一応、行く前に大佐にしっかり仕事をするよう念を押して ホークアイ中尉達に急に決めたことを謝ってから、私は汽車に飛び乗った。 行く理由は浮かれるような理由じゃないのに。 会ってあのことを話したら怒られて、もしかしたら破門かもしれないって分かってるのに。 何故か私は浮かれてる。 おかしいかな?      〜先生〜 汽車を降りる。 改札を潜って、大きく伸びをした。 東方司令部があるところよりだいぶ田舎で、生まれ育ったリゼンブールよりは都会な、ここはダブリス。 一年ほど、修行で過ごしたこの土地は、全くと言って良いほど変わってなかった。 歩きなれた道を久しぶりに懐かしみながら歩き、途中で私を知っている人が声をかけてくれた。 軽く会釈をして、私は〔MEAT〕と大きく書かれた看板のお店で足を止めた。 先生いるかな・・・? 会いたい気持ちと恐怖が交差し始める。 入ることを躊躇っていると 「へいらっしゃい!!」 「きゃっ!」 後ろから大きな声。 驚いて私は思わず声をあげてしまった。 早く脈を打つ心臓を落ち着かせながら、私は後ろを向く。 その顔は、懐かしい顔。 「・・・・・・えっと、メイスンさんでしたっけ?」 「あれー?ちゃん?ひっさしっぶりぃ!」 「お久しぶりです」 「しっかし、綺麗になって!!」 あっはっはっ!と笑いながら、メイスンさんは私を頭を叩いた。 「イズミさんに会いに来たんだろ?なんか来るとか電話が来たって言ってたし」 「あっ、はい」 歩き出すメイスンさんの後を小走りで追う。 裏口の戸を開け、メイスンさんは入る。 私は開いた戸から、そ〜っと中を覗いた。 「あっ、店長!予約されてたお客さんが来てますよ」 「予約客だぁ?」 私は覗くのを止めて、大人しく外で待つことにした。 低いどすの利いた声がした後、ドスドスと足音がし、血のついた大きな包丁が戸から見えた。 そしてその戸から出てきた、物凄い足音の正体は 「あ゛?」 「お、お久しぶりです、シズさん」 「・・・・・・・・・・・・か?」 「あっ、はい」 一応、微笑んどいた。 なんか恐いから。 そしたらいきなり目を見開いて、大きな手が私の方に向ってきた。 何されるの?!! ・・・と思ったら、がしっと頭を掴まれぐりぐり撫でられた。 「大きくなったな。んで、綺麗になった」 「あ、ありがとうございます」 「急に電話してどうした」 「あっ、いえ。先生に話したいことがあって・・・・・・」 「ああ、こっち来な。メイスン、しばらく店頼む」 「へーい」 シズさんは包丁をメイスンさんに渡すと「着いてきな」と歩き出した。 「先生はお元気ですか」 「そこそこは元気だが、まぁ病弱には変わりないな」 開いている窓に肘かけて 「おいイズミ。が来たぞ」 先生に声をかける。 どうやら具合が悪くて寝ていたらしい。 「?あぁ、来たんか」 懐かしい声が聞こえる。 「起きられるか?」 「大丈夫。調子はだいぶ良いよ」 家の扉の前で待っていると、パタパタと足音がしてがちゃりとドアが開いた。 先生が顔を見せる。 変わってない。 懐かしい、久しぶりだ、会いたかった・・・・・・ 「どうしたんだ?いきなり電話なんてよこすから吃驚したよ」 「お久しぶりです、先生」 「良く来たな。まぁ、あがれ」 「はい」 自然と笑みが浮かんでくる。 この先私が話すことは、笑えることなんかじゃないってことくらい分かっているのに。 家に通されて、椅子に座るとお茶が出された。 「で、話したいこととは」 「・・・・・・え〜っと」 いざ本人を目の前にしてみると・・・・・・怖い。 殴られて投げ飛ばされるだけなら良いな・・・と本気で思った。 「あの、言い難いんですけど・・・・・・」 「なんだ、早く言ってみろ」 「一つは、国家錬金術師になったんです」 その言葉に、先生の唇が引き攣った。 恐い・・・・・・この笑顔。 「エドのことなら知っている」 「あっ、えっとエドもなんですけど・・・・・・」 言葉がだし難くなり、自分を指差した。 指が震えていたことに気づき、自分が緊張していることを改めて実感した。 「は?」 「だから・・・・・・私も、です」 先生は、少し驚いた顔をして、次に恐い顔をした。 「怒られる!」って思ったら、先生は頭を掻いて、はぁと呆れるように息を吐いた。 「・・・・・・自分を、必要としてくれると思ったからか?」 私は、はっと先生を見て、ゆっくり頷いた。 さっきよりも大きく先生は息を吐く。 「なんで軍の狗に成り下がるかね」 「ごめんなさい・・・・・・」 「謝るな。それはお前が選んだ道なんだろ?軍はお前を必要としてくれたんだろ?」 私は頷いた。 先生は知っている。 私の忌まわしい過去を。 知っているから。 だから、私が先生の大っ嫌いな軍の人間になったと知っても怒らなかったんだと思う。 「・・・・・・で、話はそれだけか」 私は首を振った。 覚悟を決めて、息を吸って吐く。 「じゃあ何だ」 「・・・先生と、同じことをしました」 「は?」と先生は疑問符を上げる。 シズさんも首を傾げた。 私は知っている。 先生も、禁忌を犯したことを。  +++++++++ 先生は、主人公の良き理解者設定。 今のところ一番といっても過言ではないでしょう。 裏設定として、厳しいけど主人公にはちょっと甘いところがある先生です(笑)
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