今、私は音楽科1年生の教室の前にいます。 前のように、提出物を届けるわけではないです。 ちょっと、用があって。 1年生のコンクール参加者の二人に。 視線を感じる。 気にしちゃ駄目。 この扉を開けると、今度は真正面から視線を浴びることになるだろうけど。 私は意を決して、その扉を開いた。  第十二楽章 ザワザワと、音楽科一年がザワついているのは、普通科という異邦者がいる・・・・・・ という理由もあるが、その異邦者が『』だから・・・という方が理由としては妥当だろう。 普通科からのセレクション参加者 そして、男子生徒は見惚れ、女子生徒は羨む容姿。 チェリー色の唇に、程好く肉と筋肉がついた四肢、ニキビすら一つも見当たらない桃色の肌、 ビューラーせずとも心なしかカールしている長い睫毛・・・・・・ それらが彼らを惹き付けていた。 は緊張し、胸に手を当て、大きく一回深呼吸をし 1年A組の扉を開いた。 「失礼します。あの、志水桂一君いらっしゃいますか?」 扉を開けると共に・・・・・・声を発すると共に 教室内はざわめき始める。 そのざわめきの中で、志水はマイペースに机にうつ伏して寝ていた。 クラスメイトに起こされ、寝ぼけ眼を擦り 指差された方・・・つまりの方を見ると、立ち上がり、のっそりと歩き 「何でしょうか」 の元までやってきた。 「ごめんね、起こしちゃって」 「いえ」 「あのね、お願いがあるんだけど・・・・・・」 「お願い、ですか?」 「うん。あのね・・・あっ!」 お願いする事を言葉にして発しようとした瞬間 の瞳はある人物を捕らえ 「笙子ちゃん!」 その人物を呼び止めた。 呼び止められた冬海は、一瞬肩をビクつかせ、ゆっくりと振り返り を瞳に入れるとホッとしたように、そして嬉しそうに微笑んだ。 「ちゃん・・・・・・どうしたの?」 「あのね、二人にお願いがあるの」 「お願い?」 志水と冬海は小首を傾げた。 はうん、と頷く。 通りすぎていく人が皆、三人を横目にしていった。 願うように、胸の前で手を組む。 そして 「伴奏者を紹介して欲しいの!」 それはもう真剣な表情が、二人の目に映った。 今にも二人の肩を掴んできそうだ。 がその願いを発した瞬間 二人ではなく、その言葉を聞いていた者達が 「俺俺!俺、しても良いよ」 「お前ピアノ専攻じゃないだろ!俺は、ちゃんとピアノ専攻だから!」 「伴奏じゃなくて、この子目当ての男子は黙ってなさい!」 「そうよ。選ぶなら、やる気のある私を!」 波のように押し寄せてきて、小さなパニックになった。 「えっ・・・と。どうしよう・・・」 「大変な事になりましたね・・・・・・」 「えっ、あの、えっ・・・・・・・・・」 このパニックを回避するために、が発した言葉に 「えっと、じゃあエドワード・エルガーの愛の挨拶を弾ける人!」 一瞬辺りはしんと静まり返り、次の瞬間また 「弾ける、弾けます!」 「俺だって」 「私だって、弾けるに決まってるでしょ」 小さなパニックとなってしまったので 「女の子で」 と付け足した。 それにより、パニックを作っていた人間の半数が姿を消した。 そこに残った音楽科一年の女子生徒達は、志水と冬海を退かしてを囲む。 「で、どうやって決めるの?」 「オーディションとかする?」 一年生でセレクションの舞台に立てる機会が得られるチャンスだからか 彼女達に意気込みは相当なものだ。 はどうしようかと考えた挙句 オーディションとかは自分の好みに偏ってしまって不平等だし もっと言ってしまうと面倒くさいので 「じゃあ、平等にジャンケンで」 「「「ジャンケン?」」」 「はい。運試しですよ、運試し。行きますよ。せーの、じゃんけん」 「ちょ、」 「まってよ」 「ぽん!」 焦りながらも、彼女達は手を出し、何回もあいこになりながらも 漸く 「か、勝った・・・!」 決まったようだ。 「じゃあ、これから宜しくお願いします」 「えぇ、こちらこそ」 お互い自己紹介をし合って、何時練習するかを簡単に決め そして伴奏者の子は自分のクラスへと帰っていった。 ちなみにB組。冬海と同じクラスだ。 その光景をポカンとして見ていた志水と冬海だが やっと終わり、志水は欠伸を一つ、冬海は安堵の息を吐いた。 「ごめんね。頼んだくせにこういった結果になっちゃって」 「ううん。決まって良かったね」 「愛の挨拶を演奏するんですね」 「うん。何にして良いか分からなかったんだけど、同じトランペットの火原先輩に色々とアドバイスを貰ってね」 「そうなんだ・・・楽しみ。ちゃんの演奏」 「私も笙子ちゃんと志水君の演奏、すっごく楽しみだよ」 そんな会話を交わしていた時に やっと三人でまともに話せていたのに、それを邪魔するかのように お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り始めた。 「あっ、じゃあ、私行くね。今日はありがとう。じゃあね」 「うん、ばいばい」 「さようなら」 お互い手を振り合って 二人は笑顔で走り去っていくの後ろ姿を見送った。 「・・・・・・良い子だよね、ちゃん。明るくて、羨ましいな」 「そうですね。とっても、可愛いと思います」 志水の言葉は、ちょっとした問題発言だったが それを聞いていたのが冬海だったので 別に驚く事もなく、二人も互いの教室へと戻っていき 本日の、音楽科で起きた小さなパニックは本当の終わりを迎えた。   ++++++++++++++++++ 主要キャラ全員と関わらせよう! ・・・・・・ということで、今回は音楽科1年生です。 次書く方も決まっております。 でも、さ 関わらせてると言っても・・・柚木と月森はあんま関わってないです。 月森は第一セレクションでガッ!とくるのですが、柚木・・・・・・ あっ、柚木は合宿であるきっかけを作る重要人物です! うん。大丈夫だ。ちゃんと関わらせてあげられる。平等じゃないけど・・・・・・
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