BACK/ NEXT朝起きたら、隣には赤ちゃんの顔。 やはり、昨日のことは夢ではなかった。 私はその子を抱きしめた。 「お墓、つくってあげるからね」 囁いてから、優しく下ろす。 所々に飛び散った床。 それが己のものだということに、私は顔を顰めた。 こんな汚い所に下ろしては可哀想だと思い、私は赤ちゃんをソファに下ろす。 人が死んだというのに、涙が流れることのない瞳。 血の涙を流し続ける心。 それは、ずっと前から。 きっとこの先も。 〜口喧嘩〜 「少佐遅いっすね〜・・・・・・遅刻なんてしたことなかったのに」 紫煙を吐き出し、ハボックはぽつり呟く。 それに他の軍人が同意する中、ロイだけが 「たぶん今日は休みだ」 違う言葉を発す。 完徹に足して昨日ののことがあり、いつも以上に疲れている。 しかし彼はそれを顔には出さずに平然としている。 ちなみに仕事はやっとのことで終わらせた。 「なんでっすか?」 彼は昨日のことを考えていた。 部下の話は耳には入っていて、理解することも出来ているが何処か上の空。 だから彼は、部下の問いに無意識のうちに答えていた。 「あぁ。子供がな・・・・・・ぁっ」 しまった!と気付いたときにはもう遅くて。 「こ、子供っ?!」 驚きのあまり、煙草を落としたハボックがいた。 「やべっ!」 慌てて拾い、口に戻し 「まさか大佐の子じゃ・・・・・・」 その口調、表情は動揺を隠せない様子。 「少佐・・・・・嫌がったのになぁ。でも、大佐が無理やり――」 「変なことを言うな!私と少佐はそんな関係ではない!」 泣きまねをするブレダが口走りそうになったそれを怒鳴って止める。 その顔は、少し赤くなっていたような・・・・・・ 「じゃあ誰の子なんですか?」 真剣に聞いてくるフュリーに 「だから、少佐は妊娠なんかしてない!」 ロイはまた怒鳴った。 そんな低レベルな争い(?)をしている男達を見て、小さく溜め息をつくホークアイがいた。 それから数十分後。 低レベルな争いは 「とにかく、少佐と私は何の関係も持っていないし、少佐は妊娠なんてしてない!!」 という声で終結し、皆、各自割り当てられた仕事を終わらせるために忙しく手を動かしていた。 「すいません。遅れました」 扉が開き、声がした。 皆「来た!」と声の方を向く。 そこにはが立っていた。 昨日の事を一つも感じさせない、何時も通りの姿。 いや、何時も以上にシャキっとしている。 それが今以上にロイを心配させた。 無理をしているのではないだろうか、と。 「大佐ぁ。休みじゃないじゃないっすか」 「だからたぶんと言っただろう」 「嘘つき」と言いたそうな顔をするハボックの言葉に、少し冷たく言葉を返す。 意識のほとんどは、彼女の元へといっていた。 は自分の机に荷物を置き、ロイの元へと歩む。 そして、机を挟んで前に立ち 「昨日はご迷惑をおかけしてすいませんでした」 そう、頭を下げた。 「大丈夫なのか」 ロイがそう問うとは「はい」と答えた。 その表情はどこか曇っていて、どこか暗くて。 〈大丈夫じゃない〉ということが分かる。 少し心配しつつ、少しだけ口調を強くした。 「どこが大丈夫なんだ。私には大丈夫そうには見えないが」 その言葉に、は表情変えず答える。 「少し寝不足なだけです。だから心配なさらないで下さい」 「昨日のあの君を見て心配せずにいられると思うかね?」 「だから大丈夫ですって」 笑顔で答えになっていない答えを返すと、では。と、踵をかえしたを 「待ちたまえ」 酷く落ち着いた口調でロイが止めた。 「何でしょう」 「まだ私の話が終わっていない」 「でしたら早く終わらせて下さい」 も酷く落ち着いた口調で返す。 「早く終わらせたいのはこっちとて同じだ。話をそれを長引かせているのは君だろう」 「何故です?」 そのロイの言葉が気に入らなかったのか、は少し表情を歪めた。 心なしか、口調が少し強くなったのが分かった。 「君が強がっているからだろう」 「そんなことありません」 「あるから言っているんだ。一人でそんなに抱え込まなくとも良いだろう。助けを求めたって良いではないか・・・・・・ 現に昨日、君は私に助けを求めたのだから」 ロイの口調が和らいだと思ったら、その口調は切なくなっていた。 は今にも泣きそうな顔をし、その優しさに包まれたくなる。 しかしそれは駄目だと、その感情を消すかのように、叫んだ。 「放っておいて下さい!」 そのの言葉で、話は中断された。 はロイと目を合わすことなく席につき、机に積んであった書類に目を通し始めた。 ロイも書類に目を通し、サインをし始める。 その場にいた他四名は、聞こうにも聞けぬ状況にいた。 罪は一人で背負うもの。 黒十字は一人で担いで、罪を償うための長い道は一人で歩くもの。 誰かに助けなんて求めてはいけない。 それはプライドでも何でもない。 それが〈法則〉。 優しさに惑わされてはいけない、温もりを求めてはいけない。 私は罪人。 今日も連行されているであろう、手首に手錠をされた人と同じ。 違うけど、同じ。 その嫌な雰囲気の中、刻々と時間だけが過ぎていったのだった。 +++++++++ 喧嘩させるつもりはなかったんです!(爆) 「まさか大佐の子じゃ…」ってハボさんに言ってほしかったんです(笑) 背景画像は〈罪〉ってことで,色々考えた結果,素敵サイト様で見つけた 〈手錠〉にしました。 背景に合わせて、主人公の独白の最後の二行をいれてみました。