいた。
「なんでホエーモンがこんな沖にいるの………?」
「分からない。でも、早くイービルリングを壊さなきゃ」
攻撃をしようとするペガスモンを
「まぁ、待て」
と朔耶はとめた。
「でも、朔耶ちゃん」
「待てと言っているんだ」
朔耶はタケルを睨む。
そのホエーモンの陰からでてきたのは
「デジモン…カイザー!」
「白鳥朔耶。お前か、この頃デジモン達の間で噂になっているのは」
朔耶は何も答えず、デジモンカイザーを睨んだ。
「何やっても良いけど、調子に乗ると痛い目に会うよ」
「………馬鹿が。お前みたいな卑怯な愚者如きにやられてたまるか。
今お前が本当にこの場にいたら、今すぐ殴って病院送りにしているところだ」
それは本人ではなく、立体映像だった。
「口を慎め。馬鹿は貴様だろう、この虫けらが。まぁ、そんなことを言っていられるのも今のうちだ」
怒りを顔に浮かべ、デジモンカイザーは消えた。
「本当に、いた」
驚きを隠せず、大輔は言葉に出す。
「ただの立体映像だろうが。私が用があるのは本物の方だよ」
朔耶はそう言い捨て、そしてホエーモンに一歩一歩近づく。
頭にクルモンを乗せて。
「危ないですよ、朔耶さん!」
伊織の言葉も聞かず、朔耶は海に入りホエーモンのすぐ目の前で足を止める。
胸まで海水に浸かり、長い髪は水中に浮かんでいた。
皆が心配そうに見守る中、朔耶は暴れだそうとするホエーモンを撫でた。
「良い子だから、少し静かにしてて。すぐに解放してあげるから」
それはいつもの朔耶の口調と、雰囲気と、表情と、何もかもが違い選ばれし子供たちは驚きつつ朔耶を見ていた。
柔らかな優しい空気に包まれ、ホエーモンが静かになると朔耶は思いっきり息を吸い込み海の中に潜った。
そしてホエーモンの尾ひれについているイービルリングを素手で壊す。
その手は目映いほど光り輝いていた。
「またね〜」
ヒカリがホエーモンに手を振る。
朔耶は濡れた服の裾を絞っていた。
「何をしたの?それと、何でデジモンカイザーがいるのが分かったの?」
京が問う。
「知りたいのか」
「そりゃ、知りたいに決まってるじゃない」
朔耶は面倒くさそうにため息をつき、しょうがないといった感じで話し始めた。
「さっきも言ったが、クルモンは攻撃技が使えない。私を乗せて飛ぶことも
できないし、治癒能力があるわけでもない。この子は特別なんだ。この子は
私に色々な力を与えてくれるんだよ。あの羽や、今さっきのイービルリングを壊す力、デジモンを宥める力、
それと歌でデジモンを集める力。デジモンカイザーはただの勘だ。あーいう悪はなんとなく分かるんだよ。
クルモンが私に与えてくれる力はまだ他にもあるかもしれんし、もうこれだけかもしれん。まぁ、これだけで私は十分だけどな」
と朔耶は優しくクルモンを撫でた。
嬉しそうにクルモンは笑う。
「今までも今さっきみたいにやってきたの」
「あぁ。数が少ないときはあんなかんじだが、多いときは他の方法がある」
「どんなんだ―?」
「それはまた今度。そのようなことがあったときにな」
朔耶はそう言い、歩き出した。
「ちょっ!」
慌てて皆、朔耶を追いかける。
そこには、現代に繋がるテレビのようなものがあった。
「なんで分かったの?」
「見えた」
「視力良いのね」
朔耶はそれに何も反応も示さず、デジヴァイスを前にだした。
テレビの中に吸い込まれる。
皆もそれに続きテレビの中へと吸い込まれて、リアルワールドへと戻って行った。
「なんか、今日は朔耶ちゃんしか活躍してねぇな」
伸びをしながら大輔は元気良く言った。
「ねぇ、朔耶ちゃん。大丈夫なの?」
大輔を無視し、ヒカリは心配そうに朔耶に問う。
「何がだ」
無表情で朔耶は問い返した。
「デジモンカイザー、朔耶ちゃんのことを狙っているみたいだったじゃない」
「あぁ、あれか」というような顔をし、朔耶はくすりと笑った。
「良いではないか。あちらから出向いてくれるなんて、好都合だ。私は良いぞ」
朔耶は微笑した。
「そんな楽しそうに言わないでよ」
「別に楽しくなんかない。ただ、あいつを一発殴らないと腹の虫が納まらないんだ」
楽しくないと言っていながら、その顔はヒカリの言うとおり少し楽しそうだ。
そう言ってから、朔耶は一つくしゃみをした。
「濡れたままだったからですよ」
伊織は鞄から少し大きめのタオルを渡した。
「いや、大丈夫だ。なんとかなる」
「駄目よ」
ヒカリから、いつもとは違うオーラが漂う。
「伊織君のそのタオル使って拭いて、そして私の家でシャワー浴びていきなさい!」
「ヒ、ヒカリちゃん……」
「まるでお母さんみたいね」
ヒカリは伊織からタオルを受け取り、ごしごし朔耶の頭を拭いた。
「な、何をする。わ、私に触れるな。家は近い。大丈夫だ」
「ダメ!朔耶ちゃん、そのままにしておきそうなんだもん。風邪ひいたらどうするの。ほら、服も……」
「大丈夫だ」
「ダメ!」
「大丈夫だ」
「ダメ!」
この二つの言葉が何回も何回も言い交わされる。
しかしそれは
「行くクルぅ〜」
というクルモンの言葉で
「ま、まぁクルモンがそう言うなら今日くらい」
と朔耶が先におれたのだった。
「じゃあ、また月曜日」
「おぉ!またね、ヒカリちゃん。朔耶ちゃん」
「ばいば〜い」
「さようなら」
「またね」
何もないよりましだろうと、朔耶は無理やり大輔のベストを着させられ、
嫌々着つつ、その姿のまま、ヒカリに連れられヒカリの家に行くことになった。
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