〜体のこと〜 「一緒に、元の体に戻ろうよ」 アルが優しく、そして真剣に私に言ったのはそんな言葉だった。 私は悲しげに微笑んで首を振った。 「私はそれを望まないの」 「えっ?」 アルは疑問符をあげる。 当然のことだろう。 普通、大切なものを失って取り返す方法があることを知ったら、人間はその方法を見つけるだろう。 私の場合は、本当に取られたのかがまだ不明だけど。 「戻りたくないの。私は罪を背負い続けることを望むの」 「でも・・・・・・」 アルは次に発する言葉が見つからないらしく、口を閉じた。 「それは大変かもしれないけど、それで良いの。私はそれを望むから。だから、今まで通り二人は二人で手がかりを見つけて。 私も今まで通り、情報があったら提供するから、ね」 笑んだら、アルは不満そうに小さく「うん」と頷いた。 でもそれはまるで、私が無理矢理言わせたようで、アルに悪いことをしてしまった気がした。 私は立ち上がる。 それと同時にエドが問うた。 「どこ行くん?」 「ちょっと資料を探しに」 扉の前に立ち、ドアノブに手をかけた私の肩をホークアイ中尉が掴んだ。 「何ですか?」 ホークアイ中尉は何も答えず、そのまま私を外へと連れ出し、がちゃりと扉を閉めた。 残された男性陣。 皆、頭の上に疑問符を浮かべる。 それから数分後。 がちゃり、と音がしてホークアイが帰ってきた。 「何してたんすか?」 エドワードが問う。 「ちょっと、体のことについてね」 「体のこと?もっと詳しく説明して下さいよ」 エドワードはむっとしながら言う。 その言葉にホークアイは困ったように、頬に手をやり息を吐く。 「難しいわね。説明するのは簡単だけど、男の子に話すのはちょっと話し難いわ。言う方も聞くほうも恥ずかしいでしょうし・・・・」 エドワードとアルフォンスは疑問符をあげるが、他はなんとなく「あぁ」と分かったようだ。 「聞いても良いか」 ロイが問う。 どうやらホークアイとが話していた内容がだいたい分かったようだ。 「何でしょう」 「何時なんだ、それは」 主語の無い言葉だが、ホークアイは何のことだか分かったらしく 「変わらずくれば、今日から一ヵ月後くらいだそうです」 「そうか・・・・・・つまり、あと一ヵ月すれば少佐の持っていかれたものがあれなのではないかと確信がつくと」 「そういうことになりますね」とホークアイは悲しげな顔をした。 皆が分かっているのに、自分だけ分かっていないことが嫌らしく エドワードは「教えろ」と言葉には出さずともオーラを発す。 「君はまだ分からないのかね」 ロイは呆れ気味に息を吐いた。 「悪かったね」 エドワードは不満そうに唇を前に突き出す。 ロイは立ち上がり窓越しに外を見た。 あいにく今日の天気は曇りだ。 いつ、ロイが無能になってもおかしくない。 「一ヵ月後に、また少佐を訪ねれば良い」 「は?」 「そうすれば、少佐の持っていかれた体の一部が分かるかもしれない」 「何だよそれ。分かってるなら何がもっていかれたら教えてくれたって良いだろ」 「それは出来ないな。なにせただの憶測にしかすぎないのだから」 少し経って、雨が降り始めた。 嫌そうにロイはそれを見る。 でもそれは、自分が無能になるからではなくて を想っていての気持ちからだった。 「誰か、開けてください〜〜」 そう、声が聞こえたので急いでアルフォンスが扉を開く。 そこには山積みの本を持ったがいた。 「どうしたの、その本の量?!」 「資料を探してたら、これを大佐に持っていってくれって頼まれて・・・・」 「ヨイショ」と自分の机に資料を置いて、その中から頼まれたものを取り出し 「どうぞ」 笑顔でロイに渡す。 その顔には「さぼらないで下さいね」と書いてあるように、ロイには見えた。 「ありがとう」 引き攣った笑顔をつくってそれを受け取ると、は微笑し、席へと戻っていった。 席に着いたと同時に「!」とエドワードが名を叫ぶ。 少し驚きつつも「何?」と首を傾げつつエドワードを見た。 「俺達一ヶ月後また来るから」 「じゃあ、今日はもう帰るの?」 問ったらアルフォンスが答えた。 「ううん。帰るのは明日だよ」 「そう。良かった」 微笑むに「ちっが〜う!」とエドワードは机をばんばん叩き 「の持ってかれたものが一ヵ月後に分かるんだろ?!」 勢い余ってそう言った。 「言っちゃった・・・・・・」とそこにいた人間全てが思った。 は同様もせず 「ホークアイ中尉、どのへんまで説明したんですか」 「一ヶ月後に来れば少佐の持っていかれたものが分かるかもしれない、ということを大佐が・・・ 大佐は言わずとも、私が少佐に聞いたことを察したようで」 にこりと微笑し、「ですよね」と返答をロイに求める。 「あぁ。あのくらい言われれば分かる」 真顔でその返答に答えた。 「そうですか」 は「はぁ」と大きく息を吐いた。 それは怒っているのでもなく 戸惑っているのでも、慌てているのでもない。 ただ、今の状況を「良い」と思ってはいないのは確かだ。 しかし「悪い」とも思ってもいない。 「まぁ、子供を産めなくするって聞いて真っ先に浮かぶのはそれですしね」 は苦笑した。 エドワードとアルフォンスは疑問をあげる。 そんな二人のキョトンとした顔を見て、はくすくす楽しそうに笑った。 「まだ分かんなくっても良いのよ。二人は自分の体を心配しなさい」 お母さんのように、そしてお姉さんのように。 優しく優しくそう言った。 「一ヶ月後に結果はでます。周期がずれたらそれより早くなるかもしれないし 遅くなるかもしれないけど。でも、私はあんまりずれないのでおよそ一ヶ月後 でしょうね」 そう言い仕事に戻った。 エドワード・アルフォンスを抜かした男性陣は、少し恥ずかしそうに頬を薄く赤らめた。 それはいつも通りの少佐で。 何故こんなにも平常心でいられるのかと疑問に思い、そして不安になった。 何時か、壊れてしまうのではないのかと。 もし壊れてしまったとしたら 私は何が出来るのだろうか。 ただ、この手で抱きとめる。 彼女を。  +++++++++ 何だかお分かりになりましたか? 分かるのはもう少し後です。 でも…女性なら分かりますよ、ね? すいません,こんなもので………
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