小さい頃に聞いたコンクールの話。
それがもう直ぐ始まる……!

どんな形でも良いからそのコンクールに関わりたい、関われたら良いな……なんて。
ちょっとだけ、そう夢見てた。



   第二楽章



「あっ、忘れてた!」

はいきなり立ち上がり、大きな声をあげた。
それは昼休みももうすぐ終わりという時。

昼休みの終わりという時間は何故かうるささがピークに達す時間である。
それなのにの声に反応を示した者は、有香と姫夏以外にも少なくはなかった(大半が男子だが)。

「何を忘れてたん?」
そう冷静に疑問符をあげたのは有香だ。
「現文の課題!昨日書き終わんなくて今日出すって言ってあったの!」
は慌てて自分の机からファイルを取り出し、一枚の紙を出した。
「着いていこっか?」
「良いよ、授業遅れちゃうかもしれないし。ありがと」
姫夏の申し出を申し訳なさそうに断り、は走り出した。
「んじゃ、もし遅れた場合は先生に言っとくから」
手を振りながら有香が言ったのに対し、は走りながら後ろを向き「ありがと〜」
と言った。
そして、教室を後にし……ようとしたところで、二.三歩後戻りし
「次何だっけ?」
教室のドアから顔だけ覗かせる。
「古典」
「ありがと!」
返答を聞くと、直ぐにまたは走り出した。








「えぇ〜!先生もう言っちゃったんですか!?まだ5分あるのに……」
普通の女子なら走れば少しは息の切れる距離なのに全く息切れせず、担任に対しては言った。
「あぁ。次は音楽科で授業だからな」
「そうですか〜……」
「机の上に置いておけば良いだろ」
担任の提案に
「駄目ですよ!提出日を遅らせていただいたんですから!」
断固反対した。

担任は「しょうがない奴だな」と息を吐き
「じゃあ追いかけろ。今ならまだ間に合うだろ」
と言った。

その次の瞬間には

「ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げ「失礼しました」と、は職員室を出、また走り出していた。





「音楽科か〜……何で音楽棟と普通棟ってこんなに離れてるんだろ?だから普通科と音楽科の交流がないのよ〜」
は走りながらぼやいた。








そして、やっとのこと音楽棟に着いたのは良いが、はある問題点に気付いた。
「どうしよ〜……先生何組で授業が分からないよ〜」
途中で出会わなかったため、国語教師は音楽棟にいるということになる。
は一階一階音楽棟の隅から隅まで見つけなければならなくなってしまったのだ。
担任にどの組で授業をするのか聞くのを忘れてしまったがために。



さっき、がぼやいていたように、普通科と音楽科の交流はほとんどない。
だからだろう、普通科と音楽科の壁は厚く高い。
音楽科の生徒がに向ける視線がそれを物語っている。
異質な者を見る目。
確実に自分達と普通科の生徒であるを区別している。
自分達の立場を上に立たせながら。

だから、は誰かに聞こうとも聞くことが出来ずにひたすら早歩きをし、見つけるしかなかった。






「一階にはいない……次は二階か〜………」
とぼとぼと歩くに近付く


「うわぁ!遅れちゃうよ〜!!」
「そんな慌てなくとも大丈夫だよ」
二つの影。



運悪く、と二つの影の片方が
「うわっ!!」
「きゃっ!」
角でぶつかってしまった。


「ごめん!大丈夫!?」
ぶつかってきた彼はあまり痛い思いをすることもなかった。
どちらかというとの方が痛かっただろう。
ちょうど彼の胸の辺りに激突し、その反動で尻餅をついたのだから。

彼は慌てて手を差し出す。
もう片方の彼はやっと追いたようだ。

「あっ、はい……大丈夫、です」
そうは言っているが、顔は痛さを物語っている。
鼻を擦りながら、は彼の手を取った。

「ごめんね〜。俺がちゃんと見てなかったから」
「あっ、いえ。私の方こそ考え事をしていたので、すいません」
が立ち上がると、彼は手を顔の前で合わせ、頭を下げた。
それに対しては胸の前で手を振る。

「火原が走ってたのが悪いんだよ」
もう片方の彼は微笑みながらそう言った。
「大丈夫?」
「大丈夫です。すいません、ご迷惑おかけして……」
「そんな謝んないでよ!柚木の言うとおり走ってた俺が悪いんだから(つかこの子めちゃくちゃ可愛い〜)」
彼、火原は顔を赤に染めながらの言葉を慌てて否定した。
そして「ん?」との制服に目を止め
「普通科の子だ」
制服を指差した。
「今頃気付いたの?」
もう片方の彼、柚木は苦笑した。

「あっ、はい。普通科1年3組 です」
は少しパニくっているようで、別に問われたわけでもないのに火原の「普通科の子だ」という言葉に反応しし、勝手に自己紹介をして頭を下げた。
「あっ、俺3年B組 火原和樹!よろしくね」
頭を掻き、テレながら火原も慌てて自己紹介をした。
「んでこっちが……」
「同じく3年B組の柚木梓馬です。よろしくね、さん」
「あの、その…はい!こちらこそよろしくお願いします!」
勢い余って、または頭を下げた。
結果、ストレートロングの髪の毛が少し乱れた。



「で、ちゃん……う〜ん、何か言い難いな〜………」
「すいません、こんな苗字で………」
「いや、別にそういう訳じゃ……じゃあちゃん!」
「考えたのに普通だね」
微笑を絶やさずに、的確にさらりとつっ込んだ柚木に
「うるさい!」
火原は恥ずかしそうに怒鳴った。


「別に呼び方は何でも良いですよ」
二人のやり取りを見て、笑い出したを見、火原はまた顔を赤らめた。
「じゃあちゃんね!俺のことも何でも良いよ〜。和樹先輩とか?」
火原は冗談っぽく言ったのだが
「はい、和樹先輩」
はそれを間に受け、ふわりと微笑み、その呼び方を口にした。
鼓動が早まるのを火原は感じ、照れ隠しのためか、言い出そうとしていた話題をふった。
「つかさ、ちゃんは何で音楽科にいるの?」
「もしかしてこれかな?」
柚木はさっきぶつかったことで手から離してしまった国語の課題をに見せた。
「あっ、すいません!ありがとうございます」
はそれを受け取り、恥ずかしそうに頭を下げた。
「もしかして木内先生を探しているのかい?」
木内先生とは国語の先生。
が探している先生のことだ。
「そうですけど………中、見ました?」
頷いてから、恐る恐るは柚木に問った。
「綺麗な字だね」
にこりと笑った柚木に、は恥ずかしくなるだけで、何かを言ったりすることはしなかった。

「俺達の授業、次そうじゃない?」
「そうだね。じゃあさん、連れて行ってあげるよ」
「ありがとうございます!」

微笑むに、二人も笑みを返し、を挟んで三人は横に並び、歩き始めた。











心の中、柚木は呟いた。



・・・・・・・・・。
もしかして・・・・・・いや、でも。




憶測は憶測のまま。
ただ疑問だけが頭を巡り、最終的に考えるのをやめた。




     
    



























 +++++++++++

3-Bコンビ大好きですvv
この2人は書きやすいですね☆
やっとコルダキャラが出てきたぁ〜。
夢らしくなってきた……でしょうか?



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