チャイムが学校の終わりを告げる。 終わりの音。聞き慣れた音色。 号令がかかって礼をして、皆部活やら寄り道やら帰宅やらで散り散りになっていく。 そんな中、は携帯電話で時間を確認し、忙しそうに教室を飛び出した。 それを 「ちゃん!」 止めた人物がいた。   第九楽章 ブレーキをかけて立ち止まって振り返れば、そこには音楽科の制服を着た男子が立っていた。 ゆっくりと視線をあげ、顔を視界にいれ、男子が誰だか分かるとは笑顔を浮かべた。 「和樹先輩!どうしたんですか?ここ普通科ですよ」 「いや、あのさ、ちゃんに用があってきたんだ」 人差し指で頬を掻いて、少し照れている。 「私にですか?」 「うん。あのさ、今日暇?」 「今日・・・ですか?」 「あっ、駄目なら良いんだよ!ただ一緒に練習出来ないかな〜?って思ってさ」 両手を顔の前で振って、一生懸命自分の気持ちを悟られないように。 顔は既にゆでだこのように真っ赤。 1年3組の生徒達は、二人をちらりと視界にいれながらその場から去っていく。 はその誘いに申し訳なさそうに目を伏せ 「すいません・・・」 残念そうに言葉を発した。 「あっ、良いんだよ。急だったしね」 態度は別に気にしていないようだが、声は落ち込んでいる。 「すいません。今日はちょっと用事があって・・・でも、明日なら大丈夫ですよ」 「本当!?」 「はい!」 何時の間にか、二人に笑顔が戻っていた。 「じゃあさ、明日の放課後、一緒に練習しよ」 「はい。じゃあ・・・」 と言って、は小指を出した。 「ん?」 頭では理解してないが、無意識のうちに己の小指をの小指に絡めた。 「約束です」 そう微笑んで、小指を離し、は「じゃあさようなら」と手を振って小走りで 帰っていった。 「こうしてまた一人、の虜になり……」 「そして散っていく…」 一部始終をずっと見ていたの親友二人は、ぼそりとそう呟いた。 火原はそれに気付くことなく、が見えなくなるまで見送ると床に置いていた荷物を持ち上げ 「それにしても、何の用事があったん「デートですよ」 小さく呟いた言葉に返答されて、慌てるように後ろを振り向いた。 そこには二名の女子。 の親友である有香と姫夏だった。 「で、デートぉ!?」 驚きとショックで変な声を出してしまい、恥ずかしそうに口をおさえる。 「と言っても、お兄さん達とですけどね」 「良いよね、。カッコ良いお兄様が三人もいて!」 「えっと・・・ちゃんの友達?」 「「親友です!」」 火原の問いへの返答に、見事にハモった二人。 ハモりに対して二人は気にすることなく、姫夏は口を開いた。 「火原先輩はのことが好きなんですか?」 「えっ、好きって・・・」 「、恋とか今のとこ興味なさそうだから私に「あんたちょっと黙ってて「えぇー、ひっどぉーい!!」 色目をつかい自分をアピールし始めようとした姫夏を、邪魔そうに有香は後ろへと押した。 姫夏は口を尖がらせて抗議しているが慣れているようで、普通に無視をしている。 「聞きたいことがあるんですけど良いですか?」 「あっ、うん、良いよ」 そんな火原は二人と違ってどこか緊張気味。 「は本当にトランペットで参加をするんですか?」 その問いに、火原はキョトンとし、首をかしげ、一呼吸間をおいた。 「・・・え、うん、そうだよ。何で?」 「何でトランペットなの・・・?」 火原の疑問に答えることなく、有香は誰に問うのでもなく、疑問符をあげた。 「え?どういうこと?」 「あの子は小さいときからずっと、ピアノの傍で育ったんです!ピアノが大好きで、毎日のようにピアノを弾いて・・・  周りでもピアノを習っていた子はたくさんいたけど、あの子は特別上手かった。  なのに・・・どうして?コンクール参加者に名前が載っていたからまたあの子のピアノが聴けると思ってたのに・・・  聞いてみたらトランペットをするとか・・・どうして?  トランペットをやってるなんて一度も聞いたことなかったのに・・・」 「あの〜・・・」 「はい」 感情を表に出すように、強く悲しく言葉を発していた有香。 ちょうど言葉が止まったので、火原は遠慮気味に 「ちゃんは今でもピアノをやってるの?ピアノからトランペットに移ったってことは・・・」 問うたら有香に睨まれ、結果怯んだ。 「・・・弾かなくなったんです、あの子」 「どうして?」 「有香!言って良いの!?」 「あっ・・・・・・」 有香は姫夏の言葉にハッと気づき、出そうになった言葉を飲み込んで手で口を押さえた。 罰が悪そうに少し俯く。 口を押さえた手をゆっくりと下におろし、拳を握った。 「・・・すいません、それは本人の口から聞いてください。でも、お願いです。 どうしてピアノを弾かなくなったの?とか聞かないであげてください。それはただ あの子の心の負担になるだけだから。本当にすいません、こんな話してしまって。 じゃあ」 軽く頭を下げると、有香は火原の横を通って早足で行ってしまった。 「あっ、ちょっと待ってよ〜!すいません、じゃあまた。ちょっと、有香ぁ〜!」 先に行かれてしまい、姫夏はちょこんと頭を下げると、慌てて走り去っていった。 「あっ、バイバ〜イ」 二人に聞こえるほどの声。 手を振ったけど、それは見えない。 上にあげた手をゆっくりと下へおろすと、火原は小さく息を吐いた。 頭の中でめぐる疑問。 。 ピアノ。 トランペット。 弾かなくなった。 やり始めた。 何故? 聞いてはいけない。 心の負担になるから。 でも知りたい。 心の中の葛藤。 もし聞いてしまったときのの表情を思い浮かべてみた。 それは涙。 「っあ―・・・!駄目だこれじゃ!!」 強く自分の両頬を叩いて弱気な自分に喝をいれる。 疑問は消す。 何時かが自分から話してくれる日まで。 明日のことを考えて、頭を切り替えた。 と放課後、二人で練習。 場所は・・・あっ、決めてなかった。 出来れば屋上が良いな。 そんなことを考えながら、火原は床に置いた荷物を手にとり歩き始めた。 疑問は消した。 でも記憶には、しっかりと焼きついている。   ++++++++++++++++++ ・・・夢、ですか? 主人公より、その親友が今回はでしゃばってます。 てか、火原先輩の出番が多いなぁ・・・・・・ まぁ、しょうがないですよね(苦笑)
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