09 遭遇



休日なのに、何故か学校前には子供が10人近くいる。
しかも、小学生以外も混ざっていて
彼らを知らない人達が見たら
「何の団体だろう・・・?」と疑問を持つ人もいるだろう。

その団体に、もう3名加わった。


「よぉ!みんな早いな〜」
「おはようございます」
「…………帰る」
上から順に、太一・ヒカリ・朔耶。
皆を見てすぐに回れ右をした朔耶の腕を、ヒカリが掴んで帰るのを止めた。
「やめろ、掴むな!昔の選ばれし子供に会えるとは聞いたが、こんな大勢いるとは聞いてないぞ!」
「あら。選ばれし子供が1人や2人だけだと思ったの?」
そのヒカリの言葉に「うっ………」と朔耶は言葉を詰まらせた。
ヒカリの言葉が正論だったからだ。
「兎に角、人ごみは嫌いだ!」
「ただ人がたくさんいるだけでしょう」
「黙れ!」
「その我が儘口がとまるまで黙らないわよ!」

言い合う二人を見て、少し引き攣った笑みを浮かべながら皆は口々に感想を述べる。
「タケル………」
「何、お兄ちゃん」
「お前が言ってた朔耶ちゃん像と違くないか?」
「そうかな?」
「そうだ。お前は少し影があって、取っ付き難いとか言ってたじゃないか」
「う〜ん………変わってきたんだよ、少しずつ」
「はぁ?」
疑問符をあげるヤマトを無視し、タケルは朔耶を見て満足そうに微笑んだ。

「ヒカリちゃんキャラ変わっちゃってるわね」
苦笑しながら空が言うと
「そうかぁ?」
能天気に太一が返す。
「少し変わった子だね」
「そうですね」
「で、今日はどこ行くんだっけ?」
「忘れないで下さいよ。朔耶さんとの交流を目的としたピクニックをしにDWに行くんです。
だから僕はこんな物を持っているんじゃないですか」
丈に光子郎は持っていた大きな袋を見せた。
中身は母特製のお弁当。
「あぁ、そうだったね」
申し訳なさそうに丈は笑った。



「お前らっ、5人でも多人数なのに10人とは何事だ!そんな多人数で私に何をするつもりだ」
「その私達が敵のような言い方やめてくれない?」
「私の嫌いなものに係わる奴らはみんな敵だ!」
「我が儘」
「うるさい!」
言い合いはまだ続いていた。
続くどころかヒートアップして終わる気配もない。
そんな二人の間に
「は―い。ストップストップ。喧嘩はここまでぇ」
「なっ………」
「早く入りましょうよ。喧嘩はDWに行ってからにして下さい」
京と伊織が入り、止めた。
怪訝な顔をしていた朔耶も『DW』という単語を聞いて表情が一変。
「DWに行くなら早く言え。そ、それなら行っても良い」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、少し威張った言い方をする朔耶に
「可愛いな」とヒカリは一人、くすっと笑った。


「んじゃ、朔耶ちゃんも納得したことだし。行くとすっか」
笑顔で太一が後ろから朔耶の両肩に手を置いた。
「なっ。この、気安く触るな」
「では、みんな。こ〜っそりだぞ」
「ちょっと、やめろ。は〜な〜せ〜」
朔耶の肩を押しながら進む太一に、朔耶は反抗するように体をジタバタさせる。
しかし、朔耶より体が大きく体力もありそれに男である太一にそんなもの効くはずがない。


「休日の学校か」
「わくわくするわね」
「見つからなければ良いけど………」
「そうですね」
上から順に、ヤマト・空・丈・光子郎。
前者二人は楽しそうだが、後者二人は不安そうだ。




朔耶の体が、太一によって学校の入り口まで動かされたときだった。
朔耶の表情が一変したことに、太一は気付く。
その顔は怒りなんてものじゃない。
今にも人を殺してしまいそうな、殺意ある表情だ。
「どうした朔耶ちゃん」
何も言わずに、全身の力を込めて太一の手から逃れると、朔耶は走り出した。
さっき来た道を10メートルほど戻る。

そして急ブレーキをかけて、一人の青年の前で止まった。
「何か用?」
「何か用?じゃない。今すぐ死ね、この人殺しが」
「は?君何言ってんの?人殺ししてたら、今頃俺は刑務所に行ってるよ。馬ぁ〜鹿」
意地悪く青年は笑った。
青年はまるで空気のようにふわふわしている印象を受ける。
朔耶は強く唇を噛んだ。
「馬鹿はお前だ。忘れたのか。自分の犯した罪を」
「は?だから、俺は犯罪者じゃねぇって。ただのフリーター」
「お前の頭の中身は駝鳥ほどの脳味噌か。殺しただろう。白鳥綾十を………私の兄を」
青年が「う〜ん…………」と考える。
朔耶は今にも殴りだしそうな手を硬く握った。


「朔耶ちゃん!」
遅れて現&元選ばれし子供達が朔耶の許まで来る。
ヒカリが朔耶の肩を掴んだ。
「触るな」
朔耶はヒカリを睨む。
その威圧感に
「ごめん」
とヒカリは掴んだ肩を離して一歩後退りした。


恐い…………
いつもの朔耶ちゃんじゃない。
何なの?
この男の人は誰なの?
言葉が出ず、ヒカリは心の中で朔耶に問うた。







  










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