首元に光る指輪。
持ってきたのは良いけれど、付けてみたのは良いけれど
やっぱり・・・・・・駄目。
これを付けて、ステージにはのぼれない。
そう思ったから、私はそれを外して、手の中に収めた。
ギュッと握ると記憶が溢れ出しそうで・・・・・・
慌てて私は、握る力を緩めた。
第十五楽章
「あの、香穂子先輩」
「ん?どうしたの、ちゃん」
「私の演奏が終わるまで、これ持っていてもらえますか?」
外したネックレスを、は香穂子に差し出した。
香穂子は反射的に手を差し出し、それを受け取る。
シルバーの鎖に、輝くシルバーの指輪。
それにはめ込まれている、美しく輝く小さな石。
「ネックレス?」
「はい。首につけていても良いので、持っていてください」
「えっ、でもちゃん・・・・・・」
「何、それ?指輪?」
覗いてきた火原に、は笑む。
その微笑は悲しげで切なげで。
「はい」
頷いたその姿が弱々しくて、不安になった。
「どうしたの?大丈夫?」
「あっ、はい。ちょっと、失敗しちゃったらどうしようって心配で・・・・・・」
「大丈夫だよ、ちゃんなら!何時も通りに吹けば心配ないって!」
「ありがとうございます。・・・・・・そうですね。何時も通り、楽しみます。和樹先輩との練習を思いだしたりして」
悲しみも切なさも弱々しさもなくなった、ただただ美しく可愛らしいその微笑と言葉に、
火原はドキッとして顔を赤らめた。
その表情を見て香穂子はくすりと小さく笑った。
そして、辺りを見回して、ある事に気付き、
「あれ?」
小首を傾げた。
香穂子が気づいた事は、自分の伴奏者がいないということだった。
その事を聞き、火原とは同時に驚きの声をあげた。
「どうするんですか、香穂子先輩!」
「そうだよ。もう始まっちゃうよ」
一番の志水が、ステージに出て、演奏をし始めた。
二番は、三番は火原。香穂子は五番。
冬海の伴奏者の子との伴奏者の子が、香穂子の伴奏者である庄司は今日ちゃんと学校に来ていることを告げた。
しばし、志水の演奏に聴き入って・・・・・・・・・
「やっぱり私、ちょっと探してきます」
演奏が終わる頃、そう言って、香穂子は庄司を探しに行ってしまった。
「え?日野ちゃん!?」
「香穂子先輩・・・・・・面倒なことが起こらなければ良いけど」
「えっ?」
の呟きに疑問符をあげ、の方を向く。
だが、そこにはいなく、ステージへと歩いていってしまっていた。
『普通科1年3組 エドワード・エルガー作曲 “愛の挨拶”』
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セレクションが始まりました!
エドワード・エルガーの愛の挨拶
有名なので、機会があったら聴いて下さると嬉しいです。
曲も色々と聞いて、合ったものを選んでいるので・・・・・・
非常に悩みます、曲選び(汗)
火原がでしゃばり気味ですが、良い所を持っていくのは火原ではありません(苦笑)