〜戦闘開始〜 「何強がってんだろ、あいつ」 雑巾を取りに行ったがいなくなったのを確認し、エドワードは言葉を発した。 「弱音くらい吐いたって良いのにのに、何で何時も何時も強がるんだよ!」 悔しそうに、強く机を叩いた。 叩いた机はの仕事机で、直されたカップが振動で揺れる。 「一番年上だからって・・・・母さんが死んだときだってそうだ。あいつは泣かずに俺達の心配ばかりしてた。 何でだよ・・・俺は別に年上とかそういう目で見てないのに」 「つまり君が男として見られていないからだろ」 その言葉に間を空けずにロイが言葉を発す。 その口調は何時も通りと言ってしまえば何時も通りなのだろうが、偉そうだ。 その言葉に対して「なんだとー!!」と言いたかったが、図星だったので「うっ・・・・・」とエドワードは悔しそうな顔をした。 ロイは話を続ける。 「つまり君は少佐の恋愛対象ではない。従って、諦めるべきだ」 腕を組んでまるでそれが一番正当な考えであるかのように話すさまは、大佐というよりただ〈俺様〉だ。 「はぁっ?!」 エドワードは怒りと驚きの混ざった表情をし、立ち上がった。 「何だ、違うのかね?君は少佐のことが好きなのだろう?」 「そうなの兄さん?!」 驚いたアルフォンスが問う。 それにエドワードはロイに向け「ウガァーーーッ」と 「別に俺がを好きだろうとなんだろうと俺の勝手だろ!!」 逆ギレして言ったはいいもののその次に「あっ・・・・・・」という後悔の声が漏れた。 「へぇ」 「ふ〜ん」 「そうなのか」 「そうなんだ」 上から順に、ハボック、ブレダ、ファルマン、フュリー。 四人は同時に不気味とも取れる笑みを浮かべ 「「「「無理だな」」」」 「うるせーーー!!!」 ロイは勝ち誇った笑みを浮かべる。 「早く諦めて違う女性を探した方が良いのでは?」 「なんすかその態度。まるで少佐には好きな人がいるような」 「いないだろう、少佐に好きな人は。あの様子じゃ一生つくらないと思っている可能性もあるのではないだろうか」 「そうだよな・・・・・・」 珍しく、エドワードがロイの発言に賛成をした。 「まぁ、何にせよ鋼の。君が少佐の意中の人になることはないだろうから心配することはない!」 「なんだよ、大佐!もしかしてあんたものことが好きなのか」 「いけないか?」 ロイはその問いに否定もせず、さらりとそれを肯定した。 「君よりも可能性があると思うがね」 「そんなのが決めることだろ!」 二人の間で、見えぬ火花が散る。 それをゴクリと見つめる四人。 アルフォンスはおろおろと二人を見る。 ホークアイはハァと一つ溜め息をつき、仕事を再開し始めた。 「じゃあ、どっちが先にをものにするか勝負だ!!!」 「望むところだ。勝利は」 「頂くよ」と続けるはずだったのだが 「何か空気が緊迫してません?」 が戻ってきたので、それは表に出ず、ロイの心の中へとしまわれることとなった。 火花は未だに、散り続けている。 零したコーヒーを拭き終わり、雑巾を洗って戻ってきた。 そして、仕事机に向い、途中だった仕事を再開する。 エドとアルはまだすぐ側にいて、私は仕事をしながら二人と話をしていた。 「なぁ〜」 「ん。何?」 撫でるような声で名前を呼ばれ、片付いた仕事を整理しながら私は疑問符をあげた。 「今日もん家で飯食っていいよな?」 ≪戦闘開始≫ ロイの眉間が一瞬ピクリと動いた。 『も』が強調される。 何故そこが強調されたかは分からないけど、二人は来る度に私の家でご飯を食べる。 アルは・・・・・・食べられないけどね。 だから初めのほうは毎回「アルは身体が戻ったらたくさん作ってあげるからね」って言ってたけど、今は言わなくなった。 アルはその度に嬉しそうな顔をしていたけど、きっと心の中では悲しんでいると思ったから。 その言葉を発さなくなった私を、アルは少しも不思議に思わず、何時も手伝いをしてくれるんだ。 「今更何聞くの?何時もそうじゃない」 「変なエド」と私はくすくす笑う。 「いや。行かない方がいいかな、と思って」 「なんで?」 「だから・・・・・・」 言い難くて、エドは口を閉じる。 私はエドが言おうとした言葉が分かり 「どちらかというとね、一人になりたくないんだ」 眉尻を下げ、微笑した。 初めて漏らした〈弱音〉に、皆は少し驚いたようだ。 「一人になると考えてしまうの、あの日のこと。なんであんなことしてしまったんだろうね。 なんで見ず知らずの赤ちゃんなんか・・・・・」 言葉が詰まる。 自分が言った言葉に、私は嫌悪した。 そしてもうこのことはあまり言葉に出さないようにしようと心に決めた。 言葉に出す度に、罪悪感が深まっていくから。 罪意識から逃れたいとは思っていないけど、その言葉を発する度に皆が向ける表情が私を哀しく苦しくさせるから。 「だから、来てくれたほうが嬉しいの。いっそのこと泊まっていかない?そのほうが安心する」 笑顔に憂いを秘めて。 弱音を吐いた私にエドは 「おう!」 元気良く頷き、アルも 「がそういうなら、僕、に側にずっといるよ」 とても優しい言葉をくれた。 「ずっと」は側にいられないことくらい分かってる。 でも、そう言ってくれただけで少し嬉しかったんだ。 私は二人に「ありがとう」と言って、また仕事に戻ろうと二人のほうに向いていた顔を書類に戻そうとしたとき、大佐と目が合った。 少し・・・・・・不機嫌? ううん、少しどころじゃない。たぶん不機嫌絶好調だと思う。 眉間に凄い皺が畳まれてるし・・・・・・何故だかは分からないけど。 仕事が終わりそうにないからかな? 「あっ。そうだ、聞いて聞いて」 目の合った大佐に一応微笑んで、仕事に戻ろうとした時、あることを思い出したのでエドの服を 小さく引っ張った。 もちろん、満面の笑み。 エドは私のその笑顔を見て、ハァと呆れたように息を吐く。 「まぁた何か買ったのか」 「・・・・・・何で分かったの?」 首を傾げ問うたら 「お前がそんな笑顔でそんな態度取るときはいつもそうだろうが。変なテンションだし。で、今度は何買ったん?」 呆れながらもどうやらエドは話を聞いてくれるようだ。 わたしは満面の笑みを浮かべながら 「入浴剤!」 力入れて答えた。 沈黙が流れる。 そして突然スィッチが入ったかのように 「また買ったのかよ!」 「良いじゃない別に!」 突っ込まれた(?)ので言い返してやった。 これじゃまるでエドとウィンリィの口喧嘩みたいと内心苦笑しながら私は話を続ける。 「前からすっごく欲しかったんだけど、高くて迷ってたの。でも、今回安くなっててね・・・」 「買っちゃった」と私は小さく笑った。 「いくらだったの?」 「安かった」と言ったからか、アルが値段を聞いてきたので私は答える。 「一万センズ」 「・・・・・・えっ?もう一回言って」 アルが素っ頓狂な声をあげ、もう一度聞いてきた。 「だから一万センズ」 またまた短い沈黙。 「ん〜?」とエドワードとアルフォンスは腕組みをして、同時に問う。 「「何買ったんだっけ?」」 「だから、入浴剤」 私の笑みは消えることがない。 大大大っ・・・好きなお風呂に欠かせない入浴剤。 それも、憧れの物を買えたことを少し自慢しながら話しているのだから、まだこの笑顔が消えることはないだろう。 「入浴剤に一万センズぅ―――――???!!!」 「、お金の使い方間違ってるよ!」 やっと沈黙が切れたと思ったら、叫び慌てて、アルに肩を揺さぶられた。 エドは頭を抱えている。 他の皆さんも、さっきまで動かしていたペンが止まり、唖然と私を見ていた。 「何で?今回はそのお値段で入浴剤の他に、私が愛用しているシャンプーにリンス、ボディソープとクレンジングオイル、洗顔料が付いてきたのよ。 このお買い得を逃したら、きっと凄く後悔していたと思うわ。それに、お風呂は私のストレスを発散してくれるの。 大佐がさぼったり、大佐がお仕事しないで失踪したり、大佐がお仕事増やしたりして大変なんだから!」 つい言ってしまった言葉に、大佐は引き攣った笑顔を浮かべている。 「少佐、私がその言葉傷つかないとでも思ったのかね。 「あっ、すいません・・・つい・・・でも」 私は優しく笑む。 でもそれは優しいだけでなく、寂しさや切なさも入れた笑み。 「今は仕事が忙しい方が良いの。疲れたほうが、布団に入ってから何も考えずにすむのよ」 にこり笑って、仕事を始めた。 その言葉、笑顔にロイは心痛んだ。 今までに見たことない表情。 あの日の顔もそうだけど、今日の顔も居た堪れない。 あんな顔の彼女なんて見たくない。 彼女に笑顔を。 愛しい、彼女に。 戦闘が始まって、どちらか優勢か分からぬまま、第一ラウンドの幕は降りてしまった。 きっとエドワードは勝ち誇った気でいて、ロイは勝負のことなど忘れてしまっていることだろう。  ++++++++++ 入浴剤一万センズは日本円にして一万円。 これは普通にありますよね? あの塩の・・・お肌がすべすべになる、たまにTVで紹介されるやつです。 でも、あれだけの得点つきは見たことありません(笑)
BACK/ NEXT