もうすぐお昼かな?と、宿題の残りが終わったので、キッチンへと向かっていた。 廊下を歩いていたら、ちょうど土浦に会い 「飯だ」 と言われたので 「はい、分かりました」 と返事をして、また足を進め、キッチンへと入った・・・・・・ら。 何だか焦げ臭い。 鼻をくんくんさせながら足を進めると、オーブンから煙が上がっている事に気付き 「ご飯が!」 慌ててオーブンを開いたが、時既に遅し。 お昼ご飯は、憶測も出来ぬ、見るも無惨な真っ黒焦げの姿になっていた。 「あぁ、出来たか」 横から現れた月森を、はキッと睨んだ。 「これをしたの、月森先輩ですか?」 「あぁ、そうだが」 「オーブンとレンジ間違ってます!あと、目を離さないで下さい!見て下さいよ、これ!もう食べられませんよ!!」 これほどまでに怒ったを見たこともなくて 月森はただ、申し訳なさそうに 「すまない」 と言う事しか出来なかった。  第十三楽章 「あれ?なんで土浦が料理しているの?」 「作り置きがあるってついさっき言ってなかったっけ」 チェックのエプロンをして、中華鍋を慣れた手付きで振るう土浦を見て 遅れてきた3年二人は疑問符をあげた。 その問いに、土浦は眉間にもっと皺を寄せて・・・・・・。 「・・・・・・月森」 「・・・・・・すまない」 「レンジで温めるだけなのになんでああなるんだ!?」 「オーブンと間違えただけだ。仕方ないだろう」 言い合う二人を柚木は落ち着かせて。 火原はテーブルに置かれた黒い物体を見つめて大きな疑問符を幾つも上げていた。 「残っているのはこの四人かな?」 「いえ。がいます」 「なんですか?」 ひょっこりと顔を出したもエプロンをつけていた。 赤のギンガムチェック。 「冷蔵庫に苺があったんです。デザートで食べましょうよ」 「そうだな。つーか、それは大丈夫なのか?」 「えーと・・・・・・」 苺を置いて、鍋をおたまでかき混ぜて。 取り出した小皿にスープをとって、味見をした。 ちなみに作ったのは、土浦のチャーハンに合わせて中華風スープ。 「うん、大丈夫です。味見、しますか?」 自分が先程口を付けた小皿にもう一掬いスープを入れて、土浦に差し出す。 味見をしたいとは思ったが、その小皿に口を付けるのに勇気がいる。 差し出されたところは口を付けていないから、という考えでも持っているのか、 それともこれが日常茶飯事なのか。 ほんの短い時間で必死になって悩んだ末 「いや、食べる時まで楽しみにしてる」 「分かりました」 と、やんわりと断り、事無きを得たのだった。 「マジ美味い。土浦天才」 「大袈裟ですって」 「さんのスープも美味しいよ」 「ありがとうございます」 「凄いね、二人とも。料理は良くするの?」 「あー、俺はたまに」 「毎日してますよ」 「えっ、毎日!?」 高校生、しかもまだ中学から上がってきたばかりの一年生。 なのに毎日料理をしているなんて、考えられなくて。 火原は思わず驚きの声を上げてしまった。 「毎日って、例えば朝食は自分で用意しなければいけない、とかかな?」 「いえ。ちゃんと家族分作りますよ。お弁当だって自分で作りますし、夕飯もほぼ私が作ります。お兄ちゃん達が手伝ってくれますけど」 それを聞いて、ハッと気付いたのは。 には、ご飯を作ってくれるお母さんがいないこと。 「あ、えと、凄いね」 「そんなことないですよ。うち、働かざる者食うべからずなので。それに、お小遣いは家事をしただけ貰えるんで」 その表情から、悲しみは読み取れなくて。 ただ、この頃の涙が印象に残っているからか、タブーなことかと思ったけれど。 にとっての家事は、日常で。 そんな毎日、家事をする度悲しんでいられないのだから。 「得意料理はあるのかな?」 「そうですね・・・・・・良く作るのは和食ですね。日本人ですし、白いご飯に合うものが一番ですよね。あと、ポトフとかパスタとか好評です」 烏龍茶を嚥下して喉を潤わせ、ニコリと笑う。 その笑顔が一瞬だけ、視界いっぱいに広がった。 心臓が大きく一度、ドクリと鳴って 彼らは反射的にから視線を逸らした。 「(なんだよ、今の)」 「(今のは一体・・・・・・)」 「(えっ、今の・・・・・・何だったの?)」 「(だから何だと言うんだ、これは・・・・・・!)」 彼らのまだ名も付けてもらえぬ、初な想いになどが気付くはずもなく 無意識に笑顔や涙を振り撒いて 彼らを翻弄する。 「ちょっとお茶を・・・・・・」 「あっ、俺も!」 完食し終え、まだ少し速い鼓動を抑えるためか土浦は立ち上がり それを追うように火原も慌てて立ち上がって冷蔵庫へと駆けていった。 「えーと、俺のは・・・・・・」 「お茶お茶。え〜と、俺のはこれかな?」 「!!」 土浦が自分のを探している横から、火原は3本並んだ烏龍茶のペットボトルから1本を取った。 「火原先輩、それ!」 キャップに書いてある名前を土浦は確認していたので、火原がそれを手にした瞬間に制そうとしたのだが、遅くて。 振り向くと、火原はコップに注ぐ事なくペットボトルのまま勢い良く嚥下していた。 土浦の言葉に反応し、飲むのを中断し 「え?」 キャップの名を見ると 『』 「※○△□煤`〜〜!!!」 自分のではなく、のもので。 酷く驚いた瞬間、手からペットボトルがすり抜け、床に烏龍茶の水溜り。 「あっ、えと、どうしよう!!」 「そんなこと言う前に拭いて下さいよ!何してんですか!」 文句を垂れながらも、土浦は雑巾を持ってきて拭き始めた。 「あぁ、ごめん、土浦!」 慌てて土浦の手から雑巾を奪うようにして取り、烏龍茶を拭き取って、 水道で洗ってからもう一度綺麗に拭いた。 「・・・・・・で、どうしよう」 「どうしようって、言うしかないんじゃないっすか。零してしまったんだし」 「だよね〜・・・・・・でも、」 「どうしたんですか?」 後ろからひょっこりとが現れ、二人はその姿を瞳に映し 刹那沈黙した。 それがだと、しっかりと認識したと同時に、火原は体中の血液が煮え滾るような 感覚を覚え、頭までもが沸騰しそうで。 「あの、あのね!ちゃんのお茶飲もうとしてそれで驚いて零しちゃって・・・・・・あー、正確に言うと飲んじゃったんだけど。 それでぶちまけてぇ〜・・・・・・」 「落ち着いて下さい」 自分でも何を言っているのか分からず、火原の頭は混乱していた。 それをどうにか落ち着かせようと、は手を優しく握って、 じたばたしていた動きが止まった火原と目が合うと微笑んだ。 また体が熱くなる。 でも、さっきとは違う。 優しい、温かさ。 「あ、あのね。俺、ちゃんのお茶零しちゃったんだ。ごめんね!」 「平気ですよ。まだ買い置きありますし」 は冷蔵庫の棚から開けてない烏龍茶を取り出して、油性ペンで名を書いてからキャップを開けて、コップに注いだ。 「あっ、ちゃんコップで飲んでるんだっけ」 「はい。口を付けると雑菌の繁殖が早いですからね」 苦笑して、はコップから烏龍茶を嚥下した。 「そっ、か」 間接キスでは、なかった。 安堵とも取れぬ けれど、決してがっかりなどしていない。 なんとも言えぬ表情で微笑んで、火原はさっきまで握られていた手を見つめた。 まだ温もりが残る、手を。 抱きしめるように、握り締めて。   ++++++++++++++++++ 漫画では香穂子ですが、夢ではこちらの都合で換えたり換えなかったりします。 あしからず・・・・・・
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