BACK/ NEXT私、頑張ったよ。 でもなんで分かってくれないの。 〜花が咲き始める頃〜 ここはグリフィンドール談話室。 彼女・・・・は一人用のソファに腰掛けて、魔法薬学の宿題を終わらせるべく、静かに頑張っていた。 誰かは言う。 前のように彼女の表情は優しくなってきたと。 誰かは言う。 でもまだ、どこかぎこちないと。 そんな彼女の元に、二人の少年が小走りでやってきた。 「!」 「あら、ハリー、ロン。どうしたの?」 彼女は声の方を向き、彼らの顔を見て首を傾る。 少年達は、彼女より三つ年下のハリー・ポッターとロン・ウィーズリーだった。 二人は羊皮紙と羽ペンと教科書をの前に置いた。 「魔法薬学のレポートの宿題がだされたんだ!」 「ここのページからこのページに書いてあるものをどれか二つ選んで調べるんだってさ。 しかも羊皮紙一メートル半!」 「ねぇ、。どれが良いと思う?」 「そうね・・・・・・」 彼女は教科書をぱらぱら捲り、二人に助言をし始める。 二人はそれを真剣に聞き、重要そうなことはメモしていた。 彼女は、二人のことを本当の弟のように想っていた。 彼女には、血の繋がりをもった五つ年下で今現在グリフィンドール一学年の弟がいたが、 その子はあまり彼女に懐いていなかったので余計に二人に頼られることが嬉しくてたまらなかった。 そこへもう一人、彼女にとてもよく懐いている少女が登場した。 「ねぇ、。魔法薬学のレポートのことなんだけど・・・・・・」 「なんだ、ハーマイオニー。君もに教えてもらいに来たのかい?」 「失礼ね。あなた達と一緒にしないでもらえる?私は調べるための参考の本はこれで良いか聞きにきただけよ」 少女、ハーマイオニー・グレンジャーはむっと唇を突き出して、ロンの言葉を否定した。 彼女はハーマイオニーから本を受け取り「うん、良いと思うわ」と微笑み、特に参考に したほうが良いページを助言し始めた。 ハーマイオニーもさっきの二人と同様、真剣にそれを聞き入っていた。 そんなこんなで三人と一緒に宿題をしていただったが、いきなり立ち上がったので 三人は疑問符をあげた。 「どうしたの?」 「宿題が終わったから、スネイプ先生のところに出しに行ってくるの」 その言葉に三人は驚きを隠せず、言葉を発す。 「なんでわざわざスネイプにだしにいくんだよ」 「そうよ。普通、授業のときに出すものじゃないの?」 「その予定だったんだけど、色々忙しくてね。理由を話して提出日を少し遅らせてもらったの。 だから自分でだしにいくのよ」 「良く遅らせてもらえたね」 ハリーは驚愕した。 彼女は綺麗に微笑み「そう?」と疑問符をあげ 「確かにスリザリン贔屓で嫌なところは多々あるけど、良い先生よ」 そう言い残し、談話室を後にした。 残された三人は彼女が歩いていった方向を見ながら心配そうに、口々に言葉を発す。 「、おかしくなっちゃったのかな」 「ほんと、どうしちゃったの?あのスネイプを良い先生って言うなんて」 「何かあったのかな・・・?」 その疑問の答えはたぶん、まだまだ知ることはない。 もしかしたら永遠に。 彼女は地下室にある、魔法薬学の教室の戸を小さくノックし「失礼します」と扉を開き閉める。 しかしそこには誰もいなく、明かりが仄かに灯っているだけだった。 ここで待っていても来るという確信はないので、彼女はスネイプを探すことにした。 探しに行こうと閉めた扉を開いたとき 「Ms.ではないか。課題は終わったのかね?」 そこにはスネイプが立っていた。 彼は杖を取り出し、部屋に明かりを灯す。 「あっ、はい」 彼女は二.三歩後ろに下がり、彼は二.三歩前に出る。 そして扉を閉めた。 「それで、課題はどうしたのかね」 彼は前へ前へと大股で進んでいき、椅子に腰をかけた。 彼女も小走りでそれについていき、長机を挟んで前に立ち 「お待たせしてしまってすいません」 綺麗に巻かれた三メートルもの羊皮紙を差し出した。 彼は何時も通り、眉間に皺を寄せながら「うむ」とそれを手に取る。 そして縛ってあった紐を解き、目を通し始めた。 彼女はそれを見て、自分はもう帰っても良いのだろうと思い「失礼します」と礼をしてから、回れ右をして歩き始めた・・・ 否、歩き始めようとしたのだ。 それは、彼によって止められていた。 「ちょっと待て」 という言葉に。 彼女はもう一度回れ右をし、彼と向き合った。 課題に何か大きなミスでもあったのだろうか。 本気で彼女はそう思った。 だが、それは全く違うと分かることとなる。 「あの雪が解け始めた頃のことを覚えているか」 静かに問われた疑問形のその言葉は、数週間前の出来事のことを問うものだった。 彼女は記憶の糸を手繰り寄せ、無言のまま頷く。 「あの時の質問の答えはまだかね」 彼はまた問うた。 彼女はまた記憶の糸を手繰り寄せる。 しかし今度は、どこにも繋がらず、疑問の答えは見つからなかった。 だから問う。 「何でしたっけ」 その言葉に、彼は呆れたように小さく息を吐き、少し面倒くさそうに説明しながら問い始めた。 「あの時、お前は雪の中を裸足で歩き、そして雪に埋もれ泣いていた。何故だ。あの時お前は、こう言った。 真っ白よりも穢れた白のほうが好きだと。己はもう、完璧を追う必要はないのだと、そしてこうも言った。 完璧なものは全て穢れて壊れれば良い、己のように、と。どういう意味だ」 彼女は小さく肩をビクつかせ、彼から視線を逸らす。 胸の前で手を組む姿は、まるで何かに怯えているようだ。 「どうした」 彼が言葉を発するごとに、彼女は肩をビクつかせ震える。 彼は待った。 彼女が話し出すのを。 だから彼女を見つめ、言葉を発し続けた。 「お前は何に怯えているのだ。己か。それとも我輩か。それとも・・・・・」 「違います!」 その言葉を遮るかのように、小さな小さな声を彼女は発した。 「あの人はここにはいない。でも、ずっと私の脳裏に焼きついているの。あの人の言葉が。 期待されて、頑張って・・・・・でも捨てられたの」 彼女の瞳からは涙が零れ落ちていた。 今度はその顔を両手で覆わず、しかしその涙をしっかりと両手で受け止めながら。 彼女は泣いていた。 「いらないの。弟が出来たときから分かってた。私はもうすぐいらなくなるって。でも、頑張ったの。 少しでも期待に応えられるように。でも、クリスマス休暇で帰った日、勉強だけ出来ても駄目だって、 言われて・・・私、言ったの。家のために頑張ってきたって。そしたら、その言い方は自分が悪いみたいだって、 言われて・・・・・弟がいるから私はもう必要ないのは分かってる。でも、努力してきたの。 認めて欲しかった。でも届かないの、私の声。分かってもらえないの・・・・・・お母さん・・・・・・」 悲痛の叫びは彼の心へと響き渡る。 家族を愛しすぎたために、信じすぎたために、彼女は傷を負ってしまった。 一人で抱え込んで。 誰も一緒に抱え込む人はいなくて。 一人で頑張って、悩んで。 でも、打ち壊されて。 彼女が壊れ始めてしまった。 雪の結晶のように。 綺麗な華の形が崩れていくように。 泣く彼女を前に、彼は立ち上がり、彼女の前へと立った。 そして軽く頭に手を置き 「頑張ったな」 彼にしては優しく言い、彼にしては優しく微笑んだ。 彼女は彼を見つめる。 大粒の涙が泉のように零れ落ちている顔で。 必死で止めようとしていたものが、その言葉、行動をスイッチとして全てが溢れだした。 彼女は声をあげて泣き出した。 彼の真っ黒のローブを強く掴んで。 心から、泣いていた。 それは辛さでもあり。 それは嬉しさでもある。 初めて、認めてくれた人。 初めて、私の努力を認めてくれた人。 初めて、心から泣かせてくれた人。 初めて・・・・・・・・・・・・・・ 先生には〈初めて〉がいっぱいだった。 そう、彼女は言う。 ++++++++++ ちょっと二人が近づいた感じ。 優しいセブs。 私の中のセブsは原作と大分違います(苦笑)