BACK/ NEXT痛みは感じなかった。 でも、心は痛んでる。 そしてこの子は、もう戻ってこない。 罪悪感でたっぷりの私の心。 きっと、真っ黒になっている。 〜禁忌〜 真夜中。 半月が不気味に紅く輝いている。 これは、何か良くないことが起きるという象徴だろうか。 そう、男には感じられた。 ここは東方司令部の執務室。 中には、ロイ・マスタング、地位は大佐、二つ名を「焔の錬金術師」という男が必死になって明日の朝までにやるべき事を終わらせようと頑張っていた。 ロイは一息ついて、時計を見て息を吐く。 「一時か・・・・・・・それにしても、いつ終わるんだこれは!全く・・・・・・はぁ」 怒鳴って机をバンと叩いてみたのはいいが、これは自分が貯めた物で責任は自分にある。 ということに気付き、小さく後悔のため息をつく。 そして、後悔しても時間の無駄だと思い、また紙にペンを滑らせ始めた。 その時 電話が鳴った。 こんな時間に誰だ、とぶつぶつ文句を言いながら受話器を取ると 『大佐・・・・・・』 今にも壊れそうな部下・・・・・・の声。 「どうしたんだ、少佐」 『禁忌見て・・・・・・赤ちゃんが・・・・・』 その声はとても小さく、集中していないと聞き逃してしまいそうだ。 「落ち着きたまえ!どうしたんだ?状況を説明してくれ」 『・・・・・・』 聞いても、の返事は返ってこない。 ただ、今にも壊れてしまいそうな声だった。 「今から行く!待ってろ」 そう言って受話器を置き、ロイは仕事を放り出し、の家へと向った。 どうしたんだ。 禁忌? 赤ちゃん? もしかして・・・・・・・・・ 悪い予感が頭の中を駆け巡る。 走る速度が上がる。 の家は東方司令部から徒歩10分のマンション。 走って来たので電話が来てからあまり間が開くことなく着くことが出来た。 真夜中だということを忘れ、勢い良くドアを開ける。 「少佐?!」 叫んでも返事は返ってこない。 だから、前へ進む。 「少佐!」 彼女を見つけ、ロイは叫ぶ。 ボサボサの髪に、血に染まった手。 そして、生気をなくした瞳のがいた。 血は、の手首から流れているものだった。 無気力にぺたりと床に座り込み、小型のナイフで浅い傷をいくつもいくつもつくっていく。 同じ動作を淡々と。 ただただ、サクッ、サクッと。 「やめるんだ!」 慌てて駆け寄り、片手で両手首を掴み、ナイフを取り上げる。 「何があったんだ!説明しろ!」 その状態のまま、ロイはを強く揺らし、意識をこっちに持ってこさせようとする。 掴んだ手首から体温と血の温度と感触が伝わってきた。 はロイを見て、震えながら自分の膝を見た。 それにつづき、ロイもの膝元を見る。 そこには、まだ生まれたばかりだと思われる赤ん坊がいた。 そして良く見ると、その周りには・・・錬成陣が描かれていた。 「この赤―――」 「捨てられてたの・・・・・・死んでたの、こんなちっちゃいのに。親に・・・・殺されたの。 だから私が、生き返らせようとしたの・・・・・・」 ぽつりぽつりと、まるで呪文を唱えるかのように。 声は泣いているのに、瞳からは涙が一滴も零れていない。 「見たの、真理・・・・・・そして、それを見た代わりに、赤ちゃんを産めない体になったんだって。 何がとられたかは分からない。痛みもない。でも・・・・・・」 は左の胸の前で拳をつくり、ギュッと握った。 「ここが苦しいの・・・・・・ごめんね。ごめんね、生き返らせてあげられなくて。ごめんね・・・・・・」 壊れたを、ロイは抱きしめた。 ただ強く。 彼女を助けるために。 ただ優しく。 「死んだ者は生き返らない。これが法則だ」 「でも・・・」 「これで良いんだ。私は君を失いたくはない。もうこんなこと、しないでくれ」 「・・・・・・・はい」 私は静かに頷いた。 大佐に抱きしめられて、やっと少し意識がはっきりしてきたよう。 それと同時に、私が犯した罪が走馬灯のように思い出されていく。 ごめんね。 本当にごめんね。 ごめんね。 ごめんね・・・・・・ 私は大佐から離れ、赤ちゃんをそっと抱きしめた。 冷たいからだ。 小さなからだ。 息をしていない、言ってしまえば死体でも、とても愛しく想えた。 どうやら私は、自分の子を抱けぬ体となったらしい。 ―――等価交換だろ、錬金術師。 分かってるよ ―――そうだな、お前は赤ん坊を産めなくしてやるよ。 それだけは止めて ―――なんとなく気に入ったから、痛みは取り除いてあげる。 そんな優しさ要らない 痛みがあったほうが良かった。 その方がもっと、罪悪感でいっぱいになるから。 消えてしまえ、私の体。 どうせ私は、いらない子なんだから。 禁忌なんて、どうってことない。 どうってことないよ・・・・・・ 部屋に電気が灯され、状況がもっとはっきりとしてきた。 周りの紅い痕は私の手首から滴り落ちたものだ。 大佐は救急箱を見つけ、私の手首に包帯を巻き始める。 私は手首が包帯によって白くなっていく様をぼんやりと見つめていた。 意識はまた、向こう側へ。 大佐は包帯を巻き終わると私の顔を心配そうに覗きこみ 「・・・・大丈夫か?」 救急箱を閉め、問うた。 「・・・はい」 私は小さく返事を返す。 「一人で大丈夫か?」 「・・・はい」 「私は帰るが。明日は休むか?」 「・・・・・分かりません」 「そうか。私としては休むことをお勧めするがね」 そう言って大佐が立ち上がったので、私も立ち上がった。 よろけた所を、大佐に抱きとめられる。 「本当に大丈夫なのか」 「大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすいませんでした」 「いや、心配ない」 ゆっくりドアを開けて、閉めた。 来たときとは反対に。 本当に大丈夫だろうか。 心配だ。 いつも少佐とは全然違っていて。 でも、戻ったところで今度はあっちに心配をかけることになるだろう。 「・・・禁忌か。私の周りには、なぜ禁忌を起こすやつがたくさんいるのだ」 切ない目を月に向けた。 どうやら仕事のことは忘れているようだ。 そのままロイは、ゆっくりと足を進めた。 月を見つめながら。 +++++++++ 上手く書けない………。 書けない、書けない、書けない×∞ リストカットシーンがあるので背景は血痕に。