BACK/ NEXT「生き返らそうとしたのはね、赤ちゃん・・・・・・なの」 一つ小さく深呼吸をして。 目を瞑って、開く。 そしたら何だか、周りが変わった気がした。 具体的に〈何が〉っていうのは言えないんだけど・・・ とにかく、何かが変わった気がした。 そして私は話し出した。 大佐以外の全員が、信じられないという顔をする。 驚いたのだろう勢い良く椅子から立ち上がった人もいる。 「だ、誰の子供なんですか?!少佐」 そう、私に問ったのはハボック少尉。 煙草は灰皿へといっているのでトレードマークはなし。 何か勘違いをしているのだろう。 「誰の子って?」 私は問い返す。 しかし、その問いには耳も貸さず、皆はハボック少尉の言葉に続く。 「でも、お腹大きくなかったですよね」 フュリー曹長の言葉に、ブレダ少尉が「うんうん」と頷く。 皆なんか勘違いしてる。 少し経ち、何を勘違いしているのか理解出来たので、一応否定しておくことにした。 「あの・・・・・・言っておきますけど、妊娠なんかしてませんよ」 その言葉に、皆から安堵が零れた。 ちょっと待ってください。 普通に考えて妊娠なんてしてるわけないでしょう。 16歳で出産なんて・・・・・・親子二代になっちゃうじゃない。 心の中で苦笑した。 〜告白〜 「じゃあ誰の赤ちゃんなの?」 アルに問われ、私は一気に表情を曇らせる。 それにアルが慌てて言葉を発する前に私が発す。 「分からないの」 「分からない?」 この疑問符はエドだ。 私は頷く。 「拾ったの、赤ちゃんを」 視線はエドとアルの方。 「死んだ赤ちゃんを」 ペンを走らせる音は否、呼吸をする音さえ聞こえない。 全集中は、私の言葉へと向けられている。 エドは私に一番近い椅子に腰を掛け、アルはエドの隣に立っている。 私は視線をエドとアルから話して、今ここにいる皆さんに話すように視線を動かした。 「行き交う人は誰もあの子に気がついていないという、それほど人目につかない場所にあの子は捨てられていたんです」 「良く気付いたね」 吐息と共にアルが呟いた。 表情は分からないけれど、声から感心と悔恨が読み取れる。 「私もそう思う」 アルに微笑んだ。 それはとても痛々しかったのか、誰も微笑んではくれなく、反対に表情を暗くした。 「なんで見つけられたんだろうね。いつもは見もしない場所なのに」 赤ちゃんが私を求めていたのかな?と冗談っぽく私は笑った。 でも、誰も笑わない。 笑えないのだ。 「私はその子を拾いました。そして家に連れて帰り、直ぐに練成の準備をしました。考える前に、体が動いたと言うべきでしょうか」 小さく溜め息をついた。 視線だけ下を向け。 私は話を続ける。 「でも、駄目でした。赤ちゃんは生き返らなかったんです。生き返るまではいかなくとも、せめて指一本でもと願いました。 でも、動くと赤ちゃんには何も起こりませんでした・・・・・代償を払わされたのに、ピクリとも動かなかったんです」 「・・・・・・何を持っていかれたの」 静かに、アルが問う。 それはとても重い言葉で。 返答の言葉を発するのに、少し時間がかかった。 それがとても簡単な答えだとしても。 「分からない」 エドが「何でだよ」という顔をする。 私は視線をまた、エド達の方へと戻した 「痛みも何もなかったの。こう、外見だけを見ても何にも変わってないでしょう? ・・・一つだけ分かるのはね、子供を産めぬ体になったってことだけよ。 真理を見た後、言われたの。そうだな、お前は赤ん坊を産めなくしてやるよって。 そしてこうも言われたわ。なんとなく気に入ったから、痛みは取り除いてあげるって。 何で痛みが取り除かれたんだろうね。痛みがあった方が良かったのに。その方が・・・・・・」 沈黙が流れた。 長い長い沈黙。 この場所だけ時間の流れが遅くなったような。 違う。 時間が止まってしまったような。 そんな感じだった。 その沈黙を破る。 「なんで見ず知らずの赤ん坊を生き返らせようとしたんだ」 それはエド。 腕を組んで、私が話を始めてからずっと睨むように私を見ている。 お葬式の日、大佐にされた質問と少し似ていた。 何故、ね。 それは・・・・・・・・・・・ 言ってはいけないと、幼い私は心に思った。 言ったら全てが変わってしまう気がして。 必死になってそれをかくした。 でも今の私は「言ってしまおうか」と思っている。 楽になりたいわけではない。 楽になれると思ってないから。 ただ、この状況を少し楽しんでいるのかもしれない。 変だねって自嘲した。 言ったら全ては変わってしまう? 今なら〈否〉と言える。 確信はないけれど。 じゃあ、言ったらどうなるだろう。 誰も知らない私の秘密。 数人だけしっている。 〈この場の人は誰も知らない〉って意味。 遠い過去。 出来れば思い出したくない。 忌々しい、忘れてしまいたい過去。 でも、忘れることの出来ない過去。 忘れたいけど忘れてはいけないの。 だから言ったほうがいいのかもしれない。 全てを忘れることは出来ないけど、記憶は消えていくものだから。 だから少しずつでも、誰かの記憶の中に残っていれば・・・・・・ 私は一つ、深呼吸をした。 「・・・・・・昔の私に似ていたから」 息を吐くように。 それはまるで何かを呟くように。 言い難いことがきっと伝わっただろう。 その言葉だけでは皆理解出来ないらしく、首を捻ったり顔で分からないことを示したりしていた。 「どういうこと?」 皆を代表してアルが問う。 「じゃあ、分かりやすく説明するね。そうね・・・・・・凄く昔のことから話すことになるかな。 私が産まれた時から」 こうして、私の過去は私自身によって明かされていくのだった。 ++++++++++ お母さんは15歳で妊娠して16歳で生んだ設定(爆) しかし変わる可能性あり(汗) 秘密を明かす決心って大変だけど、その場の雰囲気では簡単なときもある・・・気がする。 だから今回のはそんなとき。