〜夢を・・・〜 「禁忌です」 その言葉に、先生は勢いよく立ち上がった。 そして私を睨む。 テーブルに着く手は怒りで震え、ティーカップがカタカタと揺れた。 「もう一度言ってみろ」 もう、どんなに怒られても良い。 怒られるために私はここに来たのだから。 全て吐き出してしまおう。 「禁忌を犯しました・・・・・・人体練成です」 先生は目を見開き、そのままストンと座っていた椅子に座った。 そして片手で顔を覆い、ハァと大きく息を吐いた。 指の隙間から私を見る。 「誰を生き返らそうとした」 「・・・・・・」 紅茶を口に含み、喉を潤わし 「見ず知らずの赤ちゃんです」 その言葉に、また先生の目が見開かれた。 「なぜ、見ず知らずの赤ん坊なんか・・・・・・」 「・・・・・・昔の私と重なったんです。あぁ、この子も親に捨てられたんだなって。 そう思ったら、その子を抱きしめていて。家へ帰って、練成陣を書いてました」 苦笑したら、先生は「馬鹿」と呟いた。 私は話した。 全て、全て。 自分のことや大佐やエド、アル達に言われたことも。 禁忌を犯してから今日までのこと。 全て、先生に話した。 ただ聞いてほしくて。 こんなことで私の犯した罪が消えるなんて思っていない。 でも、聞いてほしかった。 ただ、聞いてほしかった。 聞いてくれるだけでよかった。 先生に。 話し終わり、刹那、沈黙が流れた。 「いつ分かるんだ」 「あと一ヶ月ほどです」 「医者に見せれば分かるものじゃないのか」 「だって、もし本当にそれがなくなっていたらお医者様は驚いて問いますよ。何故ないんだって。 そしたら答えられませんから。良いんです。もう少しの間はまだ絶望したくないんです」 「・・・どういう意味だ」 「私、始め禁忌を犯して子供を産めなくしたと言われた時、一瞬絶望しました。夢が・・・・・ 掻き消されたんですから。でも痛みも何もなかったから、少ししてもしかしたら何も取られてないんじゃないか、って思ったんです。 何も取られてないなんてことないってことは分かっています。でも、そう思っていたいんです。 今は・・・・・・希望を」 続ける言葉が見つからなくて、そこで言葉は途切れた。 胸を何かが締め付ける。 それは〈罪〉か。 それとも・・・・・・ 長い長い沈黙が流れ、先生は立ち上がる。 「だったら私もそう思おう。何も取られてないのではないかと。確かに、そんなことあるわけない。 でも〈もしも〉ということもあるだろ。まぁ、〈もしも〉という世界なんて存在しないけどな。 ・・・少しの間だけでも、お前が笑顔でいられるように・・・夢をみられるように、な」 先生は優しく、私の頭を撫でた。 「はい・・・・・・」 短い夢でもいい。 儚い夢でもいい。 幸せは願わないから、絶望させないで。 少しの間だけは、この体は子供を宿すことが出来るのだと 思わせて。 まだ夢を消さないで。 もう少し。 夢を見させて。     +++++++++ 心の声を発して欲しかった回です。 けっこう先生には何でも言ってしまう子ですね。 それだけ信頼してるってことです。 〈夢〉が何なのかはまだ出しません。 もうちょっと後です。
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