時間が過ぎるのがとても遅く感じられた。 まだ、遅れた理由を大佐に言っていない。 言える雰囲気ではないから。 それを作ったのは、どうやら〈私〉らしい。 納得いかない。 どうして私? 大佐も一緒に作ったでしょう? 何故、今日遅れたか。 それは、赤ちゃんのことを報告しに行っていたから。 お葬式は明日。 細かな作業とかは出来ないから、埋葬するだけ。 参列者は私だけの。 静かな悲しいお葬式。 そのお葬式が終わるまで、赤ちゃんは私の家にいる。 その赤ちゃんを見るたびに、私は思い出すだろう。 ううん。 いなくなっても思い出す。 いつまでも、ずっと。 あの子の顔は忘れない。 きっと、絶対に。  〜葬〜 お葬式は夕方だったから、私は普通に軍服に着替えて出勤した。 「おはようございます」 扉を開くと、いたのは大佐ただ一人。 入りにくいな、と心の中で思いつつも、自分の席へと向かう。 それにしても、何でこんな早くから大佐がいるの? 大佐は書類をぺらりぺらり、と捲る。 確か、溜めていた仕事は終わったはずじゃ・・・・・・・ 疑問に思ったが、疑問の答えは直ぐ私自身から返ってきた。 昨日、今日までに終わらせなくてはならない書類が回ってきたんだっけ。 「あぁ、おはよう」 大佐は書類と睨めっこしながら、私の方を向かずに挨拶を返す。 その口調は少し不機嫌そう。 たぶん、書類に足して昨日のことがあるから。 でも、今日機嫌が良かったら昨日のことを忘れてるってことでしょう? そうだったら、きっと私は大佐を軽蔑していたことだろう。 「・・・・・・大佐」 「・・・なんだね」 あまり気はのらないけど話しかける。 話さないといけなかったから。 これは言わなくては。 曲がりにも私の上司だ。 そして私自身が選んだ上司なのだから。 「今日、四時に帰らせていただけないでしょうか?」 「何故だ?」 問われ、私は開いていた口を閉じた。 反射的に。 でも、直ぐにその口は開く。 今ここには、私と大佐しかいないことを思い出したから。 「・・・今日なんです、お葬式。四時十分から」 大佐と二人きりだったから言った。 もし、他に人がいたなら私は嘘を付いていただろう。 少し間を置いてから、大佐はゆっくりと口を開いた。 「そうか。良いだろう。でも、一つだけ条件がある」 「なんでしょうか」 「私もその葬式に参列するからな」 「・・・えっ、あの、何故です?」 「何故って、私もあの子を知っている人間の一人だ。どうせ葬式と言っても参列者は君しかいないのだろう。 それでは寂しいし、あの子も悲しいだろう。だから参列する」 「・・・はい。分かりました」 その言葉が嬉しくて、私は微笑んだ。 嬉しかった。 色々と、嬉しかった。 赤ちゃんのことを考えてくれたことも何もかもが。 嬉しかった。 ありがとうございます 心の中で呟いて、そっと昨日のことを水に流した。 「では今日の四時に」 「あぁ」 昨日とは違い、今日は時間が経つのが早かった。 お昼のとき、ハボック少尉等に昨日のことを聞かれたが全てノーコメントを突き通した。 言えるはずがない。 言ったとしても分からないだろう。 でも何時か、言う日が来るはず。 そんな気がした。 もしかしたらその日は、近いかもしれない。 勘だけど、何時もの勘より当たってる気がするのは何故? 理由は分からないけど、胸騒ぎがした。 きっと、言うことになる。 でも、その時はその時だと 私はそれを胸の奥底へとしまい込んだ。 小さな小さな棺桶。 それに、あの子は横たわっている。 小さな四角く掘られた穴に、その棺桶は置かれた。 その上に土をかけられる。 そして、墓石が置かれた。 あの子は見ず知らずの子。 名前も何時生まれたかも、当然親の名前や顔も知らない子。 だから墓石に名前を刻んだり出来るはずがない。 書かれたのはたった一言。 〔It lies child, here that left young the world.〕 これでお終い。 お終いだけど、私は一生この子を忘れることはないだろう。 ううん、忘れることが出来ないの。 墓石を見つめる。 知らない人に埋葬されて、知らない人が参列して。 知らない人のお墓の間にあの子のお墓は囲まれている。 今ここは、あの子にとって知らないことだらけだね。 「何故、この子は親に捨てられたのでしょう」 静かに言った。 問うたわけではない。 ただ、心の中で思っていたことが口にでてしまったの。 だから、答えが欲しいわけでもない。 「何故殺されたのでしょう。あんなに小さな、可愛い子を。何故、殺したのでしょう。信じられません。 何故、自分のお腹を痛めて産んだ子を。自分と血の繋がった子を。自分の子供を殺したのでしょう。何故・・・・・・捨てるの。捨てないでよ・・・・・・」 心に熱いものがはしった。 でも目は乾いたままで、涙は一滴も零れなかった。 大佐は何も言わずに、黙って墓石を見つめる。 でもそれが、嬉しかった。 さっき、一瞬あの日の私を思い出した。 捨てられた私。 でも、私は生きている。 あの子は死んだ。 そこが違う。 私の方が幸福なのかもと思ってしまった自分がとても嫌になった。 人は自分と他人との優劣をつけたがる生き物だけど、こんなときにこんなことを こんな状況で思ってしまった私は人間として最低の部類に入るだろう。 「少佐」 薄暗くなった通りを、二人並んで歩く。 二人とも何も言葉にせず、黙ったまま黙々と歩いていたら、突然大佐に呼ばれ、私は疑問符をあげた。 「なんです?」 「あぁ・・・聞きたいことがいくつかあるのだが、良いか?昨日のように、感情的にはならないから」 「良いですよ」 私は小さく微笑んだ。 薄暗い中、二人は立ち止まろうとした。 だが 「立ち話もなんですし、私の家で話しませんか?今日のお礼も兼ねて夕食をご馳走します」 「それは良いな」 「言っておきますけど、味の保障はできませんからね」 は無邪気に笑う。 その顔は、16歳の普通の少女だった。 いつもの少佐だ。 屈託のない笑顔で、無邪気に笑う。 形の整った唇から発される大人びた言葉。 でも、元通りとはいえない。 きっとこれは、演技。 本当の表情の上に、「偽」という仮面を被っているのだろう。 昨日今日で、こうなるはずがないのだから。 そんなことを考えながら、ロイはの隣を歩いた。 すぐ隣にいるけど。 でも、心の内を知ることは出来ない。 上司だから近いは近い存在なのだろうけど。 でも、知らないことが多すぎる。 そんな関係。 ロイは小さくため息をつく。 それに、が気づくことはない。  ++++++++   英語はですね、ほんと文才のない意味です。 どうしちゃったの?くらぃ文才がないぃです(汗 訳すと「若くしてこの世を去った子供、ここに眠る」です。 そのまんまじゃん、って感じですね(汗
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