第三楽章 無事、課題を出すことが出来(「ここまで持ってこなくても放課後でも良かったんだぞ」と先生はぼやいていた) は教室へと向かっていた。 しかし、足取りは行きと違ってゆったりだ。 授業の始まりを告げるチャイムが鳴ったというのに。 外を見ながら歩き、柵に片手を置いて、空を見上げ呟いた。 「音楽科か………良いな、和樹先輩と柚木先輩は。コンクールに出られる可能性があるんだもんな〜………」 腰を折って、柵に置いた両手に顎を乗せる。 羨ましそうに発されたその言葉を〈それ〉はしっかりと聞いていた。 『私に気付けばあなたも出られるんですのよ、コンクールに』 に対して発した言葉は 「!」 しっかりとの耳に届いた。 〈それ〉はに自分の声が届いたことに感激し、叫んだ。 『ここ、ここですわよ!私はここにいます!』 は首を傾げながら声の方を見た。 それはまるで空から聞こえてくるようで、不思議で。 『あなた、私が見えるのね!?素晴らしいですわ!!』 〈それ〉を目にしたは、驚きで目を見開き、言葉を失ってしまった。 それもそのはず。 普通の人間だったらのような反応をするだろう。 〈それ〉は小さくて、まるで妖精のようだったから。 『私の名はルル』 それは金髪のふんわりとした長い髪を耳に掛け、まるで神に祈るかのように手を組み、 感激の余り潤んだ瞳をに向けた。 『やっと私の存在を分かってくれる方が見つかりましたわ………あっちはまだ見つかっていないようだから、あなたが6人目ですわよ! さぁ、あなたのお名前を教えてください!……って、あら?どこに行ってしまわれたの!?ねぇ!!』 その時、は走っていた。 何を考えることもなく、ただ足が動くがままに、ひたすら。 頭は混乱し、ぐちゃぐちゃでズキズキしている。 とにかくあの場所から離れなければ、と本能でそう思ったは走り出したのだ。 ガラッと勢い良く教室のドアを開く。 その音で、クラス全員の視線がに集まった。 それには気にしないどころか気付いてさえいない。 その場にへなへなと座り込み、大きく息を吐いた。 「さん、大丈夫?顔色悪いわよ」 先生が来て、心配そうにの顔を覗く。 生徒達も心配そうにを見ている中には、椅子に立って心配そうにを見る者もいる。 「あっ、大丈夫……です」 頭を押さえながらは立ち上がったが、すぐにふらふらと元の体勢に戻ってしまった。 「大丈夫、!?」 「どしたんだよ!?」 慌てて姫夏と有香が駆け寄ってきた。 口々に皆、に声を掛けるが、それは頭の中で木霊し、もっとの頭を痛める原因となっていた。 さっきの何なの!? コンクール?妖精?…………まさかっ!? もう一度立ち上がろうとしたは、有香の肩に〈それ〉が座っていることに気づき 手の甲を目に当て、ふらふら〜……とその場へと倒れ込んでしまった。 『見つけたわ』 〈それ〉は勝ち誇った笑みを浮かべながら〈それ〉に報告をした。 『本当なのだ!?』 『えぇ。でも私に驚いて逃げて、倒れて帰ってしまいましたの。学校から出られてしまっては何も出来ないでしょう? まだお名前を聞いてませんのに……』 〈それ〉は頬に手を当て、ため息をついた。 『ところで、あなたはもうお探しになりましたの?』 〈それ〉は『うっ……』と小さく呻き声をあげ 『ま、まだなのだ………』 悔しそうに言葉を発した。 『コンクールの参加者発表はもうすぐですのよ!?血を吐くまでお探しになりなさい!』 〈それ〉は厳しい言葉を〈それ〉にぶつけ、〈それ〉は力なく 『はいなのだ……』 呟いた。 一方、(の家)はと言うと―――― 「ただいま〜」 青年は玄関のドアを開け、靴を脱ぎ始めた。 その後ろからは、凄い勢いで廊下を走ってくる足音。 「兄貴!」 走ってきた二人は同時に急ブレーキをかけ、青年を呼んだ。 その表情、声色は「緊急事態!」と告げていることに青年は気づいた。 「どうしたんだよ一体」 「が……が!」 その名を聞くと一瞬にして、青年の表情が一変した。 「がどうしたんだ!?」 「分からねぇ。でも、父さんが言うには、学校で倒れたって」 「倒れた!?」 「凄く顔色が悪くて頭を押さえてたって、父さん言ってた」 「お前達はに会ってないのか」 「だって、部屋に鍵かけてんだぜ?入れるわけねぇだろ!」 「……とにかく行くぞ!」 青年を先頭に、男三人はの部屋に向かうべく、階段を上がり始めた。 「何で倒れたんだ?朝はあんな元気だったじゃないか」 「分からねぇよ。それが分かったらこんな慌ててねぇって」 「もしかして……苛めとか!?」 その言葉に他の二人は反応を示す。 「ば、馬鹿言うな。が苛めに遭うわけないだろ!」 「いや、分からねぇぜ、兄貴。の可愛さを妬む女がを苛めていたっていうのもありえないとは言い切れねぇ」 「そうだな………」 三人同時に腕を組み「うーん」と考えながら、の部屋の前へと立った。 「で、比呂兄、どうすんのさ」 「う〜ん………どうするか」 「何だよ!考えてなかったんかよ!」 「しょうがないだろ!帰ってきて直ぐに良い案なんて浮かばないんだよ!そういうお前はどうなんだ!?」 「それは………」 「ここで喧嘩してる場合じゃないだろ!」 喧嘩を始めそうになった兄二人を弟は怒鳴った。 部屋の中では―――――― 「妖精?コンクール?もしかして姫夏の言ってたあの………なわけないよね。 でも、じゃあアレは何なの?コンクールに出られるとか何とか言ってたけど……」 昼間のことを思い出し、布団の中でぶつぶつ言っていた………のだが。 耳に入ってくる雑音、怒鳴り声。 気にしないようにしてたが、どうやらそうもいかなくなってきたようで、は 布団から這い出て、鍵を開け、勢い良くドアを開けた。 「お兄ちゃん達うるさい!!」 その一声で一瞬にして彼らは黙った。 そしてを見、口々に「大丈夫か?」「何があった」「俺に何でも言ってみろ」と言い始める。 大分良くなってきたものの、まだ万全の体調ではないは、頭がズキズキし出すのを感じ、頭を押さえた。 それに気づき、彼らは言葉を発すのをやめる。 「大丈夫か……」 「うん、大丈夫よ」 「医者行くか?」 「大丈夫だって」 「学校で何があったんだ」 「……お兄ちゃん達には関係ないことよ。心配しないで。じゃあ、おやすみなさい」 そう扉を閉めたの表情は隠し事をしている顔だった。 彼らはそれに気づき、顔を見合わせ 「「「苛めなのかぁっ!!!」」」 声を上げた。 「苛めじゃないって………」 否定しにまた布団から出る気にもなれず、は布団の中で呟いた。 「しょうがない。明日、アレを探してみよう」 疑問が一杯の頭を整理するために、は決心した。 でも、一番は 「本当にコンクールに出られるの?」 この期待を信じたかったのだ。 例えそれを叶えてくれるものが、人間じゃないにしても。 人間じゃないからこそ叶えてくれるのかもと、は思い、瞳を閉じた。  +++++++++++       ルル(オリキャラ)とご対面です! お兄ちゃんのtalkが多いですね(汗) お兄ちゃんはいっぱい出しますよ! 重要な人物なので……けっこぉ。     ちなみにルルの一人称は「わたくし」です。
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