2日目も、もうすぐ終わる。
は今日の午後、土浦に数学を教えてもらう約束をしたので
連休中の宿題だと出されたプリントとノートと筆記用具を持って、土浦のいる部屋のドアをノックし・・・・・・ようとしたら
声をかけられた。
「あれ、ちゃん!」
「どうしたの?」
「香穂子先輩に火原先輩。お二人こそどうしたんですか?」
「あっ、ちゃんも食べる?」
「え?」
視線を下げて、火原の腕に抱えられている大量の食糧に気付いた。
「プリンが食べたいです」
「あるよ!普通のといちごが」
笑顔に笑顔を返して。
火原は扉を開いて、二人を招きいれた。
第十一楽章
「で、これをさっきの公式に当てはめるんだ」
「あっ、出来た!分かると簡単なんですね。数Tの方はどうにかなるんですけど、数Aは少し苦手で」
「あぁ、そういうやつ多いよな」
問題が解けたことに笑んで、は次の問題に取り掛かった。
志水はその隣りで本を読んでいて、香穂子はベッドに座ってプリンを食べている。
火原はに分かりやすく数学を教えられる土浦を、少し羨ましそうに見ていた。
「1年生大変ね。宿題が出るなんて」
「んー・・・でも、そこまで量はないですし。今日中には無理かもしれないけど、明日までには終わりますよ」
そう言ってカリカリとシャーペンを動かしていく。
次の問題は聞かなくても分かるようで、動かす手はスムーズだ。
武道をしていることもあって、の集中力は人並み以上のものだった。
どんどんと問題を解いていき、周りの声さえ聞こえていない状態。
頭の中は数学の公式でいっぱい。
だから、土浦と火原が寝る場所の言い合いになって枕を引っ張り、その勢いで火原が
香穂子に覆い被さってしまったことにも
香穂子が駆けて行ってしまった事さえ気付かず、シャーペンを動かし続けていた。
「出来た!土浦先輩、ここってこれで良いんですか?」
解いたものを差し出すへ土浦は怪訝な表情を向ける。
はなぜそのような表情をされなければいけないのか分からず、きょとんと小首を傾げた。
「どうなさったんですか?」
「いや、何でもない。えーと、これな」
志水も全く反応を示さなかったし、きっともさっきのことなど視界にも耳にも入っておらず、
問題に集中していたのだろうと土浦は判断し、差し出されたノートに解かれた問題に目を通し始めた。
はさっきまで直ぐ斜め後ろにいたはずの香穂子がいなくなっていることにやっと気付き
「香穂子先輩はもう部屋に戻ったんですか?」
「あぁ」
「・・・・・・・・・ねぇ、ちゃん」
「何ですか?」
ソファーに頭を抱えて座り込む火原は、恐る恐るに問うた。
「その・・・・・・さっきの、見てた?」
「さっきのって何です?」
そして、返ってきた反応は『見ていなかった』ということを意味していて
心からとても安堵した。
「良かった〜・・・・・・あれ?」
それは言葉へと出ていって。
でも、その言葉を発した瞬間、疑問に思った。
何で、そんなことを思うんだろう。
何でこんなに安心するんだろう。
確かに、見られたら恥ずかしいことだけど・・・・・・何で?
その時思い出したのは、兄の言葉と、そしての兄である巽己の言葉で。
『恋』
という一文字を思い浮かべた途端、さっきとは違う恥ずかしさが全身を支配し始め、
火原はまた頭を抱えた。
は首を傾げつつ、火原の顔が赤いことに気付き、心配になり
立て膝で火原の元まで行くと
「熱でもありますか?」
自分の額に手を当てて、そして火原の額にもそっと手を当てた。
距離が凄く縮まって、顔が近い。
確かにさっきの香穂子との方が近いけれど・・・・・・でも、
体温の上がりようも鼓動の速さも、こっちの方が勝っているのは確かで。
「ない!ないから大丈夫だよ!」
勢い良く首を横に振った。
どきどきを、紛らわすために。
「そう、ですか・・・・・・もし体調が悪くなったら直ぐに言ってくださいね」
「う、うん!分かったよ」
「、大丈夫だ」
「本当ですか!?ありがとうございます」
二人の会話が一息ついたのを見計らって、土浦は腕を伸ばしてノートでの肩を叩いた。
は即座に振り向き、受け取ったノートを抱きしめて、笑みを浮かべた。
「それじゃあ私も戻りますね」
プリントや筆記用具を片付けて、立ち上がる。
だが、また直ぐにしゃがんで、本に集中している志水に
「おやすみ、志水くん」
と言うと、今まで何が起きても反応を示さず、ただ黙々と本を読みおにぎりを食べていた志水がゆっくりと顔を上げ
「おやすみなさい、さん」
ふんわりと微笑み、また本へと視線を戻した。
「火原先輩と土浦先輩も、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみ、ちゃん」
昨日も言った言葉なのに
なぜかその言葉がとてもくすぐったくて。
まだ頭も出し切っていない感情が、何なのか分かるはずもなく
背を向け扉が閉まるまで、見送った。
そして大きく息を吐いて
胸の苦しみに疑問を覚えながら
イライラするのに疑問を覚えながら
夜は、過ぎていく。
++++++++++++++++++
「LOVE DAYS」を考え始めた当初から、構想があったものです。
土浦に勉強を教わるの。
でも火原の気持ちが中心になってしまった・・・・・・;
志水くんとか全然出てこないので、志水くんをもうちょっと書きたいです。
BACK/
NEXT