初めてそいつの存在を知ったのは 少し前の、つまらない授業中。 その日は日が良く照っていて、暖かい日だった。 授業がつまらなくて面倒くさくて、少しでも気を紛らそうと窓の外を見てみた。 こういうとき、窓際の席で良かったと思う。 校庭では、女子がソフトボールをしていた。 体育着からして一年。 慣れてないからしょうがないのだろうけど、どいつも下手だ。 こっちもつまらないな・・・それなら授業を聞いていた方が幾分良いかと思い、 目線を黒板へと向けようとした瞬間 ホームランを打った奴がいた。 綺麗なフォームでそいつは少しゆっくりと一塁、二塁、三塁と進んでいき・・・・・・・・・ そしてホームベース蹴った。 それと同時に同じチームの女子達が寄ってきて、順々に手を叩いていく。 何故か、目が離せなかった。 そいつから。 顔は良く分からない。 肩より長い黒髪を、二つ縛りにしている。 何が俺を惹きつけるのか分からない。 さっきのホームラン?綺麗なフォーム? それもあると思う。 でも、何か・・・何かが俺を惹きつけるんだ。 それが何だか、分からない。       第十一楽章   授業が終わり、礼をしてから俺はまた着席して、外を見た。 まだ一年女子がいる。 今は片づけをしているようだ。 あいつは直ぐに見つけられた。 こんな遠くからなのに、似たような奴だっているのに、分かる。 何故だ。 疑問と戦いながら眺めていると 「土浦っ!」 同じクラスで同じサッカー部の奴が俺の名を呼んで肩を叩いてきた。 「なんだよ」 あいつから目を離して、そいつを視界にいれる。 そいつは俺の肩に体重をかけるように手を置き、外を見た。 「一体何見てたんだよ。もしかしてちゃんか?」 「?誰だ、そいつ?」 初めて聞いた名前。 そいつは俺が首を傾げたことに驚いたらしく 「知らねぇーのか!?」 大袈裟に声を張り上げた。 少しムカついたから、機嫌が悪いのを表に出してみた。 「あぁ、知らねぇーよ」 「お前なぁー、遅れてるよ!ちゃんはな、今年入った一年生の中で一番可愛いって有名な子だぞ」 「あっそ」 興味ない。 そんな芸能人を見てキャーキャー言っているようなこと。 馬鹿らしい。 話を聞くのが面倒になってきた、と思っていたらちょうど担任が入ってきて 帰りのホームルームをするために、そいつはまだ何か言いたそうだったが、渋々 席に着いた。 面倒くさい。 そんな人と同じこと。 でも、気になる。 可愛いとか、そんな外見の理由ではなく・・・・・・なんだ? 何か、惹きつけられるものがあるんだ。 それがなんだかは、ホームルームが終わるまでに答えを出すことは出来なかった。 答えが出ず、少しモヤモヤした何かを胸に抱えながら、俺は部活へ行った。 準備運動をし、ボールを蹴り始めると不思議な事に、モヤモヤはどこかへ消えていた。 そしてそれは、先輩に交じって試合をしているときだった。 「土浦!」 俺目掛けて蹴られたボールは、俺の遥か上を通ってゴールも越えていった。 「飛ばしすぎだっつーの!」 「悪ぃ!」 俺は急いでそのボールを追いかけた。 人に当たっていたり、ガラスを割ったりしてなければ良いけど・・・・・・ と少しの不安を持ちながら。 俺の頭を越え、ゴールを越え、そのボールは 女子の手の中に収まった。 その女子は飛んできたボールをジャンプして取った。 自分よりも体の半分くらい高いところに飛んでいたボールを。 驚いた。 でも、それよりももっと驚いた。 「すいません」 その女子の元へ駆けていくと、女子はボールから俺の方へと顔を向けた。 それは、あの『』という一年の女子だった。 消えたはずのモヤモヤがまた出てくる。 消えたんじゃなかったんだ。隠れていたんだ。 そいつは俺を見てサッカー部員だということを確認すると、笑みを浮かべて 「はい、どうぞ」 俺にボールを差し出した。 ドクン、と大きく胸が高鳴った。 なんだ、これ・・・・・・・・・ 「あぁ、ありがとうな」 俺は自分が緊張していることに気がつきながらも、冷静を装いながら差し出されたボールを受け取った・・・・・・いや、受け取ろうとした。 そいつがボールを放してくれなかったから。 そいつの視線の先は、俺の手にいっていた。 何故手を見るんだ? と疑問に思いながらも俺は何故か何も言わず、そのまま二人でボールをもった状態で しばしいた。 そしてやっと、ボールが俺の手だけに収まると、そいつはとても嬉しそうに でもどこか切なそうに 「伴奏者の手・・・・・・」 呟いた。 「えっ?」 今、なんて・・・・・・・・・ 「あっ、何でもないです。ピアノ、頑張って下さいね!」 誰も知りえない俺の秘密を発すると、そいつは笑顔で走り去っていった。 「・・・・・・何で知ってんだよ」 伴奏者の手。 確かにあいつはそう言った。 手だけで判断したのか? 俺は片手にボールを抱え、もう片方の手を見つめながら走った。 今度会ったら、話しかけてみようか。 何故知っているのか。 問いただしてみようか。 俺には聞く権利があるのだから。 この気持ちに 名をつけようとはまだ思わない。 ただ、また話せるかもしれないという小さな期待に 胸が膨らんだのは 事実として認めるしかないんだ。   ++++++++++++++++++ 2年生の彼。 土浦です。土浦をでしゃばらせてみました☆ 恋・・・・・・っていうより、ピアノ? まぁ、前から書きたいシーン(サッカーボールの)書けたので良かった♪ 後、主要メンバーで関わり持たせてない人は3人・・・・・・志水・冬海・金澤! あっ、王崎先輩・・・・・・は良いや(おぃ!)
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