「「いただきます」」 二人一緒に手を合わせて言った言葉は、小さいけど部屋に少しだけ響いた。 たぶん部屋が狭いから。 台所のすぐ近くにある四人掛けのダイニングテーブルに、向かい合わせで座る。 一人暮らしなのに何故四人分もというと、大切な幼なじみが来たときのためだ。 今日の献立はいつもより少し豪華。 私が一人のとき食べているものはパンにスープ。それと主菜が一品くらい。 しかし今日はパンに魚介のクリームスープ、それに茹でた野菜とチキンを塩コショウで炒めたものと デザートがある。 全て私の手作り。 一人以上で食べるのは久しぶりだ。 「・・・・・で、話って何ですか?」 口に含んだ物を飲み込んでから問った。 「あっ、あぁ」 大佐はフォークに刺した鶏肉を口に運び、飲み込んでから話し出す。 「聞いても良いか?」 「そんな聞かれる内容も言われずにその問いに“はい”とは答えられませんよ」 苦笑したら、大佐は「そうだな」と微苦笑しようとしたが、すぐにその頬は引き締まった。 大佐はアイスティーで喉を潤わせてから口を開く。 その口は、開くことを躊躇しているようだ。 しかし、言葉は発された。 ゆっくりと、言い難そうに。 「・・・人体練成、のことなんだが」 あぁ、それね。 〈人体練成〉という単語を聞いても私は平常心のまま。 眉一つ動かさず、ただ表情が少し曇ったかもしれない。 大佐は返答を待つ。 「・・・話せることなら」 私の言葉と共に、大佐の話は始まった。     〜話〜 「もし、あの子の魂が戻ったとしたら君はどうしていたんだ」 それが、大佐の話の冒頭だった。 「一度死んだ子が生き返った。そうしていたら、君はどうしたんだ。まだ乳飲み子で生き返った子で、 それも見ず知らずの子を」 禁忌を犯した理由について聞かれると思っていたから、安堵した。 でもそんな素振り見せたら、それに対して聞かれてしまうかもと思ったから。 私は表情変えず、答えた。 「一度死んだ人を生き返らせるために、人体練成をするんですよ。等価交換という法則があるのも忘れて、 錬金術師は。それをするということは、それなりの覚悟が要ります。覚悟というより、もしかしたら過信なのかもしれませんね。 自分なら出来る。きっと皆、そう思ってしまうんですよ」 そう言いため息をついた。 自分の愚かさに対する自嘲も込めて。 あの時の私は、過信というよりただ我が心のままに。 平常心なんて忘れて、頭の中には〈あの日の自分〉。 〈助けて〉って言っていた。 その言葉を、あの子も発しているように 私には思えたの。 「もし・・・・・あの子の魂が戻っていたとしたら、私は愛しましたよ」 罪人が〈もし〜たら〉と発す言葉は皆、ただ己が犯してしまった罪に対する後悔や罪悪感からどうにか免れようと もがく心から発された、己を責め、癒す言葉だ。 しかしこの言葉は、責めるわけでも癒すわけでもない、本当の言葉。 〔 愛す 〕 そうに決まっている。 エドやアル達を見て、人体練成がどれほどの禁忌だか、私は知っている。 知っているつもりだ。 とても恐ろしく危険な行為だということを。 知っているつもりだった。 でも本当は知らなかった。 幼馴染が犯した罪といえ、言ってしまえば他人事。 彼らの本当の痛みなど、私は知ることの出来るはずがない。 だからそこにはやはり〈過信〉というものがあったのだろう。 大佐は私が言い終えてから少し間を置き、また口を開く。 「もし、あの子の親が見つかったら君はどうする」 お皿の食事は既に完食されていた。 デザートにはまだ手をつけず、私の答えを待っているようだ。 私は間の開けずに 「許しません」 強く握ったナイフが、体温で温まった。 感情が表に出る。 それは私が止めようと思う前に、欠片も残さず消え去ってしまった。 あの日の光景が頭に浮かび、氷となって私の心を冷やしたのだ。 「しかし、もし見つけたとしてもあの子は戻ってきません。見つければ親は捕まるだろうけど、あの子はもう戻ってこないんです。 それに・・・・・・・・」 カチャリ、と持っていたフォークとナイフを置いた。 「酷い言い方かもしれませんけど、しょうがないことなんですよ。親に捨てられたとしても、無力な子供は何もできないんですから。 だから、しょうがないんだと割り切るしかないんですよ」 私のその言葉に、大佐は何か言いたそうな顔をし口を開けようとしたが閉じ、デザートを口に含んだ。 内心、ホッとした。 何故、あんな冷たい言葉が私の口から発されたのだろうか。 答えは分からない。 普通だったらさっきの言葉は言わずに心に秘めておくもの。 だったら何故? ただ分かるのは〈私もそうだったから〉ということだけ。 捨てられたとき、哀しくて悲しくて。 でもいつの間にか、しょうがないなと割り切っている自分がいた。 何を言っても、もうあの頃には戻れないと分かったから。 だから、しょうがないと思った。 もう、何も望まないと。 あの人には。 望んでも、傷つくだけだと知ったから。 それから続いた話は、禁忌のことで。 あの子を生き返らせるためにつかった錬成陣は誰が考えたものか、とか。 本当に体には異常はないのか。 など、多くは私を心配するものだった。 昨日みたく強い口調もなく、ただ優しく労わってくれた。 私はされた質問に答えるだけ。 それはYESかNOかは分からない。 ただ、答えればよかったのだ。 NOと言ったら、大佐はそれ以上追求はしてこなかったから。 「ごちそうさま。少佐、美味しかったよ」 「ありがとうございます」 「では、また明日」 「はい」 短い言葉を交わして、大佐は私の家を後にした。 残った二人分の食器。 恋人というのはこういうものなのだろうか。 ふと、そう思った。 〔恋人〕 私にはもう無縁なものだろう。 子供の産めぬ私がつくったってしょうがない。 それに、好きな人も気になる人もいない。 良かった。 もし、好きな人がいたとしたらもっと悔やんだだろう。 それが叶わぬ恋だったとしても。 悔やんでいたことだろう。 でも、きっと涙は流していなかったと思う。 私の涙腺はもう当の昔に、乾ききってしまっているのだから。  ++++++++++ なんか、名前がカタカナの作品で料理を書くとき、チキンを良く使う気がする・・・・・ だって牛肉とか豚肉って感じがしないんだもん!(苦笑 今度は違う料理にしよう。 でも、料理の名前とかあまり知らないんですよ・・・・・料理はたまにしますけど。 なんとか風とか,変なカタカナとか・・・さっぱりです(汗
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